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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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宮崎県延岡市。専門店の辛麺。

「辛麺」

 延岡市の某所でタスッタさんはひときわ目立つ大きな赤い看板を見て立ち止まった。

 辛麺。

 どのような食べ物であるのか、なんとなく想像はつく気がするのだが、具体的なところはよくわからない。

 担々麺の変種、みたいなものでしょうか?

 とタスッタさんは、内心で首を捻る。

 少なくとも他の場所では目にしたおぼえがない名前だった。

 時刻は午後二時少し前。

 幸いなことに、タスッタさんはこの日、まだ昼食を摂っていない。

 試してみましょうか。

 タスッタさんはすぐにそう思いたち、そのお店に入ることにした。


 カウンターとテーブル席合わせて三十人から四十人ほどが入れるくらいの大きさだろうか。

 この手の飲食店としてはほどほどの容量だとは思うが、こんな半端な時間帯だというのにその席がほとんど埋まってしまっている。

 人気店なのか、とか思いつつ、タスッタさんは店員さんに案内をされて空いていたカウンター席へとむかう。

 席に着いてから置かれていたメニューを手に取り、内容を確認する。

 む。

「辛さを選べるタイプですか」

 と、タスッタさんは内心でそう思う。

 さりげなく他のお客さんの様子をうかがってみると、三辛からを選ぶ人がほとんどであり、たまに五辛を選ぶ人が出るくらいであった。

 しかしメニューには、二十五辛までが乗っている。

 どれくらい辛いんですかね、と、内心で首を捻りながら、タスッタさんは無難に「一辛」を選ぶことにした。

 はじめてのお店であるし、加減がわからない以上、無難な選択をするのに越したことはないのである。

 タスッタさんは店員さんに「レギュラーサイズの辛麺一辛」ひとつを注文する。


 そんなに待つこともなく、注文した料理が運ばれて来た。

 鼻腔を通り抜けるこの香り。

 どうやら、スープは醤油ベースであるらしい。

 変に奇を衒うよりは、安心できますかね。

 と、タスッタさんはそんなことを思う。

 それよりも驚いたのは、

「どんぶりが、予想以上に大きい」

 ということだった。

 これだったら、レディースセットかなにかにしておいた方がよかったかな、という気がしないでもない。

 しかし、量から見ても決して完食できないほど極端な大盛りというわけでもなく、タスッタさんはすぐにレンゲと箸を手にとった。

 まずはレンゲでスープを掬って、一口啜ってみる。

 香りで予想がついていたが、やはり醤油ベースの味だった。

 そして、辛味。

 一辛ということもあり、そこまで極端な辛ではないものの、それでもほんのりと額に汗が浮かんでくる。

 これはやはり、唐辛子の辛さなのか。

 他にもいろいろと入っていそうだな、とか思いつつ、タスッタさんは麺を箸で摘まんで啜ってみた。

 普通のラーメンとは、かなり違う食感と硬さ。

 そうした普通の麺よりははるかに柔らかく、そして歯で噛むとぷっつりと切れる。

 それでいて、咀嚼をすると適度に弾力があった。

 なんでしょうね、この感触。

 と、タスッタさんは怪訝に思った。

 どこかで似たような食感に出会っているような気がするのだが、具体的にその食材の名前がすぐに出てこない。

 ただその麺と、辛味が強いスープの相性が抜群にいいことだけはよく理解できた。

 その麺自体にはあまり味がなく、辛味の強いスープを絡ませるくらいで丁度いい塩梅になるような感じなのだ。

 うん。

 これは。

 と、タスッタさんは思う。

 いい感じに、止まらないかもしれない。

 形態としてラーメンに酷似しているのだが、似て非なるもの、といった感じだ。

 何度か勢いよく麺を啜り、タスッタさんは麺の下にいくつか沈んでいた物体に気づく。

 それを箸の先で摘まんで持ちあげて、しげしげと観察をしてみた。

 これは。

 と、タスッタさんは思いつつ、口の中に放り込む。

 うん。

 やはり、ニンニクだ。

 なんらかの形で熱は通しているのだろうが、ニンニクの粒がゴロゴロとそのまま幾つか麺の下に入っていた。

 スープに入っていた雑味は、このニンニクも原因のひとつでしたか。

 と、タスッタさんは一人で納得をする。

 もちろんタスッタさんは、別にこのあとに人と会う約束があるわけでもなく、口臭については気にする必要がない。

 スープは単に辛いだけではなく、旨味もそれなりに強くて、独特の牽引力があった。

 その複雑な辛味の強いスープと、あまり味のしない、柔らかい麺が非常に合う。

 やはり、これは。

 と、タスッタさんは思う。

 箸が止まりませんね。

 タスッタさんは立て続けに箸で麺を手繰り、最初は持て余すと思っていた量の麺をさして時間をかけずに完食する。

 食べ終え、箸をおいたあと、タスッタさんの口の中には辛さの残滓と、それになんともいえないすっきりとした後味が残っていた。

 ふう。

 箸をおいたタスッタさんは満足感に包まれている。

 辛いけど、おいしかった。

 この辛麺は、ラーメンとも担々麺とも、似ているようで微妙に異なる、別種の料理であるように思う。

 タスッタさんは店内を見渡して、壁面に貼ってあるポスターから京都や大阪などにも系列店を出店していることを知った。

 なるほど。

 と、タスッタさんは納得する。

 この辛麺というのは、もともとはこの周辺から出てきた料理で、これから他の地域にも進出していっているところなんですね、と。

 あと何年かすれば、全国区の料理になっているんじゃないでしょうか。



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