石川県金沢市。美術館内のカフェレストラン、フルーツプレートとコーヒー。
その日、タスッタさんは金沢にまで足をのばし、少し変わった美術館を訪れていた。
これまで、タスッタさんも美術館と称される施設には何度か訪れた経験があったが、この美術館はこれまでにタスッタさんが観てきた美術館とは違う点がいくつかある。
まず、多くの美術館は普通の建物の中に作品が展示されており、中にはいるとそれだけ閉塞感を感じるのだが、この美術館は外壁がガラス張りになっており、開放感がある。
それに、無料で入れる部分が広く、多くの人々が散歩や買い物の途中でふらりと立ち寄っているようすだった。
かしこまった場所というよりは、もっと身近な施設として地元住民に親しまれているような雰囲気があるし、その逆に、海外からの観光客の姿も多い。
雰囲気的に、少し珍しい空間かな、と、タスッタさんは思う。
なんというか、アカデミックというよりはアミューズメント寄りの雰囲気なのだ。
それでいて、展示品もしっかりしている。
現代美術が中心だが、工芸品などの展示物も充実しており、見所が多かった。
半日以上、その美術館内を散策したタスッタさんは、流石に疲れを感じたので館内にあるカフェレストランに入ることにした。
時刻は午後三時すぎであり、当然だろ食事時を外しているわけであるが、場所柄のせいか店内に人は多い。
例によってガラス張りの外壁と、それに白一色で統一された内装がお洒落な空間になっていた。
中に入ったタスッタさんは、大きなテーブルの一角へと案内をされる。
メニューを開くと、すでにランチタイムが終わっていることに気づいた。
時間が時間であることだし、夕食は夕食でがっつりといただきたいと思っていたところなので、ここはデザート系で軽く済ませますか、と、タスッタさんはそんなことを思い、それらしい食べ物をメニューの中から探しはじめる。
そしてすぐに、「フルーツプレート」という文字列を見つけ、
「ああ、これでいいかな」
と軽く決めた。
ケーキなど、重いものをがっつりといただくような気分ではなかったのだ。
そのフルーツプレートとコーヒーのオーダーを済ませると、いくらもしないうちに店員さんが実物を持ってくる。
フルーツプレートとは、三種類のアイスクリームとフルーツの盛り合わせ、それに大学芋とホイップクリーム、小豆、団子など、取りとめのない甘味の集合体だった。
品数が多い分、一品あたりの量は少ないのだが、それでもすべてを合わせると結構なボリュームになる。
いろいろな味を一度に試せるのは、いいんですけどね。
とか思いつつ、タスッタさんはコーヒーを一口啜り、まず溶けやすいアイスクリームから手をつけることにする。
というか、残念なことに運ばれて来た時点でこれらのアイスクリームは少し溶けかかっていた。
アイスクリームは、バニラ、抹茶、チョコの三種類で、市販品が業務用のものをそのまま使ったのだろうか、どこかで食べた記憶があるような無難な味だった。
合間にコーヒーを啜りつつ、三種類のアイスを無事たいらげると、今度はフルーツに手をのばしてみる。
まず梨を口にして見たが、これは新鮮なものだったのか、見事にみずみずしい。
アイスの甘みがリセットされるような清涼感があった。
次に、柿。
これも、季節の果物であり、甘味はあまり感じないものの、十分においしかった。
それに、メロン。
小さな一切れであったが、これが非常に甘味が強く、その一切れだけでも十分に満足してしまえるほどの逸品だった。
このメロンだけでも、このフルーツプレートを頼んだ甲斐があるとか思ってしまうほどだ。
その他にも、このプレートには大学芋、みたらし団子、小豆などの、いわゆる和風の甘味もなぜか乗っており、当然これらも順番にいただいていく。
味はどれも無難というか普通というか、やはり既製品を利用しているのか、今までにどこかで食べたような味ばかりであったが、これほど多種多様な甘味を一度に少量ずつ味わった経験はなかったので、タスッタさんとしては物珍しさも手伝い、なかなか満足感が高いひとときとなった。
ゆっくりと時間をかけてそうした品々を味わい終わると、当然のことながらかなりの満腹感も得ている。
ああ、ここでこんなにお腹いっぱいになるまで食べるつもりはなかったんだけどな、とか、タスッタさんは思う。
なにせここは金沢、日本海の豊富な海産物が水揚げされる土地である。
お寿司をはじめとして、おいしいものなどいくらでもある場所なのだ。
では、もう少し動いてお腹を減らさなければなりませんね、と、タスッタさんはそんなことを思いつつ、そのお店をあとにする。
この美術館のまだ見ていない展示物を、この日のうちにすべて観るつもりだった。




