表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/180

愛知県犬山市。フルーツメッセージの季節のフルーツパフェサマーDX。

 愛知県にある犬山城というお城を見物した帰り道、タスッタさんは例によって気になるお店をみかけた。

 犬山城は天守が国宝に指定されている五つしかないお城のうちのひとつということだから、それなりの観光名所ではあるのだろう。

 付近には観光客目当てのお店が多く、タスッタさんが気になったそのお店も、そうした観光客目当てのお店のうちのひとつらしかった。

 立派な看板の上には「フルーツメッセージ」なる意味不明の文章が表示されており、店先には日よけのパラソルと椅子、テーブルなどが置かれている。

 暑いからか、すでにお客さんがそうした店外のスペースに陣取ってそれぞれ手にしたスイーツを食べていた。

 お客さんの流れを見ていると、どうやら店内でも飲食はできるようだ。

 しかし、そのお客さんが多い。

 長蛇の、とまではいわないが、列を作っていた。

 テイクアウトをするお客さんも多いので、店先にもまだ空席があるようだったが。

 タスッタさんは慌ててお客さんの列の最後尾に並ぶ。


 意外にお客さんが捌けるのは早く、タスッタさんの順番はすぐに来た。

 ここのお店は看板にもフルーツの文字が入っている通り、パフェでもかき氷系のメニューでも景気よくなにがしかのフルーツを盛りつけるお店らしかった。

 タスッタさんは数あるメニューの中から「季節のフルーツパフェサマーDX」という物を選ぶ。

 かき氷系にも惹かれるものがあったが、ここではよりたくさんの種類のフルーツをいただけるパフェを選択した形だ。

 プラカップの中に山盛りになったクリームとフルーツを受け取り、店内のふたつしかないテーブル席はすでに満席であったから、タスッタさんは店先に出て、幸いなことに開いていた席に座る。

 いくらパラソルで日陰を作ってあるとはいえ、今の時期に野外の気温は半端ではなく暑いのだが、あえてそうした環境下でいただくのもまた一興、とか、タスッタさんは思う。


 タスッタさんが頼んだパフェは、愛知白鳳という品種の桃とバレンシアオレンジ、スウィーティオパイン、グリーンキウイフルーツの四種類のフルーツを使用し、それらを切ったものが山状に高く積み上げられたクリームの上にこれでもかといった具合にまぶされている代物だった。

 いや、正直にいえば、お店側が用意をした、メニュー等に使用されていた写真と比較するとかなり見劣りがする外見であったが、それでも数多くのフルーツがふんだんに使用されていることには変わりがない。

 タスッタさんはスプーンを使ってそのフルーツとクリームから構成されている山を上から順番に崩していく。

 フルーツはどれもよく冷えていて、特に地元でとれたという桃が絶品だった。

 単純に甘いだけではなく、四種類ものフルーツが使われることによって、味が単調になることを防いでいる。

 愛知白鳳の柔らかい歯ごたえと甘み、オレンジやパインの酸味、キウイフルーツの甘みと微妙な酸味、それとクリームの甘さがタスッタさんの口の中で微妙にとけ合い、絡み合う。

 あ。

 これ、予想外にいいかも。

 食べながら、タスッタさんはそんなことを思いはじめる。

 正直、観光地のジューススタンドめいたお店でこれほどまともなものが出されることを想定していなかったのだ。

 パフェとはいいながらも、このお店のものは、主役はクリームではなくフルーツなのだ。

 新鮮なのもあるのだろうが、クリームの甘みに負けない味を持つフルーツばかりをしっかりと揃えてある。

 いい仕事をしているなあ、とか、タスッタさんは思う。

 使い捨てのプラスチックの容器に盛られてはいても、中身は今までにタスッタさんが食べてきたどんなパフェよりもしっかりとしたものだった。

 たかが観光地の甘味処と侮るべからず。

 こうしたいい仕事をしているお店も、中には存在をするのだ。

 これからもこういうお店を探し続けなければいけませんね。

 などと考えながらスプーンを操るうちに、いつの間にかタスッタさんはそのパフェを完食してしまう。

 他のお客さんも居ることだしと即座に席を立ったタスッタさんは、使い捨ての容器を捨ててからそのお店をあとにした。

 夕方というにはまだ早いこの時間、日は高く日差しも強い。

 暑いな、と思いながらも、タスッタさんは満腹後の多幸感に包まれつつ、歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ