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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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東京都台東区。古民家カフェのたまごサンドとルシアン。

 谷中や根津の近辺には古民家カフェなるものが何件かあるそうで、その日の朝、タスッタさんが見つけたのもどうやらそのうちの一軒らしかった。

 タスッタさんはお寺が多くしたがって緑も多いその近辺を散策していたおりに、そのお店を見つけた。

 一見しただけでは民家にしか見えないのだが、看板が出ている。

 ひどく古ぼけてみる、えらく時代がかった建物だった。

 とはいえ、看板は出ているし営業している気配もあったから、タスッタさんは試しに覗いてみることにした。


 中に入るとさっそくタスッタさんの来訪を察知した店員さんが、

「お一人様ですか?」

 と声をかけてくる。

「はい、ひとりです」

 タスッタさんが即答をすると、すぐにカウンター席に案内をしてくれた。

 まだ八時を幾らも過ぎていないというのに、お客さんはかなり入っている。

 満席とはいかないまでも、かなりそれに近かった。

 盛況、結構。

 などと思いつつ、タスッタさんはメニューを手にとって眺める。

 飲み物にトースト、サンドイッチ。

 それに、あんみつやみつ豆などもある。

 昔風の、普通の喫茶店と同じような内容だった。

 さて、なにをいただくことにしましょうか。

 まだ早いから、モーニングセットの中から選びますか。

 などと考えつつメニューを眺めていると、タスッタさんは飲み物の中に見慣れない名称を見つけた。


「すいません」

 タスッタさんは片手を上げて通りかかった店員さんを呼び止める。

「このルシアンといいうのは、どういう飲み物なんでしょうか?」

 名称から察するに、ロシアから入ってきたものなのでしょうか。

 とか、タスッタさんは予想する。

「こちらはコーヒーとココアを半々にブレンドした飲み物になります」

 この質問に慣れているのか、店員さんは淀みなく即答した。

「コーヒーとココアを」

 タスッタさんは曖昧に頷く。

 味は、容易に想像ができた。

「では、たまごサンドのセットを願いします。

 飲み物は、そのルシアンで」

 タスッタさんは、その場で注文をした。

 想像はできたのだが、実際に試してみないとその想像があたっているのかどうかは確認できない。

 タスッタさんはここ以外でそのルシアンとやらを出しているお店を知らなかったし、だとすればこの場で確認をしてみないわけにはいかなかった。


 注文したものはすぐに出てきた。

 ルシアンとたまごサンド、サラダと野菜スープがこのお店のセットだった。

 ルシアンの味にも興味が惹かれたが、それ以上にたまごサンドの姿がタスッタさんの想像していたものと違っていたことに軽く驚きをおぼえた。

 これまでタスッタさんが知っているたまごサンドとは、みな、ゆでたまごを刻んでマヨネーズと和えたものをパンに挟んでいたのだが、このたまごサンドは厚焼きの玉子焼きをパンに挟んでいる。

 その玉子焼きが、パンよりも厚い。

 なるほど。

 と、タスッタさんは思った。

 こういうたまごサンドもあるのか。

 それはそれとして、まずは気になっていたルシアンを一口、啜ってみる。

 ほどよく、甘い。

 最初にかんじる味と風味はほとんどココアのそれ。

 しかし、普通のココアのように甘過ぎはしない。

 そして、飲んだあとにコーヒーの苦味がふっと残る。

 うん。

 だいたい、想像していた通りの味だ。

 と、タスッタさんは思った。

 甘みが強いけど、これはこれでおいしい。

 そして、たまごサンドを指先で摘んで一口、食べてみる。

 パンはふわふわ、玉子焼きもふかふか。

 そして、味つけは塩のみか。

 この味つけ文字通り、強すぎず弱すぎず、いい塩梅だった。

 調理として材料としてもシンプルであるがゆえに、いい感じで調和している。

 この塩味が、ルシアンの甘みとよく合うような気がした。

 サラダと野菜スープに特筆するような特徴はなかったが、それでも朝から野菜がたっぷり摂れることは嬉しい。

 このセットは、意外に栄養バランス的にもちょうどいいのかも知れない。


 相変わらず、お店の中は満席に近かったが、他のお客さんたちはそれぞれに静かに店内の楽しんでいる。

 人数がいる割には、静かな雰囲気だった。

 このようなお店だから、むやみに騒ぐことを自重しているだろうか。

 たまたま、今日はこのような雰囲気なのか。

 実際にところは、タスッタさんには判断できなかったが、それでもタスッタさんにはこの静かな雰囲気は貴重で、大切なように思えた。

 お店の空気感も味のうち、ですよね。

 と、タスッタさんはルシアンを啜りながらそんなことを思う。

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