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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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162/180

長崎県佐世保市。ハンバーガーショップのスペシャルバーガーとジンジャーエール。

 スマホの地図で見ると、そのお店は山の中にあった。

 とはいえ、最寄りの駅から五キロも歩かないで着く場所でもあり、普段から十キロ以上歩くことに慣れているタスッタさんにとっては、そんなに大きな障害でもない。

 たまたまこの日はよく晴れていたので、むしろ歩いている最中、気分がよくなったくらいだ。

 道の端を歩いている歩行者はタスッタさん以外に見かけず、ときおり、その横の車道を車が通りかかる程度の、のんびりとした土地柄だった。

 山の中だから道の両側には木々が生えているだけで、建物はほとんど見かけない。

 いい場所ですね。

 と、タスッタさんは思う。

 無論これは、タスッタさんの個人的な評価でしかなく、他の人もこの山道を徒歩で移動することを好むかどうかは、かなり怪しかった。

 とにかくそうして何キロか歩いた結果、タスッタさんはようやく目当てのお店に到着する。

 坂をあがっていくとまず最初に赤く大きな看板が目に入って、さらに進むと道の駅か土産物屋みたいな風情の平屋の建物が見えてきた。

 駐車場、というかお店の前にはなにもない広場があるのだが、今は車は一台しか停まっていない。

 おそらく、お店の人の車なんでしょうね。

 と、タスッタさんは予想をする。

 この日はあいにくのはっきりしない天候で、朝方には雨もぱらついていた。

 平日の昼間、それもこんな天気の日に町中から距離があるこのお店まで来るお客さんは、あまり多くはないのだろう。

 週末とか休日には、それなりに混むとは思うんですけどね。

 と、タスッタさんは思う。

 駅からここまで徒歩で来るタスッタさんのような人はそんなに多くはないと思うが、これだけ広い駐車場を完備しているのだから、地元の人たちのほとんどは車でここまで来るのだろう。

 そんなことを思いながらタスッタさんはその広い駐車場を抜けてお店の方に進む。

 お店の前には、アニメだかゲームだかのキャラクターがプリントされた幟や立て看板がいくつか設置されていたが、それを除けば、なんというか、郊外型飲食店によくありそうな店構えだった。

 あまり特徴がない、というか。

 タスッタさんがお店の中に入ると、予想していた通りに中にお客さんは誰もいなかった。

 すぐにタスッタさんの姿に気づいた店員さんが会釈をするが、カウンターの中から動く様子はない。

 ハンバーガーのお店ですからね。

 と、タスッタさんはそんなことを思いながら、そのカウンターの前にまで歩いて行く。

 基本的にはセルフサービス、少なくとも注文はカウンター前でするシステムのようだった。

 カウンター前に立ったタスッタさんは、カウンターの上に置かれたメニューを少し眺め、このお店で一番推されているらしいスペシャルバーガーと、それにジンジャーエールを注文する。

 スペシャルバーガーの方は少し時間がかかるということだったが、ジンジャーエールの方はすぐに出してくれた。

 よく冷えた、市販のペットボトルだったが。

 こういうところは、ファストフードですねえ。

 などと思いつつ、タスッタさんはジンジャーエールを乗せたトレイを持って適当なテーブルにつく。

 もう少し天気がよければ外のテラス席を利用するところだったが、この日の天気はじめっとしていて外の空気は快適とはいいがたい。

 それに、お店の中とはいえ、大きな窓から見える眺めはなかなかよかった。

 木々の間から遠目に海が見える。

 もっと天気がよかったら、かなり見応えのある展望に思えたはずだった。

 今日のような曇り空でも、それなりの眺めですけどね。

 とか思いつつ、タスッタさんはジンジャーエールのペットボトルを開けて軽く喉を潤した。


 しばらくして、スペシャルバーガーが運ばれてきた。

 無論、出来たてで、文字通り湯気を立てている状態だ。

「大きい、かな」

 と、タスッタさんは思う。

 包装紙を開いて手に持つと、暖かくてふかふかなバンズの感触が指先に伝わって来る。

 パテとレタスが、バンズに挟まっているのを外からも視認できた。

 なんか、香りが。

 食べる前から、お肉が焼けた匂いが鼻孔を通っていく。

 それと、バンズの匂いも。

 食べる前から、おいしそうな。

 などと思いつつ、まずは一口囓ってみる。

 まずバンズのほどよく焼けた小麦の匂いが鼻を抜けて、次に力強い肉の味が舌を刺激する。

 あ、これは。

 と、タスッタさんは思う。

 かなり上質な、上品な牛脂。

 おそらくは、和牛ですね。

 噛むほどに、レタスとそれにスライスしたトマトの酸味などがそのパテの風味といい具合に混ざり、なんかこう、とてもおいしく思える。

 ああ、なんか、本物って感じ。

 と、タスッタさんは思った。

 濃い目の味付けに頼らず、素材の本来の味を元にしたハンバーガーだった。

 チェーン店展開をしているお店で食べるハンバーガーよりも、なんだかとっても丁寧な印象を受ける。

 本当のハンバーガーって、おそらくこういう味なんでしょうね。

 本来は。

 そんなことを考えながらタスッタさんはハンバーガーを咀嚼して、合間にジンジャーエールを口にする。

 ジンジャーエールのしゃきっとした辛みと炭酸は、お肉の脂をすすぐのに最適だった。

 たかがハンバーガー、されどハンバーガー。

 ファーストフードでも、真面目に作ればこれだけおいしくなるんですね。

 感心をしながら、タスッタさんは食べ進める。

 ゆっくりとよく噛んで、時間をかけて食べ進めるうちに、いい具合に満腹感が襲ってきた。

 カロリーも、相応なんだろうなあ。

 とか、タスッタさんは考える。

 このお店までの往復で、かなりの部分、消費できるような気もしますが。

 そうして食べているうちに、窓の外が明るくなってくる。

 タスッタさんが食事を終える頃には、目の前に綺麗な空と海が広がる、見事な景色が一望できるようになっていた。



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