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腹ぺこエルフさん放浪記  作者: (=`ω´=)


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148/180

兵庫県神戸市須磨区。イタリアンレストランの牡蠣のクリーム煮パスタセット。

 朝晩の肌寒さが本格的になってきたこの頃、タスッタさんは神戸の須磨海岸に来ていた。

 ここでの用事は午前中のうちに終わり、お昼までには少し間がある時間帯だった。

 さて、どうしましょうか。

 と、タスッタさんは例によって考える。

 無論、少し早めのお昼について思案をしているわけだが、とりあえず海風が冷たかったので早めにどこかに入りたかった。

 須磨水族園とか海水浴場がほど近いこの近辺は、どうもリゾート地であるらしい。

 ただ、シーズンでないせいか、それとももともと寂れかけていたのか、人通りもまばらでどこかもの悲しい風情が漂っていた。

 別にここだけのことではなく、この国中、少し郊外にいけばどこにでも見られる衰退中の雰囲気が、感じられるのだ。

 それはともかく。

 しばらくあてもなく歩いていたタスッタさんは、路上に飲食店らしい建物を見つけた。

 二階建てで、かなりおしゃれな外装をしている。

「イタリアン、ですか」

 タスッタさんは歩きながら、小声で呟く。

 この辺は魚がおいしいとも聞いていたので、イタリアンならばまず外れはないのではないか。

 そんなことを考えつつ、タスッタさんはそのお店に向かって足を早めた。


 お店の前にはかなり広めの駐車場があって、すでに満車に近い状態だった。

 平日であるのにも関わらずこの時間にこの混み具合。

 ということは、それなりに人気のお店なのだろうな、と、タスッタさんは考える。

 人の流れを見るとお店はどうやら二階にあるらしいので、タスッタさんも他のお客さんたちに続いて階段を昇り、お店の入口にまで移動した。

 入口付近は少し混雑していて、どうやら予約を入れたお客さんが先に通されているらしい。

 列を作るほどではなく、すぐに前に溜まっていたお客さんたちが店員さんに案内をされていなくなっていった。

 タスッタさんの順番もすぐに来て、店員さんに聞かれるままに予約がない一人客であると告げると、そのまま空いたテーブル席へと案内される。

 ふと店内を見渡すとすでに七割ほどのテーブルが埋まっており、これから本格的なランチタイムになるとほぼ満席になりそうな様子だった。

 調理をしている現場をそのまま見ることができるオープンキッチン形式のお店で、内装などにもかなり気を遣っているようだ。

 店内には凝りすぎていない、鼻につかない程度におしゃれな感覚が漂っている。

 それに音響も。

 イージーリスニングのBGMが流れていたが、妙に音がいい。

 こういうところにお金をかけているお店か。

 と、タスッタさんは心の中で納得をする。

 さて、なにを食べましょうかね。

 などと思いつつ、タスッタさんは改めてメニューを開いて検討をしはじめる。

 セットメニューが多いが、イタリアンらしくそのほとんどが大皿で取り分けることを前提とした料理になっていた。

 複数の人数で来れば、お得なんでしょうけどね。

 とか心の中で呟きつつ、そうした多人数用の料理をタスッタさんは心の中でこっそりと除外をする。

 そうすると。

 と、タスッタさんは、残ったセットメニューを確認した。

 うむ。

 パスタか、ピザか。

 どちらかというと、パスタかなあ。

 と、タスッタさんは思う。

 ピザの方はなんとなく、タスッタさんの中ではビールかワインといっしょにいただく物とというイメージがあった。

 それに、昼間から食べるにしては、チーズが重いし。

 そんなことを考えて、タスッタさんは心中でピザという選択肢も除外する。

 パスタ、はいいですけど。

 そのパスタも、お任せからはじまってかなりの種類が用意されていた。

 そのうち、なにが出てくるのかわからないお任せは真っ先に除外し、残った物についてタスッタさんは検討をする。

 なにか、海産物のパスタがいいですね。

 と、タスッタさんは思う。

 せっかく、海の近くにいるのですから。

 そうすると。

 改めてメニューに目線を走らせてから、タスッタさんはある料理を頼むことに決めて、店員さんを呼ぶ。


 注文するといくらもしないうちに、まず前菜が出て来た。

 にんじんのピクルス、だそうである。

 あまり記憶にないけど、前にもどこかで食べたことがあったかな。

 とか思いつつ、タスッタさんはそのピクルスをフォークで刺して口に運ぶ。

 うん。

 なんというか、想像した通りの味だった。

 ちょっと酸味が効いて、ほんのりと甘いにんじん。

 心の底から素直に「おいしい!」といえるかどうかは微妙だったが、少なくともおいしくないわけではない。

 なんというか、ええ。

 無難、な、味だった。

 にんじんのピクルスを囓りながらさらにしばらく待つと、本命のパスタが来た。

 タスッタさんが頼んだのは、牡蠣のクリーム煮パスタのセット。

 メニューを検討していた時に、

「そういえば寒くなってから、牡蠣は食べていないな」

 と、そう思い出したからだ。

 配膳されたお皿の中を見ると、あまり盛りはよくないような気もしたが、でもこれ、クリーム煮、ですからね。

 こんな量でも、案外カロリーの方は凄いのかも。

 タスッタさんはフォークとスプーンを手に取り、まずは麺をたっぷりとソースに絡め、フォークに巻いて口の中に入れる。

 想像していた以上に、麺が固かった。

 アルデンテ、ではあるんでしょうが。

 と、タスッタさんは思う。

 芯が、残りすぎているような気がした。

 これはちょっと、ゆでる時間が短すぎたんじゃないでしょうか。

 クリームソースはかなりおいしかったので、なんか残念な気分になりながら、タスッタさんは、今度は牡蠣をスプーンに乗せて食べてみる。

 かなり大粒の牡蠣で、ほどよく熱が通っていて、身がぷりぷり。

 この牡蠣は、文句なしにおいしく思った。

 クリームソースとの相性もいい。

 さらにタスッタさんは、牡蠣と麺をいっしょにフォークに巻いて、食べてみる。

 ああ、いい。

 口の中に入れ、咀嚼をした瞬間に、タスッタさんはそう思う。

 牡蠣を嚙んだ瞬間、身からじわりとにじむエキスとクリームソースが混ざり合う。

 それと麺の食感とも同時に感じると、とても幸福な気分になる。

 麺が固すぎる、という意見を変えるつもりはなかったが、これはこれで。

 と、タスッタさんは思う。

 なかなか、おいしいのではないでしょうか。


 盛りが小さいように見えたパスタは、完食してみるとかなりの満腹感を与えてくれた。

 やっぱり、高カロリー食、ですよねえ。

 食後のコーヒーを飲みながら、タスッタさんはそう思う。

 さりげなく周囲のテーブルを見てみると、家族ずれで来ているお客さんたちはだいたいパスタとピザ、それに前菜がついてくるセットメニューを頼んでいるようだった。

 大皿のパスタはもちろんのこと、ピザの大きさもかなりの物であり、それを見たタスッタさんは、

「ピザの方を頼まなくてよかった」

 と改めて、そう思った。

 あれだけボリュームがあるとなると、完食するのにかなり苦労するはずだったからだ。

 会計を済ませて外に出ると、先ほどまでの天気が嘘のように、かなり厚い雲が空を覆っていた。

 ああ、これは。

 と、タスッタさんは思う。

 降りそうな気がしますねえ。

 予報では、雨が降りはじめるのはもう少し遅いはずだったのだが。

 おなかも膨れたことだし。

 と、タスッタさんは思う。

 早いところ、次の目的地へ移動しますか。

 そして、タスッタさんはそのお店を後にして、最寄りの駅へと歩き出した。



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