福井県坂井市。セルフカフェのエビクリームバーガーとジンジャーエール。
「いつになっても、この暑さには慣れませんねえ」
誰にともなく、タスッタさんはぽつりと呟く。
連日猛暑を通り越して酷暑が続く中、タスッタさんは三国という港町に来ていた。
そしてこの昼下がり、例によってタスッタさんは入るべきお店を探していた。
なんといっても、暑い。
早くどこか涼しいところにいかないと、熱中症で倒れかねない。
割と切実な思いで周囲を見渡したところ、少し先に妙に自己主張の強い、大きく店名が浮き彫りにされた白い看板を見掛けて、タスッタさんは心なしかふらついた足取りでそちらへと移動する。
お店の中は、涼しかった。
それはいいのだが、中に入っても特に案内をされわけでもない。
店員さんもタスッタさんの方を見て、
「いらっしゃいませ」
とはいってくれたものの、そのまま放置されている。
ん?
と、タスッタさんは違和感をおぼえ、それからすぐに他のお客さんたちの様子を見て、
「ここはセルフサービスのお店だったのか」
と思い当たる。
見れば、入り口近くでお客さんが数名、列を作っている。
あそこで注文をして自分で好きな席でいただく、ファストフードによくある方式のようだった。
取りあえず、空調が効いているのはありがたいですね。
そんなことを思いながらカウンターの上にある案内に目をやり、なにを注文しようかなと、考えはじめる。
どうも、前に並んだ他のお客さんを見ていると「三国バーガー」というのが人気商品らしいのだが、ここまで来て普通のハンバーガーでもな。
と、タスッタさんは、思う。
ここ三国は港町。
どうせならば、海産物を使ったお料理を頂きたい。
実はタスッタさんは、昨夜もお刺身など新鮮な海の幸をたっぷりと頂いていた。
そのため、今の時点ではその手の和食は食傷気味であったりするのだが、こういうお店ならば和食以外で海産物を活かした料理があるのではないか。
そう、思ったのだった。
三組ほどしかいなかった列の前のお客さんたちはすぐに捌け、タスッタさんが注文をする番になった。
タスッタさんはカウンター越しに店員さんに向かい、エビクリームバーガーとジンジャーエールのLサイズを注文する。
エビクリームバーガーを注文した理由は前述の通りであり、ジンジャーエールを注文したのはとにかく暑かったからだった。
暑い日には、炭酸入りの飲み物が欲しくなる。
それに、汗もかいているので水分も補給しなければならない。
このお店のメニューはバーガー系以外にも揚げ饅頭とかラーメン、お好み焼きがあったりしてなかなかカオスなものだったが、店内の雰囲気は落ち着いている。
意外に広い店内に茶色のテーブルと緑の椅子が点々と配置され、なかなかおしゃれな雰囲気でもあった。
席数の割にはお客さんがあまり入っておらず、どことなく閑散としている様子も風情がある。
土産物の販売やレンタルサイクルの受付などもここでやっているらしく、どうやらこの街の観光窓口的な機能を持ったお店らしかった。
なるほど。
と、タスッタさんは頷く。
こういうお店も、あるんですね。
観光地ならばどこにでもあるようなお店の雰囲気と、落ち着いたカフェの雰囲気とが微妙にせめぎ合っている。
なんともユニークなお店だった。
十分と少しほど待たされて、タスッタさんが注文した料理ができたと知らされたので、カウンターまで取りに行く。
トレーに載せたエビクリームバーガーとジンジャーエールを自分のテーブルまで運んできたタスッタさんは、椅子に座るなりまずジンジャーエールに口をつけた。
よく冷えていて、それに想像していたよりも辛口で、こんな日には実にありがたい。
知らぬ間にカップの三分の一ほどを一気に啜っていたことに気づき、タスッタさんは一度ストローから口を離す。
それからエビクリームバーガーの包みを開き、中のバーガーにかぶりついた。
できたてで、熱々。
バンズもだが、なにより中身の揚げ物が熱くて、そしてプリプリの歯応え。
味は、甘い。
甘くて……うん、これは。
甘エビだ。
と、タスッタさんは悟った。
甘エビを包んでいるクリームからも、かなり濃厚なエビの風味を感じる。
こちらにも、本物のエビを使用していますね。
タスッタさんは、そう予想をする。
甘エビの身を、エビの味が染みついたクリームで包んで、それを揚げた物。
それなりに手間がかかり、なにより決して安くはない素材を使用していた。
その上で、こんなにお手頃な値段で提供しているとは。
流石は、港町。
感心しつつ、タスッタさんはエビクリームバーガーとジンジャーエールとを、交互に飲食した。
辛みの強いジンジャーエールと甘いエビのクリームとは、実によく合う。
あっという間に完食をしたタスッタさんは、満腹感とは別の、満足感を味わっていた。
和食以外の、海産物を使ったお料理。
ちょうど欲しいと思った物が、そのタイミングで食べられたこの幸運。
しかも、漠然と予想していたよりも遙かにおいしかった。
ああ。
と、タスッタさんは、思った。
こういういい日も、あるものですね。




