ブラックテープ
その存在を知る人は少ない。
「あの……」
そんな存在であっても俺のところにやってくる客はいる。
その名は、ブラックテープ 。
俺はアンダーグラウンド社会の仲介屋。
普段は、やってくる人にいろんな人を紹介するていう仕事をしている。
一方で、探し物があれば、それの情報を集めたりするっていうのも仕事の一つだ。
ブラックテープは、伝説の品物の一つだ。
その伝承は、古くからある。
都市伝説では、本当に真っ黒なテープだ。
今や使われていないカセットテープそのものの形をしている。
ただし、中身は全く違う。
オリジナルのブラックテープは5本作られ、それぞれが500年間の歴史となっている。
1945年を起点とし、5大陸ごとの歴史ということだ。
中のデータを見るためには専用の記事が必要となるとさなてきたが、超高密度磁性体によって、閲覧することが可能ではないかと噂されている。
もちろん、俺はその現物を見たことはない。
だが、祖父が持っているという話は聞いていた。
どれを持っているのかは知らないが。
客には、見つかる可能性が極めて小さいことや、それであっても料金は発生するといったことを伝える。
その了承を取ってから、俺はルートを駆使して、オリジナルではなくコピーでもいいからということで探し回ることになった。
祖父に尋ねるとそんな昔のことは忘れたと言われ、手の者を使って全世界を探し回ったものの、とうとう見つからなかった。
「……」
「ということですので、申し訳ございません。ただし」
俺はとっておきを見せる。
「ブラックテープそのものではありません。あくまでもコピー、それもコピーの切れ端です。それでもよろしければ、お譲りいたしましょう。契約金に上乗せをしていただくことが条件ですが」
「ええ、支払いましょう」
その人は、何のためらいもなく、持ってきていたのでスーツケースを俺に見せる。
ふたを開けると、金塊が詰まっていた。
たった数センチしかないこのテープには、これほどの値打ちがあるのだ。
ただし、使った責任はこちらにはないが。
「また、どうぞ」
俺は去りゆく客に声をかける。
何分かするときっと悲鳴の一つでも聞こえてくるだろう。
ここはアンダーグラウンド。
何が起こっても不思議じゃないところだ。