77話
「そんな、今までので私は……」
シーサーの言葉に私は両手で顔を覆う。
先程から皆が私を笑っている蔑んでいる、嘲笑っている憐れんでいる。
皆々シーサーと同じだ。私はただの見世物になっている。彼らからしたら、シーサーに見切られた女だ。数の多さで有利と思い込み、シーサーと私の断罪
を楽しんでいる。
この立場が逆転したらきっと口を揃えてこう言うだろう。
私は殿下の為に、第2王子にやらされたのだ、私は何もしてないシーサーがやったのだとね。
皆々同罪だ。許さない。
私は顔を覆ったまま、この場に尋ねる。
「ここに集まっている皆様はシーサー様と最後まで供になるのですか?」
するとシーサーは私の言葉に愉快そうに答えてくれる。
「何を言っている。ではないとここには集まらぬ。なぁ?」
違う方向からも声が聞こえる。
「そうでございます。殿下のお情けで最後は女性にしてやるとの言葉です。我々が」
その貴族のゲスな言葉に周りの貴族が同調する。チラっと叔父様を見ると眉間にシワが寄っていた。叔父様もこのお遊びに限界がきている様だ。もう茶番は終わりね。
私は崩れた姿勢から声をだす。
「だそうですよ陛下」
そう言うと何処からともなく健在な陛下が現れる。
第2王子派の貴族は動揺しシーサーは唖然とする。
「父上は既に亡くなったのではなかったのですか?」
シーサーの疑問に王様は答える。
「其方の差し金で死にかけたがクレア・レイナスに助けて頂いてな、命は助かっておる」
シーサーは私を忌々しいと睨む。私は起き上がり、シーサーと宰相に向かって話す。
「6年前ですかね、全ての民は王のモノ、何をしようが許されるのです。第1王子じゃ優しすぎてこの国は更に荒れるでしょう。貴方の方こそ王の器だ!っでしたっけ?中々の口説きだと思いますわ」
宰相の鉄仮面が剥がれびっくりする。そして、シーサーは眉をひそめる。
「それは我らの誓約。誰も知らないはず。どうして知っている?」
怪訝そうにシーサーは私に言う。私はにっこりとほほ笑む。
「そうですね、見たのですわ。まぁ、夢の中ですがね。ですが、シーサー様が王に成ろうと私は構いませんでした。しかし、私達を利用してただと済むと思いまして?」
私はなるべく口調を強くして話す。私の言葉にシーサーは目を閉じる。
「なるほど、私の正当性も無くなり、もう分が悪いな。だが、ここに居るのは我らの方が数が多い。こうなれば父上を含めここに居る方には今宵不幸にあってもらおうか」
ニヤリとしてシーサーや周りの第二王子派派集まる。中立派や第一王子派は私の後ろに集まり対立する。
「それが貴方の最後の言葉ですか。私への謝罪の一つもあれば少しは考えてあげても良かったのですが無理でしょうね。貴方は生まれてくる世界を間違えましたわ。きっと神も魔物も居ない人だけの世界ならば貴方は成功していたでしょう。貴方はこの国を世界を理解してないですわ」
以前、聞いていた通り、この国の神を蔑ろにしている節がある。争う事で魔力土地にどれ程の影響があり、この国の神にどのような影響を与えるか考えていない。
「何を言っている。ちゃんと有効利用してやったのだ。感謝されこそ恨まれる事はしてない。私の役に立てるのだからな。それにこの国を理解していない?それは神の成り損ないの魔物の事だろう?何が王族は友人の子孫だ。利用してしまえばいい。その魔物は神と同等の力を持っているだけだ。ならば使う手は無いだろう?」
「貴方は何を言ってますの?神にも等しい力を貴方が扱えると思ってまして?」
私の言葉にシーサーは不愉快そうにする。
「貴様は間違っている。神にも等しい力ならば私も持っている」
そう言って何かを呟くとシーサーは体が膨らむと魔物化する。その姿を見て陛下は唖然とする。私の後ろの者達も同じだろう。様々な言葉が聞こえてくる。
「封印されている神も元は知性ある魔物だ。ならば私もこの姿になっても何の問題はあるまい。私の先程の言葉の意味もわかるだろう?私もこの国の神と同じ位置に立った。この力はちゃんとした神から頂いたのだ。ならばこの国で崇められている魔物を使役しまえばこの大陸も簡単に堕ちるだろう」
私は小さく溜息をつく。
「それが貴方の答えなのですか?」
「なんだ、その態度は?この場を支配しているのは私だぞ?」
本当にどうしようもない。
シーサーは何かを求め過ぎて狂ってしまったいたんだ。私は呟く。
『踊り狂え、イフリート。全てを包みこめ煉獄インフィルノ』
周りは一瞬で煉獄の炎に包まれる。
皆慌てているが気がつかないのかな? インフィルノが本当に燃やす気なら既に死んでいる。
そう、死の与奪は私のモノだ。
数人炎に包まれて何もないのに気がつき、安堵するモノ、
私へ睨むモノ、嘲笑うモノ、中にはこの不思議な状況を理解したモノもは畏怖している。
『全てを変えよ、ジファ。絶対零度の監獄結界コキュートス』
私が唱えると炎は激しく燃えたかと思うとパキンと凍る。
全てが幻想的だ。
凍ると共にキラキラと氷の粒が輝き、別世界だ。
だが、この異常性を理解しているモノ達にどう映っているか分からないけど。
現に絶対的な力を手に入れたと思い込んでいるシーサも私を見て怯えている。いや、私の後ろにいるモノ達に怯えている。
赤く燃える髪に美しい顔立ちの女性と青く流れる髪の美しい顔立ちの女性、どちらも上位の存在なのだから恐ろしいはずだ。
『顕現しイフリート、ジファ
、コレより神々の断罪を行う』
コレがニャルから教えて貰った古代の呪文だ。火と水は互いに合わないのでこの呪文は伝説とされていた。
今なら分かる。混沌を得て、矛盾を生む事で属性を共存させる事が複数属性の相性の問題を解決させるのだろう。必要悪だ。
「御機嫌よう皆様、既にお気づきかも知れませんがコレは物語などで綴られている古の裁判を実現させました。貴方がこの国の最高の権力を使うなら私はこの世界の最高の権力を使います。自分の出したこの結末を恨んで下さいな」
シーサーは舌打ちをして、言葉を紡ぐ。
「……イヤ イヤ クトゥウグア」
現れたのは炎の女性だったがすぐに上半身が弾け消えていく。余りの予想外の様でシーサーは叫ぶ。
「何故だ!何があった!彼奴は神だろう!邪神だろう?」
『頼る神を間違えたね〜、アレは私と常に敵同士であるのだよ。死と混沌を頼るなら私の分野だよ。ふふ、私は私の役割通り君たちには混沌と死を与えようじゃないか』
シーサーの叫びに答えるようにニャルが出てくる。
ニャルの姿は悍ましく、形が有って無いような見る者を恐怖させる姿だった。
周りもニャルの存在を確認すると動けなくなる。本能で分かっても体が動けないのだろう。
『ふむ、この姿だと君達如きでは無理か。ならば、蛇にも同じような結果であっただろう。君達は戦う相手と相談する邪神を間違えたね。それもまた一興か』
そう言いながらニャルは神父をイメージできる様な姿の優男になり、私の後ろに控え、そして、消える。
「さて、貴方達はこの場で神々より裁きを受けて頂きますわ。第二王子派の皆様、重い罰ならば過去の自分を恨みながら罪を償って下さいませ」
後ろにいるジファから冷めた笑いが漏れる。
恐怖した第二王子派の皆が私は悪く無いや助けてくれと懇願するが私は知った事は無い。
「神々より判決を言い渡す」
イフリートの炎が燃え上がり数人の貴族が泣け叫びながら転がる。その姿を見た貴族達も逃げ混沌と場が支配する。
燃え続けていた貴族は急に凍るとパリンと音が鳴り響き消える。
「……コキュートスに連行されましたわね。内から燃え上がる様な熱さと凍った世界で罪を償う為に永遠に等しい時間を過ごす彼らを思うと同情しますわ」
50人は連れて行かれた。宰相は残っているって事は魔物化はしてないのと直接的に悪事はしてなかった様だ。デュオルク伯爵は勿論居ない。
シーサーは魔物化が解かれ、ただ怯えるだけだ。身体中に呪文が犇いている。
シーサーは意図的にイフリートとジファにこの世界でケジメをつけさせる為に生きたままでお願いした。死んだらどうなるのかは知らない。
あの呪文達はシーサーへの脅しだ。
良く見たら貴族達も同じ様に呪文達が身体中に蠢いている。
私の一声で彼等は生きるも死ぬのも決定権はこちらだ。
今後彼等は何も出来ない。したら直感で死ぬと理解しているだろう。私に媚を売る貴族が増えそうで嫌だな。
イフリートとジファはスッと消えると周りの幻想的な世界が無くなる。第二王子派の大半は腰が抜けたり放心状態だ。
シーサーに近づくとヒィッと悲鳴をあげ宰相に隠れた。
宰相も困った様に両手を上げる。陛下を見ると陛下も戸惑っていたが叔父様と共に中立派と第一王子派をすぐに叱咤して場の収集に当たってくれた。
本当に何もかもが終えた瞬間だった。
ファンタジー感を出したくて物語を長くしたのですがどうでしょう?投稿した時からこの〆で考え書いてました。この感じの断罪をしたくて伏線を張ったのですが難しいですね。
後は後日談とオチで第二王子編は終わりです!そして、ラストは一応タイトル回収です。
いつもお読み頂いてありがとうございます!




