75話
数日をかけて、私は王都へついた。今回もマリーが隣でついている。服も社交場になるのでドレスを着る。色も赤と大人っぽい。炎をイメージしてメリルが仕立ててくれたらしい。メリルが有能過ぎて有難い。私の顔付きや見た目は幼くはあっても成人した女性と外見は変わらない。逆にまだ大きくなるのか不安になる。
前回の王都訪問で王城まですんなりと行けた。だが王城では気を引き締める。門から入り、王城から舞踏会が行われるホールまで歩く。既に第2王子派の貴族がちらほら見えている。私を見ても忌々しげに見る者、私の事を知らない者、興味がない者と様々である。そんな中に見知った顔がいた。
……デュオルク伯爵だ。
ヒョロリとした長身に頬が出っ張った魚顔を忘れるはずがない。死んだはずなのに何故この場にいる?
彼は私を見つけるなり意味ありげにニヤリとした。その姿を見て更に困惑する。私は悟られない様に通り過ぎようとする。しかし、横切ろうとしたら声をかけられた。
「どうもお久しぶりです。レイナス家当主クレア様」
その言葉で私は確信した。彼はノルマンディー領にいた本人だ。家宝を見せたのを見られたはずだ。しかし、私はレイナス領から来たのを王都で確認されている。私も挨拶をし、デュオルク伯爵の言葉を待つ。
「ん〜、どうも腑に落ちませんね。何故貴方がレイナス領から来れたのかが私でも分からない。双子とか居たりします?そうだとしても理屈に会いませんね。移動手段があるのでしょうか?」
デュオルク伯爵の言葉を曖昧に笑みを浮かべ対応する。すると彼は私から何も情報を得られないと理解したのだろう。肩を竦める。
「まぁ、仕方ありませんね。その笑みが答えですね。しかし、言質には捉えられない。これは一本取られました」
私はこれ以上デュオルク伯爵と関わりたく無かったのですぐに去ろうとする。するとお待ちなさいと止められる。
「まぁ、良いでしょう。あの時、喋る暇なく燃やされたのでこの場で伝えましょう!」
デュオルク伯爵は私に向かって高らかに笑う。
「例えこの私を殺そうとも第2第3の私が貴方をエークセレントするでしょう!!ホホホ!さっさとお行きなさい!シャッ!!」
……何それコワイ。
意味が分からないから怖い。死んだはずなのに生きていた事が分からず魔物化するのだから何かカラクリがあるのだろう。猫の真似か分からないが威嚇された。もうデュオルク伯爵に関わりたくないなぁと思った。
「おやおや、貴族としてはしたないですぞ?デュオルク伯爵よ」
突如話しかけられた声に私は懐かしさを感じる。
「叔父様も本日の緊急集会に出席するのですか?」
「これはまた珍しいですな。貴方がわざわざ辺境から御出でになられるとは思いませんでしたよピレネー伯爵」
叔父様は私に微笑むと第2貴族派がいる中で話す。
「なぁに姪が何やら厄介事にあっているようでな。家柄は変わったがワシはこの子を孫の様に思っておる。ただそれだけで此方に来たのだがダメだったかな?あの場も街の者達が守ってくれるからと頼もしい言葉を貰っておる。問題はあるかな?」
デュオルク伯爵は何か考える素振りを見せ、ニコリとする。
「問題はありません!そうですか、姪で孫の様にですね。親族の様に思っているのですか。なるほどなるほど!家族愛は素晴らしいですな!それが裏目に出ない事を願っていますよ?ではお先に失礼します!」
デュオルク伯爵は忙しく何処かに向かって行った。叔父様は溜息をつく。
「アレで貴族とは王都の貴族も品が落ちたと言えよう。それとも王都の貴族はあの様な品で許されるのか?地方の貴族の方がまだ気品があるかもしれんな」
皮肉気に叔父様は私に話す。周りも思う所があった様で何とも言えない表情をしている者が多い。それを見た叔父様は私に微笑み、付いて来なさいと言われる。
私は叔父様の言う通りについて行くと人気のない場所にたどり着く。急に人の気配が無くなった。何故だろう。すると目の前に1人の老人が居た。
「久しいのぉ。陛下の件でお世話になった。改めて自己紹介する。ワシはフォーマル家当主のサイモンじゃ。其方には友人を2人も助けてくれた事を感謝する。この場は国に認められた王にしか開けない場じゃ。ワシからは言う事はない。互いに失敗しないようにしよう」
そう言うとフォーマル侯爵は去っていく。
叔父様がフォーマル侯爵が私に合わせたと言う事は先程の言質も含めて中立派が私についたと言う事を伝えたかったのだろう。叔父様も私への用が済んだみたいでそのまま、会場へ会おうと言い残すと立ち去った。
「ニャル?聞こえる?」
『あぁ、聞こえる。ただ、呪文達が私を威嚇している。怖い怖い。コレでも神の端くれなのだがね。中途半端な呪文達の防衛など大した事はないが面倒だ。君も大技以外使えないだろう?』
「そうね。お相手も同じでしょう。私の護衛お願いね」
『邪神を護衛にする君は初めてだ。存分に楽しませてもらおう』
叔父様が来て下さるとは思っていなかったが私への味方が増えただけで心強い。
私の婚約者様との勝負。どれだけ情報を引き出せるかが鍵になる。
扉を開け、私は敵陣に入った。
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