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美人悪役令嬢は生きる為に悪役をあえて貫く  作者: イブ
4章 立ち直る悪役令嬢
74/80

74話

次の日になると私は今も寝ているお父様の所にしばらく付き添った。今だ起きないお父様を見続けたがシャルがやって来たので私は部屋から出る。屋敷の中もざわつきなく機能している。心配していたのは使用人達の仕事ぶりだがメリルの指導が良いのかテキパキと動いていたので公爵家としての面子は保たれるだろう。昨日のうちにどの様な人物か来ているか聞いて使用人達は目を丸くしたとマリーから聞いていたから心配だったが良かった。マリーとは少し朝話したが私の雰囲気も変わったらしい。自分では気が付かなかった。

そして、マリーと話しが終わるとメリルがスッと現れた。



「クレア様、王族より緊急集会が開かれるそうです。それともう一つ手紙があります」



何々と手紙を見ると私は溜息を吐く。メリルはずっと後ろで私の言葉を待っている様な気がしたので話した。



「どうやら私は王族の部隊を壊滅させた罪で問われており、反逆罪らしいですわ」



メリルもそれはそれはと白々しく言う。



「でしたら国外から争いのタネを持ってくる予定でしたと言っているようなモノですね。となると早めにクレア様の口を封じと始末が招集の目的ですか。国民への情報操作も罪を公開し国を転覆させようとした悪女って所でしょうか。そうなると平民は王族争いだと思い、必要以上に関わらなくなる。そんな所でしょうね」



メリルの言う通りだ。ワライクバの件もケイサツベライが民の間で第二王子派の話を仄めかして情報を流しているらしい。王族や貴族から与えられる御触書の情報は信用されてない。だから、民の間では私が何故か知らないうちに人気になっているそうだ。その婚約者の第2王子と争いが起こっていると今回で知られるだろう。そうなると私に利がある。王族の評価はがた落ちなのだ。第1王子は民に優しいだけで無能、第2王子は優秀だが冷酷と世間の評価だ。世間がどう評価しようと絶対王政のこの国では意味はない。しかし、公爵家は王族の親戚にあたるのだ。教会からこちらに権利を委託されたら今いる王族は処分となる。民衆には力は無いが教会が動くと王族も危うい。しかし、教会は沈黙を続けている。ならば、今の内に私を始末すれば良いと判断したのだろう。

第2王子は自分はスペアだとコンプレックスを持っていたはずだ。王族のスペアの公爵家は野心を持っている第2王子からしたら同じ立場になる可能性があるから畏怖の対象だったのだろう。だから、お母様、お父様、私の人生を滅茶滅茶にした。だがコレで決着がつく。私が勝つか第2王子が勝つかだ。

しかし、私を正当化して第2王子に勝てるか?

ただ、力でねじ伏せる事は出来るだろう。しかし、第2王子の甘い汁を吸おうとした連中からは王族殺しの大義名分を得て私を殺しにくるだろう。

ならば私を正当化しなければならない。陛下が任しとけと言った半年は過ぎた。そして、最近になり陛下の死の噂が流れている。私が治したのだ。病で亡くなったと言う噂は逆におかしいのだ。



「陛下が亡くなったと言う噂が第2王子の強みになっているかもしれないわね。まだ教会より王座を指定され公認されていない今、宙ぶらりんだからこそ私を仕留めチャンスでしょうね。王が理由なく家臣を殺す事は他の家臣に不審を抱かせやすい。でも、シナリオが出来すぎじゃないのかしら?」



メリルもそうですねと頷く。



「だからこそ、隙をつきやすい。第2王子の思惑通りにいっているからクレア様が邪魔でしかないのでしょう。今回でクレア様を排除しなければならないと考えたはずです。容易に想像出来ますね。今回の緊急集会はクレア様の断罪でしょう。簡単に思いつくのでクレア様が疑いたくなるのも理解出来ます。私の考えでは第2王子派の者がメインに呼ばれ彼方の都合で進行されるでしょう。そこをうまく活用出来れば回避どころか反撃できると思います」



「そうね。ならば、それを逆手にとって自ら自白してもらいましょう。ご隠居に聞いてみましょう。状況を知っている私からしたら陛下の死が不自然過ぎます。何か裏があるのでしょう」



私はメリルとの会話を終わらせ、ご隠居の元へ向かった。その途中でレオンを見かけたので声をかける。レオンは私の声に笑顔になる。昨日何があったかは聞かないでおこう。



「クー、どうしたの?」



「見かけたので声をかけました。これからまた忙しくなりますので」



そう答えるとレオンは悔しそうな顔つきになる。それは仕方ない事だ。私はレオンとの話を変える。



「蜘蛛になったデュオルク伯爵に襲われそうになった時、助けて下さってありがとう。嬉しかったわ」



レオンは私の言葉に少し笑う。



「クーと出会った時も蜘蛛の魔物だったね。あの時クーに助けて貰って無かったら俺は死んでいた。だから、俺はクーの力になりたかった。クーなら簡単に倒せたかもしれない。だけどクーは1人じゃないって伝えたかった。ジュリアスとはその点は互いに思っていた事だから共闘した。クーはずば抜けて優秀だよ。1人で何でも出来る。だから、俺はクーの力になりたい。人は1人じゃ限界が来る。その支えになれたらと俺は思っていた。だが思っていたがこれからの事は貴族じゃない俺には何も出来ない。参加する資格が無ければ助ける力にもなれない。ただクーを守りたいだけなのに俺は未だに無力だ」



レオンの言葉に私は微笑む。



「レオン、貴方の気持ちは嬉しいわ。私を信じて下さるだけで私は強くなれるわ。もう1人じゃないって分かっただけでも力が湧くもの。貴族の私も守りたいものは守れなかったわ。それは仕方ない事だわ。ありがとうね、これは私の最後の戦い。私はケジメをつけてくるわ。リリィとシリウスと帰りを待っていてね」



レオンは頷いてくれた。私はその反応が嬉しかった。私はもう1人じゃない。





足取りが軽くなった私はご隠居の部屋についた。ノックをして中に入るとご隠居は弱々しいが笑顔で迎えてくれた。中はご隠居しか居らず、私は横になっているご隠居の隣に座る。そして、ご隠居は待っていたと話し出す。



「陛下が死んだと言う噂が流れておる。其方も気がついておると思うが陛下は生きておる。其方が叱咤したアルノー殿下もあの日以降から王としての判断をする様になった。今までは弟に対して何もしなかったアルノー殿下は決別し我々が動きやすい様にしてくれていた。それに其方の子飼いのメイドが色々と暗躍してくれたようじゃよ。後が無い者は優秀じゃなぁ。其方の様に人を操るのに長けておきたかったと心から思ったぞぃ。さて、話をする」



私はご隠居の言葉に頷く。



「招集の手紙が来たののだろう?今回の招集は前々から行う様に仕向けてはいた。陛下の死の噂がキーだ。タイミングが今になったのも好都合だ。あの魔道具は予想外だ。レイナス領から王都へ向かえば騎士の件は多少牽制出来るし、扱い次第では武器にもなる。緊急招集ならば第1王子派も入れるはずだ。ならば、其方にも分があり、ワシらが用意した場を有効に使ってくれ」



そして、ご隠居は私にどのような流れかを教えてくれた。確かにその流れで私が断罪されれば、第2王子の言質を取れる事になる。ならば私はご隠居達の頑張りを無駄にはしない。

ご隠居との会話を終え、私は部屋に戻った。戻るとすぐにベッドへダイブし横になる。部屋には誰もいない。当たり前だ。だけど私は話しかける。



「私を騎士の元へ導いたのもこの結末へ持って行く為なの?」



私の問いかけに誰も答えない。



「貴方には恨みもある。だけど、散々引っ掻き回したのなら最後の最後まで私に付き合いなさい」



私の言葉に反応するかの様に頭に声が聞こえる。



『私をまだ呼ぶのか?』



「呼ぶも何も私に取り憑いているのでしょう?なら貴方は私のものよ。肩書きは邪神でしたっけ?初めは貴方から頂いたモノは確かにロクな事は無かったけど良い方向に向かったわ。私次第で貴方は良くも悪くもなる。ならば、私は貴方を良いように利用してみせるわ」



『中々面白い考えだ。私は混沌の中で君を助けるが助けない。良かろう。君の好きにすると良い』



私は確かにワライクバでニャルがシッカーに力を与えなければと恨んだ。だが、私が全てを助けきれなかっただけだ。ならば次はうまく利用すればいい。付き纏われるよりは良い。



『ならば、私からのプレゼントだ。次の舞台は混沌としている私の場だ。この位の贔屓はこの世界も許してくれよう。君がさらに混沌と場をわかせてくれるのを楽しみにしている』



突如頭の中によぎる呪文に私は内心でびっくりする。



「……これは召喚術?神々のって古の呪文じゃない!私にコレを渡してどうしろと!」



『場をさらなる混沌へ導けばよい。君は愛されている。ならばその呪文を使っても殺されはしないだろう。相手に憑いている奴は私の嫌いな奴でな。出てきたら私が特別に相手をしてあげよう。君が生き残れるかは自分次第だ。私は君が生き残る事を願っている』



私はニャルの言葉に頷く。



「私は最後まで足掻くわ。その為に何だってする。ありがとうね、ニャル」



やれる事はやった。王城へ行き私は自分の婚約者と戦うだけだ。

いつもお読みいただきありがとうございます!

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