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56話

文章を書くという事の難しさに心折れてました。

思った様に書けず、思った様に表現するのは難しいですね。

色々書いてみても同じ結論です。

完結に向けてあと少しなので頑張ります!

なんでここにシッカー伯爵がいるの⁉︎



『黒く染まれ、混沌に遍く全てよ、我に力を貸せ、ニャルラトポテフ、生きとし生きる者に怨みを、絶望せよ。我が身さえも飲み込め黒き外道」



シッカー伯爵の身体がブクブクと膨れ上がる。

眼も焦点が定まらない。しかし、悪意に満ちている。

腕も6本になり、もう人とは呼べない何かになってしまった。

大地から黒い瘴気が滲み出しその瘴気に触れた者は身体を蝕み死に絶える。

それだけに収まらず、死してなお苦しめる禁呪だ。

生きていても死んでいても身を守る力のない者は助からない。


人々は突然現れたシッカー伯爵の変貌に場が混乱する。


私は離れていたが旗なき騎士の円卓の数人がシッカー伯爵の近くにいた。

周りの貴族もシッカー伯爵の異常性に気づき呪文で攻撃するがダメージが見受けられない。

私もすかさず【フレイム】を放つがダメージは受けている様だがそれだけだ。

逃げろと言おうとして皆を見るとユグルと目が合う。

ユグルはニカっと笑うと大剣を構え、皆に逃げろと言うとシッカー伯爵だったモノへ立ち向かう。

シッカー伯爵へ何太刀か浴びせるが傷すら付けれない。

でも、その僅かな時間でケイトがサリーを引きずりながら皆は距離を取れた。

だが次の瞬間、ユグルは衝撃を浴びて空中を浮かぶ。上半身が。

私はただ、目の前で失う命を呆然と見るしかなかった。

シッカー伯爵はじろりと私を見るとそのまま距離を詰める。

私は余りの恐怖に身体が動かない。ただ、迫ってくる巨体に威圧され、本能が逃げろと警告するが動かない。

マリーの私の名を呼ぶ叫び声で金縛りが解ける。

私は縺れる様に後ろへ転ぶ。

後ずさるが思う様に逃げれず、目の前にシッカー伯爵が立ち止まりニタ〜と顔が歪む。

振りかざす腕に逃れられない事を私は悟り目を瞑る。

身体に何かがかかるのは分かったが怖くて目を開けれない。しかし、この数秒が長く感じ目を開けるとそこにはお父様が居た。

身体に付いているのはお父様の血だ。

お父様はシッカー伯爵の攻撃を身体で受け止めたのだ。



「タダでは死なんぞ。このゼロ距離なら其方も致命傷だろう」



お父様は構えていた呪文を唱えるとシッカー伯爵は風爆で腕を残して飛ばされる。

お父様は腹部を腕で貫かれており横腹にはだらりとシッカー伯爵の腕が刺さっている。



「お父……様、何故ここに、何故私を」



お父様はシッカー伯爵が蹲っているのを確認すると私へと振り返る。



「その様な事は当然だ。子を心配しない親などいない。この様な危険な目に遭わせてしまってすまない」



違う。私が望んでやった。

お父様は悪くない。私に覚悟が足らなかっただけだ。



「ごめんなさい。私が言う事を聞かなかったから」



自然と涙が出てくる。

私が遅れを取らなければお父様も傷つかなかった。



「クレア、私が行動を起こしたのだ。其方が落ち込む理由は何もない」



そう言うとお父様は倒れ込む。



「お父様!?」



私は【リーフヒール】をかける。

呪文達がシッカー伯爵の腕を除けて身体を再生させようとするが再生出来ない。



「なんで!なんでですの!」



今度は【ハイヒール】をかけるがお父様の傷はよくならなかった。



「クレア、もう良い。それよりも彼奴はまだ生きている。其方は強い。この土地全てを攻撃しなさい。この地と彼奴は一心同体だ。私より民を優先しなさい。其方は民を守るのだろう?」



お父様は私に優しく諭す。

マリーが近くにいる。

私はマリーにお父様をお願いしてシッカー伯爵の元へ歩く。


『我、炎の理に愛されし者なり、煉獄の炎よ、意思ある炎よ、全てを飲み込めインフィルノ』



私はシッカー伯爵やこの土地を飲み込む様に呪文を唱える。

それは幻想的な世界だった。

炎へ包み込まれ全てを燃やし無へと化す。

私の意思で民は避け、悪意は飲み込む。この土地全てが炎に包み込まれる。

そして、シッカー伯爵が焼かれ灰になり、消える。

それと共にインフィルノは消えた。

消えたと同時に静寂が支配する。

ユグルを見るとサリーが抱きしめ啜り泣きしている。

周りを見渡すと貴族街以外の町は焼け消えてしまった。

民は全てを奪われ絶望に支配されている。

貴族は私の呪文への恐ろしさに気がついたのだろう。

シッカー伯爵の脅威が無くなったと分かると私へ警戒する。

何もなくなった土地を見て私は思う。

こんな事望んでなかった。

私なら今回も上手くいくと思っていた。

だが、蓋を開けてみると民を仲間をお父様を守れなかった。私だけが守られていて守れなかった。


マリーが私を呼んでいる。お父様は大丈夫なのか心配だ。

すぐに駆け寄り【リーフヒール】をかける。

今度は身体は再生した。

しかし、幾ら【ハイヒール】をかけてもお父様はぐったりしたままだ。



「もうよい、あの禁呪は人を蝕む。人でなしの私も人だった様だな」



「私は本当の事を知っております。お父様は私の為にやったのです。人でなしではありません」



お父様は目を開き、少し笑う。



「……そうか、今でも私を父と呼んでくれて私の事を理解してくれるのか」



お父様は咳込む。



「クレア、私は其方の考えなど理解出来ぬ。妻を奪ったのは爵位の低い者、混血の者、平民の者、私にはその者達を許す器量がない。だが妻は最後まで彼らの為に心を砕いていた。其方にも妻の血が通っているのだろう。其方が信じた民に裏切られるでないぞ」



私がハイと言うとお父様は目を閉じた。

私はただ、涙を流し続けた。

いつもお読みいただきありがとうございます!

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