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55話

「ケイト!状況は⁉︎」



私は走り、貴族街の門の人集りの中心部に行くと声をかける。



「クレア様が事前に言っていた通り、貴族街に先に必要な人材を選んで話していたおかげで少しはスムーズに事は動きましたがそれ以外の受け入れに問題があります。人々が多すぎて無理です!」



昨日、私は私が居ない時にケイサツベライが動ける様にこの場に滞在して居る者で国に必要な者達を先に接触する様に指示した。私が指示で出した平民でも国の為になる者達は既に集まり、それに連なる者も貴族街に避難できた様だがそれ以外の平民は門の外で溢れかえり混乱している様だ。

貴族街には魔術結界があるので外に居る魔物なら入って来ないし安全なはずだがあの屋敷にいた何かに対しては通用しないだろう。しかし、この魔術結界で助かる命は増える。なら、やる事は決まっている。



「門を開けて、入るだけ入れなさい。入りきれない民は守りきれないわ。だから、切り捨てるわ。ただ、選別はなるべく子供、女性をメインにして頂戴。外にいる者には今ある武器を投げ渡して。慈悲として自分の身は自分で守って伝えて」



少しでも人々を助ける事だ。私が言うより、冒険者で平民の中でも人気があるケイトにお願いした。ケイトは門の上に登り大声で叫ぶ。私の伝えた内容をよりオブラートに包み平民に言うが外は悲惨で生きたい、生き残りたい者達の叫びで溢れかえっている。『助けてくれ!』『死にたくない』の他に貴族に対する暴言や私にもだ。聞くだけで心が磨り減りそうになる。それを察したのかマリーが側に寄ってきて、手を握ってくれた。



「マリーも無事だったのね。良かったわ。今回の騒動は厄介だわ。この貴族街に居たら少しは安全だし、ケイサツベライは強いから守ってくれるわ。貴族街に入れる人数も無限ではないわ。それでも助けれる命を助かったらとの思いですわ」



「クレア様もご無事で良かったです。ですが優れない様ですね?無理をするなとは言えないですが生きてくださいね!」



マリーの言葉に私は頷き、門を開放して、ケイトの言葉通り、子供や女性が貴族街に入ってくる。中には男性も入って来ていたが何も咎める事はない。ただ、居心地は悪いだろう。半分も入って無いだろうが中は人で溢れて来たので門を閉めさせた。まだ、外には悲痛な叫びが聞こえてくる。

後はこの場に残るのを渋ったラクシエルが誘導してくれるだろう。領主の館での出来事は人災なのか判断も付かないが騒動の一つと捉えラクシエルに任せる事でこっちも安心できる。

門の上に私も登り、平民街を見渡す。沢山の魔物が見えており、貴族街の門に集まって居る人はまだまだ沢山いる。



「皆の者!其方等は見捨てられたと思うか?」


私に注目したので大きな声で皆に問う。皆は私の姿を見ると文句は言わなくなった。隣にいるケイトだけだった時は沢山、貴族への暴言もあったはずなのだが今は気まずそうにしている。



「そう思うのならそれが答えなのでしょう。確かに領主の館では半数の貴族がこの襲撃で亡くなってます。ですから、捨てるも何も其方等を助ける者は居ない」



私がそう伝えると一気に絶望に染まる。周りに広がり、遠くで食い止めている冒険者や勇敢な平民も伝わるだろう。



「そして、この場に集まった皆が理解しているでしょうがこの貴族街には人が多すぎてもう入れません。後ろも前も囲まれ私達は窮地に立ってます」



皆、私の言葉に頭を俯き、もう助からないと理解したのだろう。元々死ぬ予定だったのだから諦めもすぐについたのだろう。



「何故、皆の者は俯く?其方等は一度死の宣告をされ生きる為にこの場に許しを請いにきた者達であろう?元々死ぬ運命だったのでしょう?諦めたくない死にたくないからこの場に集まったのでしょう?なら何故生き残ろうとしない?武器を捨て、安全な場に匿って貰えないと嘆き、みっともなく死を待つ姿の其方等を救う理由はあるのか⁉︎」



私の言葉にハッとした様だ。数人に生気とやる気が戻り、覚悟ある顔つきになる。


「この場に残った者の大半は立派な殿方でしょう?ならやるべき事は何か!武器を取れ!剣を取れ!戦い抜け!戦い抜いて生き残れ!其方等にその意思があるのなら私、クレア・レイナス公爵家の名のもとに其方等と共に戦うと約束する!さぁ、皆の者答えよ!」



私の言葉が届いた様でさっきまでお通夜の様な雰囲気が活気溢れて、雄叫びをあげる。コレが彼等の答えだろう。



「しかと聞き入れましたわ!これより反撃といきましょう!『我、フレイヤを従える者なり、我が力が続く限り炎の矢は消えぬ』ファイヤーアロー!」



私は門の上から敵を眺めながら魔術の矢を魔物を撃ち抜く。

ホーミング機能が付いているのか思い描く様に矢が飛んで行く。苦戦している冒険者をメインに私はひたすら、矢を放つ。

その作業をどれ位続けたか分からず、何時間と感じる中、私は門の上で魔物の進入を防ぐ。ケイトも他のメンバーも前戦に行き、魔物の進行が遅くなった。そこで私は門から降りて戦場へ向かう。まだ体が辛いがそうは言ってられない。ケイト達に戻るように伝え、門の近くに皆が集まり固まった。



『我、サラマンダーを制し者、そびえ立つ炎は何人たりとも通さない。ファイヤーウォール』



魔物からの攻撃を防ぐ。それどころかファイヤーウォールに触れた魔物は次々と自滅してくれた。思った以上に上手くいき、ファイヤーウォール内の皆も歓喜で溢れている。

魔物達もこの炎は危険と感じた様で逃げ始めた。それを見て、やっと安心出来た。

ふぅとため息を吐くと後ろから貴族門が開くのが分かる。

何かと思い、振り向くと第2王子派の貴族がぞろぞろと出てくるではないか。皆、蒼白でみっともなく震えココに来た。そして、皆、助けてと私に擦りよってくる。

どうしたのかと尋ねると要領得なかったが厄介ごとを運んで来たのは理解した。

ケイサツベライにも目で合図して、周りの平民達にも緊張感が走る。

私はファイヤーウォールを解く。そうする事により、平民達は避難が出来るからだ。しかし、第2王子派は私が解くと怯え始めて助けてくれと懇願する。

すると後ろの方で何かが居ると感じたと同時に少し離れた所で怯えていた貴族の影から何かが飛び出し、その貴族を貫いた。

急な出来事に貴族は唖然としたまま息絶えた。

私に助けてと懇願した貴族は影を見ると叫んだ。



「シ、シッカー伯爵!何故貴様が我々を襲うのだ!」



私はその名前に身を竦めた。

いつもお読み頂きありがとうございます!

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