53話
今回は不愉快な表現がありますので見る方はお気をつけ下さいませ。
私は第2王子派に連れて行かれ、ギーベの館の中に入る。
ディオール伯爵以外はお父様の目が離れると私に向けての敵意がひしひしと伝わる。
そんな中、ディオール伯爵が私に近づいてきて、耳元で囁く。
「ルイ様に貴女が何を仕出かすか分からないので暫く預かる様に私が言われましたので安心して下さいね」
……安心?
なんか不安しかないのですが。
しかし、逆らえずにディオール伯爵について行くと地下に向かっている様だ。
「ディオール伯爵、どちらに向かっているのですか?」
「あぁ、地下にも私が借りている一室があるのだよ。そこに招待するよ。何かあったらそこには防犯用の魔術が働くし、私が使っている部屋と違い、何か災害などあった時に身を守る為の部屋だからね。ルイ様も貴女の行動を見ていたら、それ位しないと危険だと感じたのでしょう。身分をかざさずして身を呈して、民を守ろうとするのだから」
「あぁでもしないとお父様とは立ち向かえませんので」
「はは、心が強いですね。流石の私達も貴女が来るかもとは予想出来てもこの様な事を仕出かすとは予想出来ませんでした。我々も貴女を知らなすぎたという事でしょう。ルイ様から預かっている間、私と少々お話をしませんか?」
この状況で嫌だとは言えない。周りの第2王子派達に睨まれている以上、安全ではないがディオール伯爵の提案を受け入れるしかない。
「私はあまりお話が得意ではありませんの。ですから程々でしたら」
ディオール伯爵は笑顔になる。そうしている間にも地下の部屋についた。ドア越しから伝わる魔術使用不可にする王城で見た結界だ。
このまま、入ったら不味い気がする。お父様が居るし、第2王子の婚約者だからと言って第2王子派達に脅し位はされそうな程、殺意を向けられている。そんな中、ディオール伯爵は溜息を吐き、その第2王子派の1人に風の魔術を使った。使われた貴族は壁へぶつかり気を失った。
「貴様等、いつまでクレア様に無礼を働き続ける気か?流石の私も庇えないぞ。確かに我々の仲間にも被害を被る結果となったがクレア様は粛清相手を見極め、最少に収めたではないか。そこは恨むなどはなく、褒め称えるべき事だ。粛清対象となったのは自分の責だ。同じ派閥なのだから同情はしてやっても救いはしない。もし、救いたいのなら貴様等も同じ罪だ。どうする?」
周りの第2王子派は一気に顔を背ける。やはり、自分が可愛いようだ。
「まぁ良い。では、君達にはクレア様を任せれないから私と2人で中に居よう。君達は部屋に戻っても良いが外で待って居てもよい。好きにしろ」
私は部屋に入り、ディオール伯爵は私のおもてなしの準備をし始め、私はソファに勧められる。出来上がり、お茶を出されるが私は飲む気にはなれない。
「おや?毒は入ってませんよ」
そう言われても危険だと身体が反応している。
「そうですね。なら、貴族らしい所を見せましょう。貴族の嗜みに毒の魔術があります。便利なのですよ。『明かしたまえ』っとこんな感じで毒の有無を確認出来ます」
そう言って、目の前に呪文が現れ、何かの確認作業して、大丈夫だと知らせてくれる。
「まだクレア様は社交の場にも少ないので毒対策は知らなかったようですね。生活魔術を貴族は扱えるようになって一人前の貴族ですよ。相手のやり取りも魔術があるからこそ、互いを確認しあい、牽制もし合える。これから覚えていけば立派な淑女になれます。冷めないうちにどうぞ」
そこまでお膳立てされては飲まない訳はいかなくなり、私は飲む。それを見た、ディオール伯爵は笑顔になる。
「美味しいですか?」
私が言葉で返そうとしても舌が回らない。あれ?なんで言葉が出ないの?すると視界が転倒する。何が起こったか理解出来ずに身体を動かそうとするが動かず更に混乱する。
急に身体が動いたと思ったらディオール伯爵に髪を掴まれ、起こされたようだ。
「全く手間がかかりますね。さっきのは毒があるかの確認で麻痺があるかは確認されてないのですよ?一つ勉強になりましたね?人を信用しないし、人を寄り付けないようだったので面倒だと思ったが思いの外、上手くいった」
ディオール伯爵の言っている事が理解出来ない。
「私、いや、俺が何を言い出したか理解出来ていないよな?お前を前から欲しいと思っていたのだよ。社交場で見た時、欲しいと思ったがあの公爵家の娘だ。俺には無理だと諦めかけていたけど、神は俺に味方をしてくれた。フェリックス殿下は俺が殿下につけば、お前をくれると言った。だから、レイナス家を貶めて、没落させ、お前を廃嫡にして、俺専用の女にしてやる予定だったのに全然上手くいかなかった。お前を手に入れる為に沢山の人脈をフェリックス殿下につけて、皆がやりたい事が出来るように纏めてやったのに俺だけ上手くいかないのなんて不平等だよな?だから、先にお前が俺から逃げれないようにしてやる。まだ10歳だよな?見た目も幼さが残るがそこ等の女より大人びているし、些細な問題だ。男を今から教えてやる。そんな知識は無いだろうから俺がしっかり1から教えてやるから楽しめよ」
私は段々、理解し、ぞっとした。身体が動かないが虚勢を張り頑張って睨む。
「あぁ、良い!やっぱり、その生意気な目、今までの他者を見下した態度と良い、俺は最高の気分だ。お前を屈服させたい!服従させたい!やっぱり、こう言う生意気な女を調教し甲斐がありそうだ。クク、コレでも俺は女には優しいで通っているんだぜ?お前が俺に従順になったら優しくしてやるさ」
頬を舐められ、私は睨むしか出来ない。魔術封じの結界だけならどうにかなると思うが身体が動かないのじゃ意味が無く、呪文達も何も出来ないでいる。
「最高だ。君の父親も詰めが甘い。周りの取り巻きが君を狙っていると思い、俺に預けたが俺はこう言う状況を作り出す為に彼には信用を作っていたのだよ。終わって、父親に報告するかい?良いぞ?これが終わったらお前の父親は何も出来ないからな。それに醜悪を醜悪でお前を縛る。お前はこの時点で詰んでいる。この事をバラされたくなければこれからも俺の従順な女になる事だな!ハハハ」
……なんでこんな事になったのだろう。
最悪だ。メリルもディオール伯爵には気をつけろと言われたのに迂闊だった。
ただ、民の為にと頑張っていただけなのにその民も私を手に入れる為だけの駒だった。
……悔しい。ニクい。
「おやおや?涙が溢れるほど俺に愛されるのが嬉しいのかい?ならたっぷり可愛がってあげるからな?」
憎い、憎い、憎い、此奴の所為で、此奴の所為で!
動かない手を必死に動かし、ペチンと頬を叩く。
弱々しいが反撃だ。
その瞬間、お腹に衝撃が来る。身体の彼方此方に痛みが衝撃が、そして、目がチカチカする。
何か、ディオール伯爵が言っているが耳に入らない。きっとイラついて暴言だろう。
もう、何も聞こえない。聞きたく無い。
だけど、ディオール伯爵の声が愉快そうに聞こえる。
「お前にはもう、助けは来ない。希望なんて無い、絶望しろ。絶望しているお前で俺は楽しんでやるからさ」
私が何か悪い事でもしたの?
ただ、生きたかっただけ。
ねぇ、神様?聞いている?
お願い、私を助けてよ。
こんな終わりなんてヤダよ。
なんで、誰も聞いてくれないの?誰でも良いから私の言葉を聞いて!
『可哀想な少女、愛しの少女、やっと君に逢えたね、また君に逢えたね、さぁ、どっちだろう?でも、私が君に逢いたかったのは事実だ。やっと君を救える、絶望から?希望から?それは君次第。私の存在は混沌としているのだから仕方ないさ。君の望む通りに動くか動かないかは君次第?さぁ、楽しいショーの幕開けだ』
いつもお読みいただきありがとうございます!
不愉快な話なので次は早い投稿になります!




