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51話

投稿です!

「はぁはぁ、どうしてこうなったんだ!ちくしょう!」



目の前に転がって悪態をついているのがお母様に毒を仕込んで殺した男の末路だ。

髪もボサボサで身なりも良いとは言えない。

浮浪者そのものだ。



「死にたくない死にたくない!お願いだ!見逃してくれ!何をやったら助けてくれる⁉︎俺は死にたくない」



ガタガタと震え必死に命乞いをする姿を見て初めは怒りで気が狂いそうだと思ったが段々とその見っともない姿に辟易した。



「貴方は私のお母様を死に追いやった犯人です。その罪をお忘れですの?」



その男は焦点の合わない目で私を見るとひゅぅっと息を呑む。



「あれは違う!彼奴がやらなきゃ殺すって言われたからやったんだ!俺は悪くない!それにアレで本当に死ぬなんて思わなかったんだ!」



「そうですか。それではライナスから頂いた沢山の手切れ金はどうしたのです?その身なりだともう無さそうですね」



「金は……その、え、あっ、うぁ、ちが、違う!違うんだ!うぅうっ」



男は惨めにも泣き始めた。

これ以上は無駄だと判断する。本当に嫌になる。



「分かりましたわ。ですが貴方の所為でこの地域の皆が死ぬかもしれないのに貴方は隠れていて恥ずかしくないのですか?」



男は死にたくとただ呟くだけでもう意思疎通が出来ないと感じ、ケイトにもう良いと伝えると部下達が連れていく。

男が部下達に連れて行かれる姿を見て私は溜息をつく。



「クレア様が母上の仇であるあの男を殺すかとヒヤヒヤしましたが杞憂で終わり安心しました。それぐらい、殺気が凄かったです」



私はケイトに心配される程、怒っていたのか。



「申し訳ありません。いざ、お母様の仇だと思うと気持ちがざわつきました。しかし、既に主謀者に敵討ちしておりますので手を出さずにすみました」



ライナスのおかげだね。

あの時は十分かと思ったけどまだ足りなかったと思う。

ケイト達が引くのが分かる。



「それぐらいにしてやれ。さっきから皆が縮こまってしまっているぞ?それより、先程の男は明日のレイナス公爵の演説の時に突き出すで良いのか?」



シエルに言われ頷く。



「ワライクバ全域の人が集まりごった返していますのでかえって見つからなかったようですわね。それにここにいる全ての人が探しても見つからなかったのですからそれで良いでしょう。皆は既に死んだと判断して、命乞いの準備で忙しいみたいですので」



「承知した。では、我々ギルドが責任を持とう。では、私も失礼する」



「手配通りお願いしますわ。ケイト達も話が解る住人との接触は任せましたわ。私は宿で泊まりますので何かありましたらお呼びくださいませ」



私は皆にそう言うとケイトから紹介された宿に向かおうとする。



「では行きましょうか、クレア様」



「えぇ、行きましょう、マリー……。ってマリー⁉︎何故ここにいますの?」



マリーは首を傾げ、ニコッと笑う。



「クレア様がまた黙って外に行くのは分かってましたので付けていました。後ろの方でクレア様の邪魔にならない様に下がっていますと伝えたら皆さん一緒に連れてきてくれましたよ」



顔パスでついてきたようだ。

ローズの妹だし私の使用人だから皆も何も疑わずに通してしまったのか。

来てしまったのは仕方ないので溜息を吐く。



「マリー、ここは危険なのですよ?分かってついてきたのですか?」



「十分に承知しています。でも、クレア様と離れてはいけない気がしてついてきました」



マリーは真面目な顔で話すので覚悟はあると分かる。



「分かりましたわ。これ以上は言いません。では、宿に行きましょう」



私はマリーを連れて、ケイトに教えてもらった宿へ向かった。


宿に着き、マリーと同室を選び、明日に備える。



「クレア様、明日はこのドレスみたいな服装で向かうのです?」



「えぇ、それでもれっきとした魔術正装ですのよ。赤で派手なドレスですが炎系の魔術強化と他属性の耐久も少しあると聞いてますわ。これは貴族でも中々手に入らない代物ですので平民でも私の身分がすぐに分かります。後は怯えずに真っ向からお父様とお話をします」



そう言うとマリーは近づいてきて、手を握る。



「大丈夫です。私が居ますのでクレア様はいつも通りやっちゃえばいいのです」



その言葉に私はふふっと笑う。



「そうね、今までも出来たのですもの。出来ないと思わず出来ると思い明日はやりますわ。では、私は明日の為に寝ますわ」



「はい、おやすみなさいませ、クレア様」



私はマリーの言葉を聞いたらすぐにおちた。


次の日になり、ドレスに着替えを済ました私は一回転し頷く。



「これで良いかしら?」



「はい、綺麗ですクレア様」



うっとりと言う表情を見せるマリーに笑顔を向け言う。



「さぁ、お父様の所へ向かいましょう」

いつもお読み頂きありがとうございます!

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