45話
今回は決意です。
命の関わりに奪うと言うのは簡単ですがその様な事になる方は少なく、この日本では余りないと思います。
私も言葉で言うのは簡単と思いますがその場に本当にいたら判断出来るかと言われたら考えてしまうと思います。
クレアちゃんは少なくとも日本の感性も混じってますから、決意も無しに命を奪う事が出来るのか悩んだ末に時間をかけてこの話に行き着きました。
お待たせして申し訳ありません。
「……クレア様は我々に剣の扱いを教えて欲しいと言うのですね?」
私はケイサツベライの皆が集まる場所へ行き、ケイトに剣の扱いを教えて欲しいとお願いした。
「5日後の戦いに向けてでしたら我々も居ますしクレア様には呪文があります。無理に覚える必要はないと思います」
「少し言い方が悪かったです。剣の扱いを知る事で自分が相手が何をするのかを理解したいのです。正直なお話ですが人の生き死にの場は初めてです。なので決意を込めて剣を振るってみたいと思いました」
ケイトは少し考える。
「私には呪文があります。だから、私ではなく呪文が命をこの先、奪う事があるでしょう。しかし、間接的であり命の奪う重さは直接手を下す剣の方が感じやすい。だから、貴族は平民の命を軽く扱えるのだと思います。命は生きて死ぬ……それ自体は平等のはずです。ですが生き方により個人によって差が出ます。惜しまれる方、悔やまれる方、そんな方々が居ます。しかし、平民だからの一言でその様な方々を切り捨てるのは嫌です。……話が逸れました。私は逃げたくないのです。まだ幼い私は剣をまともに扱えるとは思ってはいないのです。だから扱いを知りたいのです」
「それはクレア様がこの先、誰かの命を奪い誰かを生かす為に必要な事なのですね?」
ケイトの言葉に私は心がズキっとしたが私は頷く。
「この先、必ず命を奪う事になるでしょう。覚悟が欲しいのです」
私とケイトは見つめ合う。
ケイトはやはり何かを躊躇っているようだ。
すると助け船を出してくれたのは威勢の良い幹部のおっちゃんだった。
「おいおい、旦那ぁ!見た目は違うが幼いお嬢ちゃんがこんな決意を示しているのに旦那が渋っちゃいかんだろう?俺は剣とは己の体の一部だと思っている。だから、剣は俺を助け、目の前の敵を切り捨てる。それが俺の考えさ。それにお嬢ちゃんの言いたい事は理解出来る。魔術ってモンに頼り過ぎると命が軽くなる。いや、奪い過ぎて価値が分からなくなる。お嬢ちゃんにはその切り捨てたモノを受け止める為に剣で知りたいのだろう?なら教えてやりゃいい。このお嬢ちゃんが壊れない為にな」
おっちゃんは言葉の最後には重みがあり真剣味を出している。
この人も命を奪い背負って生きているからこその重みを感じる言葉だった。
私は貴族として生きる為に他人から奪う事を覚悟している。これは上の立場で生きる責任でもある。特権でもあり呪いでもある。
だから、しっかりと自身と自信を持ち、他者の為に判断を下さなくてはならない。
それは使用人の件がそれだった。私は間違った事はしていない。それを正す為に今から行動する。
進めば進むほど辛い。心を折れてしまうかもと弱気な気持ちが前に出る。
でもマリーがハルトが支えてくれた。
なら自分自身も支えなきゃならない。
やはり、私には覚悟が必要だ。
ケイトはおっちゃんの言葉を聞いて、分かったと言い折れてくれた。そして、少し目付きが変わる。
「クレア様、剣とは武器です。武器とは攻撃能力を有する道具。だが道具でも武器は人の命を奪う。だから、剣は切れるし刺せる。これがこの剣の正体です。性質は野蛮で暴力の塊、死を与えるもの。それを扱いたいのですか?」
ケイトはワザと剣の悪い所を教えてくれているようだ。
「はい、私には必要を感じます。その本質に触れ、私は暴力や奪う、死というものを覚悟したいと思います」
ケイトはふぅとため息を吐く。
「分かりました。そこまで本気と言うのなら私も腹をくくりましょう。女性が剣を扱うとなるとレイチェルに学ぶと良いです。少しの時間しかないので心構えや握り方や振り方位しか教えれないと思いますがよろしいですね?」
私は頷く。ケイトは私が頷くと話を続ける。
「先程、武器について話しましたがそれは本質の一つです。それは武器の本質であり人の本質ではない。私が言いたいのはですね。だからこそ、抑止力にもなります。人は恐れます。だから、武器を見せ相手を無力にする。確かに武器を使い相手を無力にするが武器本来の扱いでしょう。しかし、持ち主によって武器とは色々と変化するのです。ゴンザレスが先程言っていたように剣は半身と言う方も居ますし、仲間と言う方もいます。クレア様も自分に合う言葉を探してみるのもいいでしょう。私は頼れる仲間と思っています。この剣がある限り、私は力を奮えます。だから、大事に手入れをしたりします」
最後はにっこりとケイトは笑い雰囲気が変わる。
「剣はクレア様が想像している通りです。人の命を奪う。しかし、生かす事も出来ます。クレア様の覚悟の中に生かすも奪うもあるように剣にも同じです」
剣の話をしたはずなのに私の心情を理解していたようだ。
「そうなると剣と私は同じですね」
「ハハ、上手い事いいますね。しかし、クレア様は民の為に敵にしか向けないでしょう?だから、クレア様の覚悟は我々民も一緒に背負います。だから、この先、例え我々が死んでもクレア様が背負う事なく、我々も共に背負います」
だから、安心して振るって下さいとケイトは周りを見渡し言ってくれた。
そして、周りのケイサツベライの皆は頷き励ましの言葉を言い笑う。
ケイト達は私がどんな思いでいているのか理解しての言葉かはわからない。
しかし、今の私には凄く嬉しくて気持ちが軽くなる。
「私、皆様と出会えて良かったですわ。私は私のやり方でお父様と戦います。貴方達も貴族の罠と一緒に立ち向かって下さい。そして、皆でまたここに集まりましょう」
ケイサツベライの皆はおうと頷き、また酒など飲み始める。
そんな中、レイチェルは武器を用意してきますと言い残し、酒場を出て行く。
私はポツンと1人になった。
そのタイミングを見計らってかユグルとサリーが来た。
自然と周りも私達とは距離を置き、私とユグルとサリーの話し合いが出来る空間を見ると周りも計らってくれているのだろうと考えが分かる。
「どうしましたか?言いにくい事でしたから場所を移動しても宜しくてよ」
ユグルは首を横に振る。
「いいや、ここで構わないです。実はクレア様に話しておきたい事がありましたので場を借りしました」
ユグルのおちゃらけた雰囲気がないのを感じ大事な話だと分かるので頷く。
「実はサリーと俺、いや、私の子共が出来ました。なのでこの戦いが終わったらケイサツベライも黒の旅団も抜ける事にしました」
ユグルは少し気まずそうに話す。
きっと皆が命を張っている中このタイミングで辞めるのが気まずいのだろう。だが、私からしたら目出度いと思う。
「良いではないでしょうか。赤ちゃんが出来たのは私も同じように嬉しいです。お二人で大事に育てていきたいからの判断でしょ?なら私達に気にする事はありません。お二人方の考えを尊重しますわ」
私はなるべく優しく声をかけてあげる。
ユグルもサリーも安心したのか笑って頭を下げた。
「クレア様、ありがとうございます。ですが、ワライクバの件はサリーと一緒に戦うと決めています。そして、勝ち取った暁には2人でクレア様の領で一緒に暮らしていきたいと考えてます。2人で話した結果、クレア様の元で民として共に生きていきたいと」
私は微笑み頷く。
「クレア様ありがとうございます。ユグルは私の為にパーティーを抜けて、安全な道を示してくれました。冒険者とは死と隣り合わせ、だから、ユグルはこの戦いが終わったら2人で暮らしていこうと話してくれました。そして、旗なき騎士の円卓の皆もそれに賛同して頂きました。クレア様にも話しておきたかったのです」
「私はお二人を歓迎致しますわ。だから、後の事は安心して、この領地が良くなるのを見届けて下さい」
2人は感謝の言葉を言いながら再度頭を下げた。
そして、2人は元の場所へ戻る。そのタイミングでレイチェルは戻ってきた。
「クレア様、この酒場の裏に剣を振るえる場所があります。付いてきて下さい」
私は頷き、レイチェルについて行く。
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