39話 マリーの秘密
使用人にも沢山の職種があります。
その少しだけでも説明出来たらと思い以前から考えていた話です!
後は初期から温めていたマリーちゃんのお話をやっとかけました!
「本日よりメリルさんの紹介で働く事になりました、マリーナと申します。マリーとお呼び下さい。以後お見知りおきを」
ちょこんと頭を下げる赤毛の女の子を皆は見つめる。
初めまして、私はタタルミーヤと呼ばれていたシャルルと言います。
お嬢様が帰ってきてからは沢山の出来事が起こってしまい大変です。
その中の一つをお教えします。
マリーちゃんは話を聞くとクレア様から一番の信用を得ており、メリルさんも気に入っている様で周りの使用人達にとってはマリーちゃんは元から居た使用人達には面白くない人材です。
「シャルルさん、よろしくお願いしますね!」
真っ先に健気に挨拶してくる
マリーちゃんに私はほんわかした気持ちになったのですがマリーちゃんは数人の方々へ挨拶を終えるとまた私の所へ来ました。
……あ、挨拶をされていない先輩使用人達の目線が私に刺さる。……あぅぅ。
「シャル、私はこれからやらなければならない事があるので今からマリーと時間を取り、この屋敷内と使用人の事を教えてあげなさい。ではエヴァ、来なさい」
メリルさんは言うだけ言ってすぐに何処かへ行っちゃいました。
私もそそくさとここからマリーちゃん連れて逃げ出します。
「ではシャル先輩と呼ばせて頂きますね!では屋敷内の使用人の方々の説明を聞いてもよろしいですか」
任されたからには仕方ないので私は頷きます。
「ではまずサーヴァントギルドはご存知ですよね?」
マリーちゃんはすぐに頷く。
「貴族と平民のサーヴァントギルドがあるのは聞きました。貴族のサーヴァントギルドは行儀見習いの一環と上流階級の貴族への対応などを勉強する為だと聞いてます。平民のサーヴァントギルドは普通の仕事よりお金にもなるし貴族も安上がりで使用人を雇えると聞きました」
うん、良く勉強しているね。
「その中にも主人の評価次第で平民もアッパー・サーヴァントになれるのですよ。なので平民も凄く良い仕事をするのですね」
「それってキング・サーヴァントギルド認定ですね!サーヴァントギルドも3つ管轄下があり、アッパーサーヴァントが貴族、ロワー・サーヴァントは平民、キング・サーヴァントは王族より権限を得た方々と聞きました。使用人とは実力で決まるギルドなので貴族も平民に負けない様に努力しますし、平民は貴族には学やマナーと何もかも劣るけど努力次第では待遇も地位も良くなるようですね」
成る程、メリルさんが入れたくなる訳だ。ここまで理解しているのなら中々の逸材だね。
「はい、良く出来ました!ならサーヴァントギルドの事はもう良いですね。職務の内容よりも先にサーヴァントとしてマリーちゃんが何処を目指しているかによって仕事も変わってくるのよ。大雑把に説明すると管理職、屋内、屋外と別れます。筆頭が居て、助手がいるのは何処も同じです。筆頭に気に入られて主人にも認められるとサーヴァントギルドに申請して昇格試験に申し込み合格する事でサーヴァントランクが上がるのです。筆頭も部下を育てたという事でサーヴァントギルドからその時、報酬が出ますし、筆頭が居て昇格してしまい同格になってもサーヴァントギルドからその者には主人の足りない分の給料は上乗せで渡されるのです。ですが、大体の貴族は昇格すると自分から給料を正規に払うのでサーヴァントギルドから貰う方は少ないようですね。マリーちゃんは何を目指しているのかな?」
マリーちゃんは考えているようだ。
「私はクレア様の役に立ちたいので管理職を目指したいのです」
「う〜ん、マリーちゃんは平民なのよね。なら時間はかかるけど成れない訳じゃないわ。それならハウス・スチュワートを目指して行くのが良いと思うわ。ならまずは侍女、レディス・メイドクラスからならなきゃね。本来ならメイド・オブ・オールワーク辺りから始めないと行けないのだけど王族御用達サーヴァントからの推薦ですからハウスメイドからのスタートですのでマリーちゃんは他の先輩達よりも早いスタートですよ!」
マリーちゃんは首を傾げる。
「メリルさんはどの役職ですか?」
「メイドさん?メリルさんはなんか不思議な方ね、ヴィクトリアン・サーヴァントクラスで本来なら家令を任せても平気なの。先程のエヴァさんはどうやら、仮ですがランド・スチュワートを受けたそうです。ランド・スチュワートとは領地の資産管理をするお仕事ですね。ランド・スチュワートクラスになると使用人と言うより、パートナーや代理人に近い扱いです。そう言う意味ではマリーちゃんが目指している場所ですね」
「エヴァさんには負けないようにしたいです。でもメリルさんはやっぱり凄いんですね!」
「メリルさんは王城で勤めていてもおかしくないわね。公爵家が低いとは言わないけど以前の使用人達とこの屋敷にいるのか分からない位凄いですね。以前、王族御用達サーヴァントなのではと聞きましたがはぐらかされました。ヴィクトリアン・サーヴァントクラスなのに役職に拘らず紹介されたとの事で勤め始めたと聞きました。旦那様もメリルさんには警戒していたようですし、メリルさんも普段は近寄り難いですので少し打ち解けたらと思いますが現実は難しいです」
「大変なんですね。メリルさんは笑ったりすると可愛いのに損ですよね」
え?メリルさんって笑うの?
「マリーちゃんの前では笑うの?」
「いえ、頬が緩む位で良く見なきゃ分からない変化です。ですが傷ついたり笑ったりちゃんとしていますよ?分かりづらいだけです」
……知らなかった。
思い出すのは淡々と怒るメリルさんの姿。うん、今度じっくり見てみよう!
「あのシャル先輩、聞いても良いですか?」
「ん?何をかな?」
「クレア様から私は全てを聞きました。ここの使用人の事も詳しくです。何故その様な事が起きたのですか?」
だから、さっき挨拶をしなかった人した人と別れたんだね。
「知っているのね。……あの件は多くは語れないけどそうね、まずは王族からの使命だったとなればどうかな?」
「王族からの使命?それでも公爵領では王族とは不可侵領域だと聞いてますよ」
「うん、そこなのよ。王族の使命で守られていようと何も効果は無かったからこその奥様暗殺だったのよ。お嬢様を盾に取る事で旦那様は何も出来ずに見過ごすしか出来なくなった。それにさっきも言ったけど使用人とはギルドで登録しているの。だからね、今回の件はギルドにも大ダメージだと思う。バトラーだった方が旦那様の権限でランド・スチュワートを兼任していたの。メリルさんは凄いですが新人ですし、旦那様の目からしたら不自然に思えたのでしょうね。信用出来ずに古参の使用人を使ったと思います。ですが全ての使用人が既に旦那様の敵だったのですから何とも言えませんね。私もただ、邪険にされていただけだと思ってましたが邪険にされていた理由が旦那様にバレない為だったので私も同罪です」
私は旦那様に助けて頂いたのに恩を仇で返す事をしてしまいました。
「それは違うと思います。クレア様言ってましたから!シャル先輩は信用出来るって、それにクレア様でも分からなかった、偶然気づけた事をシャル先輩が分かっていたら今頃シャル先輩は居なかったかもしれないです。だから、自分を責めないで下さい」
「……マリーちゃん」
私は思わずウルっとしてしまう。
「では、他にも誰がどの職種かを伝えたかったけど追い追い覚えてね!」
だが、ここにいる使用人達はロワー・サーヴァントが多いと知ったら幻滅するかな?
そうして1日が終えようとした時にもう一つの出来事が起こりました。
私は急いで出来事の中心に向かいます。
メリルさん以外の全ての使用人が集まってました。そこに居たのは威圧的なマリーちゃんと私を虐めていた先輩達でした。
私はマリーちゃんを庇うように前に出ます。
少し怖いけど怯んじゃいけない。
「タタルミーヤ、退きなさい。使用人とは実力でモノを言うのよ。新人にきっちり今後の位置付けを教えないと示しが付かないわ」
「なりません。マリーはお嬢様のお気に入りです。その上で何かあるのなら私から伝えます。私へ申し付けて下さいませ」
私は精一杯虚勢を張る。
数秒睨み合います。
「まぁ、良いわ。メリルを除いて実家の位が高いのは私達なのよ。覚えておきなさい」
「これが真相なんですね、シャル先輩」
マリーは何かを考える素振りを見せる。
「子供が何を理解した風に言っているのかしら。この場所は後ろ盾のない者は居ないわ。平民出の貴方には居ずらいわよね」
バカにした様に先輩達は笑う。
「権力さえ見せたら良いのですか?」
唐突にマリーちゃんは言います。何故かこの場でこの言葉を聞き逃す事は出来ない様な冷たい言葉でした。
流石の先輩達も笑いを止めます。
『全てを煉獄へと誘う赤い髪、正統な証の我が血よ、証明となれ!』
急にマリーちゃんは唱えると目の前に大きな剣が現れた。
「私の名前はマリーナ・リッカ・シュミットです。この国では平民ですがリッカ国の第7位王女です。病気だった私は廃嫡を望みましたが何かあってはならないと父上にこの権利を渡されたままです。確かサーヴァントギルドは国は関係ありませんでしたよね?ならこの場で私が一番の権力を持ってます。リッカ国は知ってますよね?魔力土地じゃないからこそどの国よりも戦に関しては強く結束力があります。ですからナタール皇国には嫌われてますけどね」
マリーちゃんはてくてくと歩き先輩の前で立ち止まります。
「リッカ国の王族でも救えなかった私を無償でクレア様に救って戴いたのです。ですからクレア様の為なら私は何でもしてみせます。捨てた王女の身も利用してみせます。この身分を使うとなると貴方の実家から何て言われるのでしょうね?」
先輩達は一気に顔色が悪くなった。
「では、今後も仲良くはしませんがクレア様の足を引っ張る様でしたら容赦はしませんので覚悟していて下さいね?」
……あぁ、この雰囲気はこの人には逆らってはいけないと本能が言う。
皆さんも同じ様だった。
「シャル先輩、さっきはありがとうございます。助かりました!本当なら使いたくなかったのですが誰かさんの所為で私の秘密知られてしまいましたね。クレア様に知られなければ構いませんので皆様もお願いしますね?」
皆もマリーちゃんの言葉に頷く。
「では、今日から私がこの中でメリルさんの次になりますね。仕事などはまだまだですがクレア様の邪魔になるような使用人達は覚悟していて下さいね?」
……公爵家にとんでもない新人が入ってきたようだ。
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