35話
今回は長くなりました(´・ω・`)
アルノーが思いっきり顔を引きずったのが分かる。
「ではお話をしたいのですが宜しいでしょうか?」
アルノーは顔を引きずりながら頷く。イケメンが台無しだぞ?
「アルノー、今の手駒は昔から誓いを受けている貴族以外いないですよね?そして、私が何をしても行動しなかった。いや、出来なかった。貴方の甘さもあるのでしょうがそこまで権力が落ちていると見ていいでしょう。もう第二王子に国を取られている状態に近いですね。ここまで放置するとは本当に使えない王子ですね。何か言い分はありますの?」
今の私はすっきりしてツヤツヤしているだろう。
「……いや、君の言う通りだよ。私は知らないうちに沢山の罠にハマっていたらしく身動きも取れなくなっていた」
……私この王子を王にしようと思っているのだけど本当に大丈夫なのかしら。
「……そう。はっきりと潔く言われますと怒るに怒れませんわ」
アルノーは苦笑いをする。
「君に怒られて少しは自覚したよ。私は自分で首を絞めていた。それは事実だ。その事実を受け止め、弟だからと言ってもう遠慮はしない。弟がした事はきっちりと責任を取ってもらう。そして、中心になって活動している貴族も同じくだ」
決心ついた様に言う。
私は疑問に思った事を聞く。
「それで貴方はどうやって粛清するのです?味方は?粛清するに当たっての証拠や情報は勿論。反発されない根回しなどアテがあるのですよね?」
私の言葉を聞いてアルノーはあっと顔をする。この間抜け面め!
「……ふむ、王権はまだ父上が持っているのでどうしよう」
私はため息をつく。
「ローズ、こちらへ」
ローズを呼ぶ。
ローズのはすぐに来ると腰に付いてるアイテムボックスの中から私の資料を取り出す。
「クレア様、どうぞ」
私は労いの言葉をかけ、アルノーの前に広げる。
「こちらの資料や契約書は第二王子派の者達のです。これまでの行動や主謀者、計画内容、計画書など様々あります。彼らも裏切りなどを恐れ、契約書や誓いなどをたてております。その様な大事な物は大事に大事に閉まっているので無くなったりすり替えられても大事に閉まっているので案外気づかないモノですわ」
私はニッコリと笑う。
アルノーは私の言葉にびっくりする。
「計画書などすぐに処分されるのを良く集めれたね。この様な正確な情報や証拠があったら言い逃れは出来ない。これで父上が体調が良くなった時に報せたらいいのだな」
私はアルノーから資料を取り返しローズへ渡す。
アルノーはたまもや間抜け顔を晒す。
「なぜ、タダで渡さないといけないのです?この情報には様々な方々に手伝ってもらったり経費もかかってます。貴族として取り引きを要求するわ」
アルノーは考える。
「そうだね。君の言う通りだ。互いに利益がある方が良い。私に出来る範囲でなら全て応じるぞ」
よし、言質を取った!
前世の記憶を取り戻してから私はこの場を作りたかった。遂に叶った!
今、私は本当に良い笑顔をしているだろう。
「……その様に無邪気にも笑えるのだな」
アルノーは顔を少し赤めて私の笑顔を怪しんでいる。私とて何時も作り笑顔を貼り付けているだけではないですよーだ。
「私だって本当なら平穏に暮らし腹の探り合いなんてしたくありませんの。アルノー、貴方に協力してあげるので私の望むモノを3つ下さいな」
アルノーは頷き顔を引き締め私の言葉を待つ。
「まず1つは私の庇護下の平民の安全安心保証を求めます。簡単に言えば生活の安全日々の安心身の保証です。彼等は立場が弱すぎますわ。その使用人は貴族に殺されかけていたのを私が拾いました。なので、私が提案する平民の保護を容認しなさい」
「……まさか、始めが平民の保護とは思わなかった。認めるのは私も賛成だ。だが、どうするのだ?」
私はふふんと笑う。
「考えがありますの。まずは戸籍を作ろうと思いますわ」
アルノーは私の言葉に傾げる。周りも同じ様に理解できない様だ。
この世界に戸籍なんてないのだから当然だろう。
「簡単に説明しますわ。自分の証明です。自分の名前、年齢、出身、家族などを記します。例えばの話ですがレイナス領のプーリアの町のマリーと言う平民を特定出来ますわ。そして、レイナス家の庇護下に当たるプーリア男爵の民だと分かって我々を無視してその民に悪意ある危害を与えた場合、その貴族はレイナス家への侮辱罪にもなりますし平民を悪戯に減らす無能を処理出来るのですわ」
私は一息つき、ニヤリと笑う。
「ただ、平民も悪用を考えられては困るので証明に使うのはギルドカードの様な記録媒体と考えております。それに私の領の正規の住民と認める事により、平民はブランド化しますので私の領へ住みたい者が増え、領内での利益も増えるでしょう。その為、こちらに来る平民も住めなくても何らかの民への対応を考えようかと思ってます。でも庇護下にいるのはあくまで私の民ですわ。それに税を怠る者は処分出来ますし、税をしっかり納めている者も分かります。他にも様々な平民の利点はありますがここまでにしときますわ。どうです?」
アルノーを始めとして皆がポカンとしている。
「それと管理する貴族の利点もありますが最大の利点は王族にあります。まずは王権の民衆把握ですわ。領地を与えられた領主から更に任された封地貴族の村の情報の全て。そして、民の様々な営みの重なり合いで生じる利益の予想。その歯車を仮に社会と言いましょう。貴族が社会を把握する為には個々の戸の把握が効果的であり、支配下の民の把握を領地や貴族ではなく戸籍で管理する。これなら貴族も問題ないでしょう?」
アルノーは考えて私の言う事を理解したらしい。私の話に食いついてきた。
「なるほど!それなら貴族も体面も保ち、平民は貴族から庇護を受けられる。互いに利益を得られるのなら貴族は何も言わない。寧ろ、利益が生じる平民を大事にするかも知れぬ。クレア、君の考えは理解した!私も同じく力になるぞ」
私はホッとする。マリーや皆の約束を守れたのだから。
「それは良かったですわ。それに伴い、住民票を作ろうかと思いますわ。戸籍は一つの家族とすれば住民票は個人です。ギルドカードの様な記録媒体に何処まで情報を与えられるか分かりませんが考えております。まずは私の領地から行う許可を頂きます。仮に他の領地もしたいと仰いましたら私を通して下さい。これが一つです」
「あぁ、私に出来る範囲なら大丈夫だ」
「もう一つは私の護衛はケイサツベライのリーダーです。アルノーもこの組織なら聞いた事あるでしょう?アルノーが民を想う王族なのは皆が知っています。ですが今回の件で民衆は第2王子へと傾きました。なら民の代表であるこの組織のトップと繋がりを持つのもアリでしょう。この者達との交流をお願いしたいですわ」
「それは願ったりだ。私もその組織は知ってはいたが平民同士結束が強く、組織詳細が分からなかったが君の繋がりなら安心だ。よろしく頼む」
アルノーはケイトに微笑む。
ケイトは跪き敬意を払う。
「まぁ、これが本題なんですが良いですか?」
アルノーは私の雰囲気が変わったのを見て気を引き締める。
「この件が終わったら私の婚約を破棄、そして、私の結婚破棄をお願いしたいのです」
アルノーがびっくりする。
「何故、君にはきっと良い男性が現れるはずだ。そんな早まるような事は」
「いいえ、今回の件で男性に幻滅しました。私には弟がいます。弟に領主を任せていきたいので私はその補佐に徹したいのです。変に他所から来た貴族に弟が悩まされるのなら私は初めから結婚を選びません。今回頼みたいのは私の今後の結婚破棄と領地の革命の任です」
「……そこまで本気なら構わない。ただ、君が好きな人、君を好きな人が現れたら考え直して欲しい。その時は必ず取り消す」
そんなのは来ないですね。
「分かりましたわ。頭の隅っこで考えておきます。では私も用件を終えましたので最後の仕上げにしますわ」
すると気まずそうに使用人リザベルが話しかけてくる。
「この様な大事な話を聞いて良かったのでしょうか?」
私はリザベルを見つめ言う。
「そうね、第2王子に知られた時点で殺されますわね。そして、ここの皆も殺されますわ。でも、大丈夫ですわ。貴方達は既に死ぬ運命ですもの。クリス、そうでしょう?」
「はい、彼女達は王族の使用人として不要と判断されております。今は利用価値がありますので生かしておりますが王が変わった時点で不幸にあって戴く予定であります」
私はリザベルに微笑む。
「ね?貴方達は少々王族と言うのを理解していなかったのでしょうね。替えは沢山居るのです。貴族ごっこのオチはこんな所ですわね」
「……そんな」
顔を青ざめるリザベル。
アルノーは事の重要性に気が付き私達のやり取りに入り込む。
「そんな!彼女達を助けてあげれないのか?」
「大変申し訳ありません。王族へ支える身でありますがこれは王族への忠誠の問題になります。なのでアルノー殿下のお声でも無理で御座います」
アルノーはクリスの言葉に顔を歪ませ、何を思ったか私に縋るように見つめる。
……そんな捨てられた子犬を見つけてきた子供みたいな目で見ないで!
しかし、視線に耐えれませんでした。
「……クリス、この者達をアルノー所属の側近の使用人にしなさい。暗殺の類いも仕込んでいるのでしょう?それを活かした影の者として支えさせなさい。今後の王族の事を考えるとアルノーには味方がいなさ過ぎますわ。これはこの国の未来と王族の事を考えた公爵家の令嬢のお願いだけどどうですの?」
「分かりました。今後の彼女達のあり方を考えてみます」
使用人リザベルや皆も顔色が直ったしアルノーも喜んでいる。
アルノーはでもと話しかけてきた。
「途中から殿下が付かなくなったけどそれは親しみを込めてかな?」
なんかアルノーのニヤニヤ顔を見るとムカつくし虐めたくなる。
「それはあり得ません。貴方が殿下と呼ぶに値しないと途中で思っただけです。それに王の家臣でありますが貴方の家臣ではありません。私を従えさせたいなら自力で王へ成りなさい」
私はフンと機嫌を悪くするのだった。
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