3話
今回はこの世界な魔術に少し触れます!
「私のお姉ちゃんは冒険者として名が通っております。貴族様と同等ではないですが貴族様と対等に渡り合える位の実力があります。しかし、お姉ちゃんのPTはとある貴族様に仕える事を迫られ断りました。その腹いせに私が殺されかけた所をクレア様に助けられたのです。多分、右手を取ったのはお姉ちゃんへの嫌がらせです。私の右手にはお姉ちゃんから貰った御守りの魔道具が付いていたのでお姉ちゃんは私の右手だと分かると思います」
その話を聞いて、私は目を瞑ってしまった。
「も、申し訳ありません!クレア様もお貴族様ですよね?お貴族様の悪く言うような事を言うなんて気分を害してしまって、えっと、ひっく、ごめんなさいです」
「あ〜、いや、大丈夫だよ?確かに私は貴族だけど他の貴族の話を知りたいし構わないさ。むしろ、平民から見た貴族を知りたい。いい所から悪い所まで包み隠さずにお願いね」
話を聞く限り、貴族に生かされているのが平民のようだ。
この国や土地が他の国より豊かなのは貴族のおかげで平民は貴族へ感謝もしているが畏怖の対象でもあるようだ。
貴族は平民になら何でもやっても罪には殆どならないそうだ。流石に見せしめにだったり快楽的に殺したりなどを大体的にしたら罪になるみたいだ。
触らぬ神に祟りなしってヤツだね。
あと、マリーに言葉遣いがクレア嬢より出来ているのが気になったので聞いてみたら貴族に失礼がない様に10歳までに仕込まれるそうだ。
実際に貴族にその様な口を聞いてしまったり、怒りを買ってしまうと殺されても文句は言えないらしい。
生き残る為に覚えるのだからそりゃ出来て当然か。
「お姉様はどちらに入るの?レイナス領?それともシュバルツ領?」
「シュバルツ領の辺境探索の依頼に出てました。なのでレイナス領に逃げ切れたとは知らないと思います」
「なるほどね、所で冒険者ギルドについて聞いても良いかしら?」
「冒険者ギルドですか?ギルドとは平民を中心に魔獣や魔物を狩ったり、貴族様の依頼を受けたりと様々な事をしてます。それぞれに依頼にも難易度があり、冒険者たる者にも階級があります。それで貴族にも強さなどが分かりやすくなりますし、冒険者にとっては箔がつきます。最近では貴族様も冒険者として登録される事もあるのです」
なるほど、冒険者とは平民が中心とした機関のようだ。
マリーのお姉様の話と照らし合わせギルドは中立の立場なのだろう。ギルドに所属した平民は平民であるが貴族と同じ発言を許されるとなるとギルドの庇護下にあると考えるのが妥当だろう。しかし、それでもこの国の貴族の権力は強いのだろう。
ギルドの庇護下に置いている冒険者の親族を襲っても何もないと理解して襲ったはずだ。誘って断られたから妹を殺したなんて分かりやすい。
やはり、平民の立場は弱い。
「ちなみにその貴族が何者か分かるかな?」
「お姉ちゃんが断った貴族様でしたらシッカー伯爵様です」
……第2王子派の貴族じゃん。
あそこの貴族達は余り関わりたくないのだよね。
我らがクレアちゃんが数人ダメにしているからね。
しかし、マリーを助けたいしどうする?
何か動かないとダメだね。
まだまだ、この世界のあり方を理解していないのでマリーにはここで匿うとして、シッカー伯爵はいずれご退場願いたい。
「ありがとうね、マリー。良く現状が分かった。だがマリーは私のモノだ。シッカー伯爵には渡さない。だから、マリーは安心しなさい」
急にマリーがボロボロと涙する。急に泣かれたらオロオロしちゃうよ。
「すみません。嬉しくて、でも、実は私は15になるまでに死んでしまいます。なのでクレア様に助けられたこの命はあと5年も保たないのです。この国以外で過ごしていましたら本来なら既に無くなっている命です。私は元々はリッカ国の民です。魔力枯欠症と言いまして魔力が尽きて生命も一緒に尽きると言う病気です。クレア様に色々として頂いたのに私は、私は、、」
聞き捨てられない話を涙ながらマリーは心情を語った。
元々マリーは育ちは良かったのだがこの病気に似た呪いの所為で死か国を出るかと選択になった。その時に姉がその国の全ての地位を捨てて、妹がちゃんと生きれる場所を求め旅に出て辿り着いたのが魔力が豊富なこの国だそうだ。
魔力が溢れているので呪いの進行が遅く先延ばしができたのだがそれでも余命は5年前後らしい。
そして、この呪いは知っている。RPGでクエストでどっかの令嬢を救えとあって確か、皇国の祭祀が扱う秘術が助かるはずだ。
「ナタール皇国には行かなかったのですか?」
「ナタール皇国では私の様な魔力もさほど無いモノに仕える秘術はないと断られました。この国では教会へお姉ちゃんが頼んだので痛み止めは出してくれます。しかし、多額なお金が必要でお姉ちゃんはいつも依頼ばかりで私はどうしようもなく無力なのです」
あれは貴族だったから受けれたクエストだったんだ。
平民にはお金があっても受けれない事もある。
そして、マリーは受け入れ、自分の為に姉が頑張っている姿を見て、無力な自分に泣いている。
私はこんな結末を許さない。そうだ、マリーも私と同じ未来なんだ。
なら私はその未来を否定し、自分で掴み取る。
「あ、あの、クレア様?」
思わず涙が溢れてしまったようだ。いけない。
「貴方は私のモノなんだから勝手に死んだら許さないからね!いい?返事!」
マリーは涙を拭いて困った笑顔ではいって答えてくれた。
こうしてはいられない。
マリーに必ず、この部屋から出るなと伝え、外に出る。
辺りは真っ暗だ。
屋敷に戻ると使用人達がギョッとする。
「お嬢様?離れに籠るはずではありませんでしたか?」
「うっさい!御前達は口を開くな!燃やされたいのか?」
すらすら出てくる言葉にびっくり。
そりゃ使用人達に怖がられるよね。しかも、今の私は切羽詰まっている。
かなり不機嫌と捉えられても不思議ではない。
使用人達も触らぬ神に祟りなしと見なかった事にしている。
1人使用人を呼び、書物庫へ案内させる。
そして、書物庫へ着き、誰も入らすなと命令して中へ入っていく。
沢山の本の中から魔導書を探す。こう見えても公爵家である。魔術関連の本もある。
探す事2時間位かかっただろう。ようやく探していた本を見つけた。
クレアの記憶を除くと魔術関連を教える為にこの書物庫へ来て、この本を手にした記憶があり、その時に簡単なヒールだけを覚えた。
この魔導書は癒しの書の複製で聖属性がない限り見ても意味をなさないのだがクレア嬢は全属性持ちだ。
頭が弱くなければきっと良い魔導師になっていたのだろう。
そして、この魔導書の最後に祭祀が扱う秘術が載ってある。
ここからが正念場だ。
ページを開き呪文を抑え、掴み取る《・・・・》。
目の前には飛び出した呪文の文字が蠢いている。
浮かんでいる呪文を読み上げると頭の中が焼ける様に痛い。
それでも字と字を綴り、言葉を創り、呪文へ化す。
体の中へ呪文へ染み込む。
その瞬間、全身が弾ける様に痛む。
「あ、ぎ、ぎ、ぐぅっ!」
痛い、痛い、痛い。
全身が呪われているのではないのかと思うくらいだ。
もういっその事死んだら楽になるんじゃないのかと心が囁く。
気を許した瞬間、右腕が蠢き、あり得ない方向へ向く。
「あがっ!?ぐっ!ひぃひぁ、はぁはぁ、がっ!」
言葉にならない悲鳴で叫ぶ。
ダメだ。心を強く保たないと持っていかれる。
右腕を抑え、気を失いそうになりながら起き上がり壁へ保たれる。
体よ、あと少し耐えてほしい。
何分経ったのだろう。いや、何時間経ったのだろう?
何時間も痛みに悩まされている感覚だ。
呪文が大人しくなったのを感じた。
そして、頭に言葉が浮かぶ。
『我、癒しの理を扱う者なり、今を持ってユグシドルとの契約を結ぶ』
……呪文を従える事が出来た。
クレアの知識とゲームでの知識を見ても無茶だと分かっていたが命をかけて、やってみると出来るものなんだな。
意識が遠のくのが分かる。
思ったより長くなったので後半へ続きます!