29話
これ位スマートに終わりたい(´・ω・`)
思いっきり泣いた次の日、スッキリした気分で私は朝を迎えた。
相変わらず、離れには使用人を近寄らせないスタイルでやっています。
マリーを知られなくないからね。
そう言えばメリルに頼んでライナス君の実家に私がお母様の死因に疑われたと手紙に出す様に言ったので返答が楽しみです。
外にカイン達が待っていたなで準備は済ませて外に出てる。目的地はいつも誰も居ない酒場だ。
その前に聞きたかった事を聞く。
「あの、サリーやユグルってこう言う時は来ないですけど何故です?」
カインは困った顔をする。
「情報漏洩やユグル達の身の安全です。知っていてもしもの事があったら私達平民はおしまいですので」
……嫌われていつも居ないわけじゃなかったのね。
たわいない話をしているうちに着いた。
「クレア様、お待ちしておりました。すでにピレネー侯爵はお待ちしております」
私は答える。
「本日はありがとうございます。では行きましょうか。カイン、ローズここまでありがとうございます」
2人は頭を下げる姿を後に私はあのうさぎのいる部屋へ入る。
例のうさぎが丸くなっている。
近づくとうさぎは此方を向く。
『汝、何を求む?』
……喋った!
「俺たちはシンバルを求む」
『……了承した。暫し待たれよ』
うさぎが持っている小さな本が巨大化しパラパラとページが捲れる。
そして、そのページから呪文がわっと出てくる。
私の周りやカイトの周りを囲む。
『汝、時空を跨ぐ事を恐れる事なかれ、ゲート』
視界がぐにゃっと歪む。
何かに引っ張られる感じがする。
そして、気が付いたら何処かの屋敷の中だった。
『カナリアより、飛ばされし者達よ、願いは叶えた』
うさぎが急にそう言うとまた丸くなった。
どうやらピレネー侯爵の所のうさぎの様だ。
「……本当に軸と軸を結ぶ空間移動が出来るのですね。呪文の種類は時空、でもこれは魔導具に近いんじゃ」
「ほぉ、その年でこの空間移動の古代魔道具を理解するか。噂なんて当てにならないのぉ。さすがルイの娘と言う所かな」
後ろを振り返るとそこには大きな背広の大きな老人が居た。
「お初にお目にかかります。レイナス・クレアと申します。お父様と親しいのですか?」
大男はふむと言う。
「昔からの縁じゃな。お主の母親の親戚に当たるのでな。名前を呼び合う仲ではあるな。儂は既に気づいておるだろうがセシリス・ピレネーと申す。シリウスと気軽に呼ぶが良い」
「では、叔父様と呼ばせて頂きます」
「ふぉふぉふぉ、つれないのぉ。まぁ、ここではなんだ、着いて来なさい。話す場を設けておる」
私とケイトは叔父様にテクテク着いて行く。
そして、使用人が待機している場所の前で止まると使用人に人払いを頼み中へ入る。
中はかなり広く思ったより豪華だった。
「座りなさい。まずは話せる状況を整えよう。儂の最近の趣味は自分でハーブティーを作る事なんじゃよ。こう色が変わるのが面白くてハマっておる」
侯爵家の人間なのに変わっているが第1印象だ。
カップの中が青色に変わったのに私が驚いているのを見て悪戯を成功させた子供みたいな顔をしている。
「さて、準備も整った所じゃ。ここでお主の話を聞こうじゃないか」
私は気を引き締め、叔父様の前に書類を出す。
叔父様は書類を受け取り目を通すとほぅと呟くと部屋の雰囲気がガラッと変わる。
「お主は何を望んでおるのじゃ?シッカーの没落か?」
私は首を振る。
「その者はいずれ第2王子より粛清されるでしょう。それに叔父様もその内容を確認したので理解できるでしょう。私が望むのは私の気に入っている平民の安全です」
私はマリーとの出会いを話をする。ケイトも私が何故シッカー伯爵に拘っていたのか知らなかったようで私の話に驚きを見せた。
「なるほどのぉ、そちらの土地まで死にかけながら辿り着く運、其方に巡り合う運、その者は相当な幸運を持っているのだろうな」
……マリーのスキルを知っている?
「そうですわね。私が気にいる位ですもの。神に気に入られていても不思議ではありませんわ。それで私はシッカー伯爵に要請するのは旗なき騎士の円卓に所属している黒き旅団と言うパーティにちょっかいを出すのをやめさせて頂けませんか?」
叔父様は頷く。
「良かろう。その様な理由で我が領地より冒険者が居なくなったのであれば儂からシッカーへ言ってやろう。この領地は良くも悪くも結界があっても魔物が出るのじゃ。辺境だからじゃろう。じゃから自然と強い者が集まる。しかし、一人の身勝手でその様に強者が居なくなったとなれば儂も動く正当な理由になるのぅ。任せて起きなさい。他に何かあるか?」
「本当ならシッカー伯爵は私の手でマリーの件を片ずけたかったのが本音ですが第2王子の粛清が近いなら我慢します」
私の言葉に叔父様は笑う。
「本当にルイと似ておる。彼奴は儂と同じで戦いを縄張りとしておるのでな。気質が一緒じゃ」
お父様と似ていると言われ少し恥ずかしい。
「それに民に対して心を砕く様はキャサリーに似ている。本当に2人のいい所が育ってくれた。そちらへは干渉が難しいのでそれが気がかりじゃった」
干渉が難しい?
どう言う意味だろう。
「干渉が難しいとはどういう意味ですか?」
「言葉の通りじゃよ。領地はどこもここ数年荒れておる。それにルイが問題解決を任されておる。其方の母親キャサリーが亡くなってからは連絡が一切取れなくなってのぉ。そちらへ行くのは難しくなったのじゃ。こうしてちゃんと育っている様なので安心したわぃ」
私は悪戯に笑い尋ねる。
「ちゃんと育ってなければどうなってました?」
叔父様は考える素振りを見せる。
「そうじゃな、あの夫婦は悪く言えば一つのことに対して直向きで我が強く我儘で頑固じゃからの。我儘で頑固で高飛車になっていただろうな。実際に聞こえてきた噂はその様な者が多いしのぅ」
……はい、原作クレアさんですね、ワカリマス。
「私は反面教師ですの。弟ハルトも良い子に育ってますよ」
「そうか、なら全てが杞憂だったようじゃ」
……叔父様は知っているかも。一度しか会った事はないが裏表もなく、平民からも信用が厚い。話を聞く限りだと力になってくれる事は難しいだろうが理解者には出来る。だがしかし、ケイトがいる。
この話をするべきかしないべきか悩む。
「おぉ、ケイトよ、少し頼まれごとを引き受けてくれんかのぉ?」
「はい、任せてください。ピレネー様」
「相変わらず固いのぅ。厨房よりクッキーの替えをお願いのぉ。時間をかけて探してくるのじゃぞ」
ケイトは頷き、外へ出て行った。
私はそのやり取りを見て、2人が気を使ったのだと気がついた。
「ありがとうございます」
「ん?なんの事じゃ?」
スッとぼける叔父様に私は話す事にした。
使用人の事、第2王子の事、これから起こるであろう被害の事、そして、お母様の事を私の言葉で話をした。
叔父様は始終何か思い当たる事があったのか苦い顔をしていた。
「そうか、お主の状況は理解した。そして、手助け出来ない儂は情けないのぉ」
「ここに来る時に外やすれ違う人を観察しました。騎士は居らず使用人も雰囲気は良かったです。この中は多少は安全だと理解しました。ですが、辺境ですし、ここ以外には騎士も沢山居るでしょう。監視に置かれている状況で叔父様が出来る事は限られていると思います。ですから、私の話を聞いて理解者になって下さるだけでも心強いです」
「……そうか、儂も老いてしまったのぉ。姪っ子に慰められるとは思わなかった」
私は微笑む。
嬉しいのだ、ピレネー侯爵はどの様な人物かと思ったら親戚にあたる人で何事にも公平そうで自分を理解してくれる、それだけで私の助けになるのだから。
ノックがなる。
ケイトが戻ってきた様だ。
そして、しばらく雑談をしてお開きになった。
そして、次の日、叔父様からすぐに手紙があるとケイトに呼ばれ、行くと手紙の内容にびっくりした。
すぐにシッカー伯爵を呼びつけ他にも同じ冒険者の事で厳重に注意をして、魔道具で契約を書かせて黒き旅団に関わる事を無しに出来た。
契約書を見る限り、マリーにも害は及ばない様に親族を狙っても契約違反になったり、シッカー伯爵が不利になる条件ばかりだ。
それにシッカー伯爵も第2王子と自分の領主から睨まれたら動けないだろうと予想すると手紙に書かれていた。
カインやローズに知らせると喜んでいた。
コレで一つの問題を解決した。
帰ったらマリーにも知らせると喜んでいた。
マリーとお別れは嫌だから問題は解決したが居て欲しいと伝えたらしばらくまだ居てくれる事になった。
まったりしていると裏のドアがなる。
出迎えに行くとメリルの雰囲気が違う。
「どうしましたか?」
メリルは普段無表情に近いが今は焦りの表情が読み取れる。
「はい、問題が発生しました」
お読み頂きありがとうございます!




