28話
少し暗いお話になるかもです(´・ω・`)
ノックの音がする。
部屋を開けるとギーベ・プーリアがまた来てくれた。
「先程ですな。クレア様」
私との交渉で上手く言ったので凄くスッキリしたんだろう。
「そうですわ。中立派のギーベ・プーリア。それでお願いがあるのです。良いですか?」
プーリアはふむと言う。
「えぇ、お願いよ。ただ、貴方は今は貴族でしょ?取引も兼ねたお願いです」
プーリアが目を光らすのが分かる。
「ほほぅ、公爵家の令嬢が何のお願いでしょうか?興味がありますな」
ここで内容を喋るのはまだだ。私は微笑む。
「まずは取引の内容からにしましょう」
プーリアと微笑み合う。
しかし、プーリアはフゥっとため息をつく。
「そうですな。クレア様のやり取りを見てましたので悪いようにはしないでしょう」
「取引の内容は来年度の徴税予算を20%カットに平民の安全の確保辺りでどうでしょう?」
プーリアは考える。
「中々魅力的な内容ですがクレア様が示す条件は無理でしょう」
「そうね、私はまだ実権も持ってませんし、平民の安全確保なんて意味が分からないですよね?ですが、実権も握れたらどうします?ここは公爵家が管理する領地です。私が考える事は実行できますわ。自治権は貴族しか今の所効果がないです。王都も同じでしょう?なら事実上独立国であるこの領地がやり、実用性を認めたら?」
プーリアは目を見開く。
「……クレア様は現当主をどうなさる気ですか?」
「それは後で話すわ。使用人の現状を見たでしょう?この話を聞いたら貴方も王族相続に関係してしまいますが宜しいですか?」
プーリアは息を呑む。
「お父様も私も被害者です。そして、私達が居なくなったらギーベ・プーリア、貴方達も私と同じ運命を辿るかも知れませんね」
プーリアは目を瞑り答える。
「クレア様のお願いに参加させて頂いても宜しいですか」
待機していたメリルを呼び、証拠の物や情報を全てプーリアに話す。
「……にわかに信じられません。しかし、コレが事実なのでしょう。第2王子派は純血しか要らないと掲げております。まず私もクレア様の言う通り同じ運命を辿るのが目に見えます」
プーリアは頭を悩ます。
「お父様はもう無理でしょう。領地の事は諦めている可能性もあります。ですが、第2王子が即位が取れなければ?」
ハッとするプーリアに対して私は微笑む。
「そういう事です。お父様も助けられる。そしたら私が考えている平民の安全に繋がるのです」
「なるほど、でしたら私が力になりましょう。コレでもこの地を任される位の手腕はあります。気になったのですがお嬢様の言う平民の安全とは何でしょう?」
それに対して私は微笑む。
「今は内緒ですわ。皆様をびっくりさせます」
「そうですか。なら私は貴族への噂と平民への情報操作などは任せてください。冒険者時代の伝手がありますので」
私はその前にと話す。
「あの使用人達がやらかした後始末を助けてくれませんか?」
私はにっこりと笑い、プーリアの前に沢山の書類を置く。
プーリアは引きずった顔ではいと快く了承してくれた。
日が傾きかけた頃人数も居たので一息つく。
あれからメリルも巻き込んで書類をあらかた終えた。
「この書類はお父様が帰ってきたら伝えておいてね。」
メリルに後はお願いする。
「ではギーベ・プーリアありがとうございます。助かりました」
「ですが、貴族の噂にあの様な情報も混ぜて宜しいのですか?」
「混ぜたくなければギーベ・プーリアはお話したら自分の都合だけ引き抜き湾曲しそうな方へ話したら良いだけですわ。そしたら理想通りの噂になりますわ」
「わかりました。やってみます」
2人で一息つく。
「しかし、騎士が見張り役だとは思いもしなかったです。貴族を監視しているなら納得行く事内容もあります」
「どの様な内容ですの?」
「貴族と騎士は折り合いが基本は悪いのです。貴族は利益、騎士は忠義だからです。しかし、ここ数年レイナス領では騎士が増え、騎士を雇うのにも経費がかかります。しかし。騎士と貴族で揉め事は余り聞かないので第2王子に忠義を尽くしたモノだと考えた方が宜しいかと思われます」
……騎士も色々調べておいた方が良いのかな?
「ありがとうございます。少し調べてみましょう。では、本日はもう結構よ。先程も伝えましたが協力感謝致します」
「いえ、これは自分の利益を守る貴族としてやったのでこちらが感謝しこそお礼は結構ですぞ」
ニカっと笑うプーリアに好感度が持てる。
プーリアは自分の泊まっている貴族街へと帰っていく。
私も今日は離れへもう戻る事にした。
離れへ戻るとマリーは私の雰囲気の違いをすぐに察した。
「クレア様?体調が優れないのですか?お顔の調子が悪いようです」
私は笑顔を作る。
「体調は大丈夫ですよ。それより御飯一緒に作りましょう!今日は何を作りましょうかね」
私は無理矢理テンションを上げ心配させない様に雰囲気を作り台所へ向かうがマリーに後ろから抱きつかれた。
「クレア様、やはり何時ものクレア様ではありません。私ではクレアのお役に立てませんか?」
今日は1日が長かった。
知りたくない事実を知ってしまった。
感情の整理が追いつく訳がない。
「クレア様、人に言うと気持ちが楽になります。何時も私を助けて戴けるクレア様を私は支えになりませんか?少しでも心も支えたいのです。私はクレア様のモノですのでクレア様以外には何も言いません。ただ、聞くだけです」
優しく聞こえるマリーの声に抑えていた感情が押し寄せてくる。
私は振り返りマリーに抱きつく。もう止められない。
「なんで、なんでお母様が死ななくちゃいけなかったのよ!殺される事なんてしてない!殺される様な人じゃない!私だけ知らないままぬくぬく育ってやりたい放題で私は私は!」
思いっきり声をあげて泣きじゃくる。
弟は知っていた。
お父様は分からないがお母様の死が殺されていたのは分かっていたと思う。
知らないのは私だけだ。
そして、2人に守られていた。
ハルトが良く近づいて来るのは姉の私に使用人が何もしない様にだ。
お父様も私の婚約以降は何も言わないまま、留守にしていた。私の我儘を聞いてくれた。
私はただ、いじけていたけど私を守る為にやっていたのでは?
呆れられ離れに閉じ込められていた。
でも本当は離れで守られていた。
私は勝手ばかりだ。
見方ひとつ変わっただけで何もかもが崩れていく。
物事を上手く見ていなかった。悪い事は悪いと子供じみた極論で決めつけていた。
お父様はこれから原作の様に悪い事をするだろう。
なら私はお父様を止めなくてはならない。
もう、自分が死ぬからとかではなく平民も家族も助けたい。
「私は、許さない……ただ、権力の為に私の家族を奪った事、壊した事も全て許さない!絶対に許さない。悔しい、無力な自分が悔しい!負けてなるものですか!」
私は声に出しながら涙を流す。悔しさ、悲しさが押し寄せてくる。
「絶対に許さない、許さない!私は必ずお母様の無念を」
これは前世の彼が同情して悲しんで流れた涙かもしれない。
クレアが大好きだったお母様を奪われたと悔しくて流れた涙かもしれない。
ただ、私は声をあげマリーに自分の無力さ、お母様への後悔を最後は言葉にならなくなるくらいまで泣き続けた。
次はシッカー伯爵ですね!
お読み頂きありがとうございます!




