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美人悪役令嬢は生きる為に悪役をあえて貫く  作者: イブ
1章 一人ぼっちから始まる悪役令嬢
18/80

18話

ユンファさん視点からの始まりです!

〜ユンファ〜


あの時、私が執務室で本日の案件を見ていた時だった。



「ユンファさん!ユンファさん!た、助けて下さい!お、おき、お貴族様です!」



受付の慌てように私はまた貴族が?と頭を悩ませ、すぐさま対応に当たる為に表へ向かった。



「今回は何が原因で向こう様の勘に触ったのだ?」



私の言葉に受付はたじろぐ。



「いえ、決してその様な事は無いです!まだ、こちらにいらしただけでこちらからは接触してません」



なら何故こんなにも慌てているのだ?

だが、表へ出た瞬間肌で分かった。


ピリッとした雰囲気で受付も冒険者も緊張感が漂っている。

なんなのだ?そう思ったのは束の間、入り口で見定める様に1人の女性がギルドを眺めていた。

貴族でもただの女性ならこの様な雰囲気にはならないだろう。そして、すぐに悟った。この方は上級貴族であると、我々がいつも相手にしている男爵や子爵よりも爵位の高い方だと。


初めて女性を見た時の印象は作りモノだ。

腰までに無造作なのに纏まって流れる輝く様な金色の髪は遠目からでも目に付く、服から見えている肌の白さは金色の髪と調和がとれていて美しさを増す。白い肌は太陽の日差しを知らないのだろうかと思う位透き通っており病人の様な白さではない。すらっと手足も長く均等にバランスのとれた身体付きは男性を虜にするだろう。だが、顔に幼さを感じ、色気ではなく可愛らしさが滲み出ている。あまり、お目にかかれない上級貴族とはこれまでに人間離れしているのかと思い知らされた。

人間何かしらの欠点ではないにしろ、顔のパーツに不恰好な部分があるのにない。いや、あるのだろうがそれさえ、きっと美点として見えているのだろう。

誰もが高級なカーディガンを羽織ったワンピースの女性にたじろいだに違いない。

私でさえ、気後れしそうなのだから。

この様な品の無い場所に場違いだ。

何時もなら、女と見たら絡みに行く馬鹿どもも緊張してしまい、縮こまっている。


私は緊張するのを抑え、女性に話す。私を見て、その勝ち気な目は全てを見透かされた様な感覚に囚われそうになる。私が話し終えると一気にふんわりとした雰囲気を纏い、ピシリと女性は不満を洩らす。

私は必死に言い訳を考え答えると女性は私の事を知っているのかと聞いてきた。

私は知らないが雰囲気から察して爵位の高い方だと誰でも気づく。何も言わないと女性もにっこりとして話を続けた。

最後に女性の名前を聞いて私は心臓が飛び出るかと思った。

あのレイナス家の令嬢だったのだ。

私も貴族と関わりはあるが貴族同士の情報は平民に当たる者には伝わらない。

名前は覚えて居た方が我々からしたら失礼に当たらないのではと思うがそもそも貴族は平民を人として見て無い者が多数なので名前を呼ばれるのだけでも怒る者もいるのだから貴族との付き合いは難しい。なので子爵や男爵それに法服貴族の貴族は大丈夫なのだが特に純血派の貴族は気をつけないといけない。

それに貴族の情報なのだから平民が知っていたら貴族の真似事をしたと判断され、処罰されても文句は言えない。

私が幼少期に同じ様に王都で貴族の貴重な情報を知っていて罰せられた平民を何度も見たのだから平民に堕ちてからは私もその立場になりたくない。

だから、貴族の情報は貴族と繋がりあっても必要以上に耳にしないし聞かない。だがレイナス家の令嬢の事は聞いている。例え、現当主が情報を規制していてもこのお方は有名だ。我儘で自分の上手くいかない事は嫌いであるなど様々な話を聞いた。なので機嫌を損ねたり怒らせてはならない。だが、杞憂だった。

やはり噂は噂で貴族同士の噂は意図的に流れている事もあるので直に関わらないと分からないなと思う。



そして、本日またクレア様は来られた。

現当主はまだこの地を離れていたはず。

また忍びの様だが現当主に隠れて領地の事をやろうとする姿はきっと帰ってきた現当主を喜ばせようとでもしているのかも知れない。

貴族も人の子と言う事。

そして、何よりクレア様はギルドマスターに良い印象を持ってない様だ。

これはナタール皇国の英雄と言われているラクシエル殿がギルドマスターの地位が堕ちる可能性が出てきた。ナタール皇国では強い権力を持っている様だがこの国では意味をなさいのだから。

ラクシエルに用件を伝えると凄く嫌そうな顔をする。

私もその立場だと同じ顔をしただろう。

ギルドに関わりをもつ貴族でも爵位の高いのは伯爵までだ。それも法服貴族が多いが純血派の封地貴族の最高峰の令嬢が来たとなれば胃が痛い。

一言二言小言を言われたが気になりもしない。

私はラクシエル殿をクレア様へ連れて行き、怒りの巻き添えにならない様にすぐに出て行く。


しばらくすると大きな音が聞こえる。何事かと思い、あの部屋へ向かう。近づくと怒鳴り声が聞こえるではないか。

開けると息を呑む。

クレア様の周りには呪文が複数浮かんでおり、何時攻撃してもおかしくない。



「何事ですか!?」



「何事ではございませんわ。此奴は私の領地が荒れているのは貴族達の仕事の傲慢だと恥ずかしげにもなく言ったのです!ユンファ、一つ聞きたいのですがギルドマスターとは貴族と対等に話す事が出来るだけでいつから貴族と同等と認識しているのかしら?」



……これはラクシエル殿も詰んだかも知れない。

公爵家相手に対等には話せても同等とは言えない。

平民への損は王族への不利益になると王族から平民を守る役割を貰っているだけでマスター自体に何も守るモノはない。

公爵家より王へ報告がいけばもうおしまいだろう。



「いいえ、その様な事実はありません。ましてや、領地の為に出向いたクレア様への言葉を受け止めるのが筋かと思われます」



「ですわよね?貴方、覚悟できてますよね?少し躾が必要かしら。ユンファ、これから訓練所を空けなさい。死にたくなかったら」



私は急いで訓練所にいる冒険者を避難ではなく、貴族が使うからと人払いをしてクレア様を連れて行く。

クレア様は危ないので離れておくように言われ、私は訓練所の外で待っておく。

外からでは何が起こっているか分からないのだがラクシエル殿は死にはしないだろうがどうなるのか分からない。

冒険者や受付も私の剣幕が気になったのか近づいてくる。

声をかけようとした瞬間、物凄く大きな火の柱が燃え上がる。

私はその姿を見て惚けてしまった。荒れ狂う様に炎は燃え上がり荒れに荒れる。

中で何が起こっているか分からないが躾と言っていたがこれは死んだかも知れない。


その後、更に大きな炎が2つ現れたら炎が止んだ。

周りもきっと同じ顔をしているだろう。恐ろしさより唖然が勝ってしまい驚くタイミングを失った。


しばらくして、クレア様と疲れた様な顔をしたラクシエル殿と護衛が出てきた。

周りは急いで逃げ出す。私は逃げ出したい気持ちを抑え笑えないが無理矢理笑顔を作る。

私は怖くて何があったか聞けなかった。


その後、余りの怖さに頭が回らなかったがクレア様が来週にワライクバに行くと聞き、行かせてはならない伝えた。

何故かって?それはーーー



〜ユンファ〜


〜クレア〜



「ね?上手く言ったでしょう」



「あぁ、だが私は悪者だがな」



ラクシエルは苦笑しながら私に言う。



「でもその方がボロが出やすいのよ」



ユンファの慌てぶりを思い出すと笑いが出てくる。



「ではローズ、私のリュックを持っていてくださいな」



「それで私もその呪文を従えさせる儀式を見届けても良いのか?」



「良いわよ。儀式って程のモノじゃないわ。それより危険なので皆様を防御魔法で守っていてくださいな」



ローズにリュックを預け、訓練所の中心に行く。

周りを見渡すと広い。

この大きさは前世で言う所、陸上競技場くらいはあるかな?

闘技場をイメージする様な造りの訓練所ならこの魔導書も耐える事が出来るだろう。



私は一呼吸おく。そして、イメージする。魔導書が空中へ浮かび、パラパラとページが捲れる。

この魔導書の中で最も強い呪文に呼びかける。


『貴方は私が扱うに相応しい呪文かと』


パラパラと捲れていたのがバサリと止まる。

呪文が浮かび上がり、ピリピリと殺気立つ。

さすが炎の魔導書、生きが良くて頼もしい。


綴る。

私はただひたすら字を単語を文章に文章を呪文へ変える。

脳が焼ける様に痛い。だが、ユグシドルとの契約のおかげか耐えれる。

そして、私は呪文を受け入れる。呪文は自分以外の炎の呪文が少ないのに怒りをぶつけてくる。

燃え上がる様に周りが炎上する。



「あがっ!ぐぐぐっぅあ、あ、あ、ぎ、ぎぐ、ひぎっ!」



体が蹌踉めくが耐える。

ユグシドルとの契約の時は更に辛かった。

お前はその程度かと心で敵対する。



「あぐっ、はぁ、はぁ、ひぃ、あああぁあぁっ!うぅ、はぁ、ぎゃあぁああぁ!」



炎は強まり私を焼き殺す様に

身体に炎が纏まりつく。



「ひぃ、ひぃ、はぁ、ぐっ?ぎぇぁうあぁぁあ」



身体の皮膚が剥がれ捲れる爛れる。そして、足が逆に曲がる。私は立てなくなり膝をつく。

背中が熱い!

熱い!熱い!熱い!

自分の肩を思いっきり掴み痛みに耐える。

その瞬間、背中から炎が燃え上がる。

しかし、その炎は熱くなく寧ろ暖かい。



『我、炎の理を制する者なり、今を持ってイフリートとの契約を結ぶ』


炎が収まると私はそのまま倒れる。皆が近づいて来るのが分かるが近くまで来て固まる。全身が酷い姿で肉の焼けた匂い、血の匂いなどが漂っている。

私が生きているか分からないのだろう。



「ーークレア様!クレア様!」



ローズの声や皆の声が遠く聞こえる。

少しだけ気を失ってしまっても良いよね?


お、終わらなかった……だと!?

予定ではすでにギルドから出て行っていたはずなんですけどね(´・ω・`)

ユンファさんちょっと主張し過ぎじゃありませんか?


お読み頂きありがとうございます!

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