変わらない日常
なんとかギリギリで学校の門をくぐり、チャイムが鳴る前に教室へと急ぐ。
はぁ…。今日はなんだか嫌な予感がする。
そんなことを考え1人でため息をついたそのとき、目の端に見知った人物が写る。
「あ…。」
シエだ。こちらに気づいたのか、シエもはっとした表情になり、こちらに一歩近づいた。
いつもは難しい顔で通り過ぎてしまうので、こんな機会は滅多にないと思い、私は嬉しくなった。
「シエ!おは「ヒートーハー!!おっはよーー!!」
おはようと言いかけた私の声を背後の誰かが遮った。
声の主はすぐ分かる。3年生になってから仲良くなったエリサの声だ。
振り返るとエリサが陽気に手を振って近づいて来た。
「ヒトハがこんな時間に来るなんて珍しいじゃん!」
「え?あ、うん。ちょっと朝ボーッとしてたら時間が…」
「マジ?相変わらずだね(笑)でさー…」
エリサと他愛も無い会話をしながらチラリとシエのいた方に目を向ける。
そこにはシエの姿はもうなかった。
「ヒトハってさー、滝沢さんと仲良いのー?」
不意にエリサが問いかける。
「滝沢?あっ、シエのこと?うん。仲良いと思うんだけど…最近はあんまり喋ってないかなぁ…」
「へぇ、何で?」
「シエがいろいろ忙しいみたい。あたしも頑張らなきゃなぁ…。」
「ふーん、そっか。」
エリサがクスッと笑ったような気がして、顔を覗くけれど特に何もなかった。
もし私が、ここでエリサではなく、シエと話を続けていたら、これから先の未来は一体どんな風に変わったのだろうか。
それだけは、誰にも分からなかった。