いつもの朝
「行ってきまーす…。」
誰の返事も帰ってこないいつもの挨拶。ため息を漏らしながらもいつもの通学路を辿る。
両親が共働きで朝も夜もいないことはしょっちゅうだった。だから1人での生活にはもう慣れてしまった。
だけど、今の私にはそんなことよりももっと憂鬱なことがあった。
しばらく歩いたところにある小さな公園。この公園の入口で親友のシエと待ち合わせするのが私、加賀見ヒトハの朝の楽しみの一つであった。しかし、シエの姿は今日もどこにも見当たらない。
「今日もいない…か。」
シエは学年が上がってからというもの、毎日勉強勉強の生活で大変らしい。なんでも国公立大学を目指すんだとか。
それ以来、シエは待ち合わせ場所には現れず、いつも早めに学校に行って自習をしていた。もちろん、私もそのことを知っている。
しかし、人間の感情とは不便なもので、2ヶ月経った今でも心の何処かで、今日は待ってくれているのではないかと期待してしまう。
その期待が裏切られたときの少しのガッカリ感が、最近の私の1番の憂鬱なときなのである。
「まぁ、しょうがないよね。どうせ学校で会えるんだし。ってあぁ!今日はギリギリだから早めに学校行かなきゃ間に合わないんだった!」
時計をみて憂鬱が増した私は若干心が折れそうになりながらも通学路を走っていった。