最後の日
去年の夏休みに己の近い未来を創造しながら書いた小説です。
えぇ、認めましょう。黒歴史です。
コイツは何を書いているんだ!? と思うかもしれませんが、それでも良い、読んでやろうじゃないか!! という方は温かい気持ちで読んでやって下さい。
「英語長文、撃破ッ!」俺は勇者気取りのドヤ顔でそう言った。
九月三日、現在午前二時、俺は宿題と命懸けの闘いを繰り広げていた。
今年は二日長いから大丈夫! という甘い妄想に浸っていたが故にこの抗争が勃発したのだ。
登校までのあと六時間で宿題という積年の好敵手を伏する為の闘いだ。奴らを遣りこなす術は知っている。俺だって伊達にこの道を九年間歩んできたわけではない。
しかし、相手も手を拱いて見ているわけではないのも事実だ。
俺がうかつに高偏差の高校に進学したばかりに敵のレベルは去年とは段違いだ。俺が気を抜くとケアレスミスという鋭い刃をもって襲いかかってくる。敵軍の総量も生半可なものではない。只今交戦を終えた英語の他に、現代の日本の外交情勢についての考察をまとめた意見文や、某有名大学が主催する小論文大会の原稿の浄書を既に葬りさってきた(ちなみに昨日から一睡もしていない。そして、眠い)。
そして今、俺は魔王城(数学の問題集)の門前に立っている。門は見る者を突き放すような禍々しい黒と赤のコントラスト。その上で漆黒を讃えた両翼と嘴を持ったカラスがこちらを監視しているかのように、濁った水晶体でこちらを見つめている。門を開けるとカラスが飛び立ち、鳴き声を上げ、同時に遠くで鐘のくぐもった音色が響いた。
俺が右足を踏み出した刹那、枯木の陰から群れを成した√が姿を現した。奴らは大量に湧き出してくる雑魚だが、今の俺の手負いの状態ではちょっとした油断が命取りになる。俺は背中に手を伸ばし、携えていた大太刀を手に取った。本体及び鞘は白銀と緋色のツートンカラー、剣尖には歴戦の証である猛者たちのどす黒い血がこびりついており、それでも猶、貪欲に鮮血を求め光り続けている。
全身の筋肉を収縮させ、俺は風を切って駆け出した。奴らは俺の急な挙動に不意を突かれ戸惑っている。一息に√達との間合いを詰め、勢いを乗せた袈裟斬りを放った。肉が裂け、魂が肉体の呪縛から解放される感覚が伝わってくる。
その後も俺は太刀を振るい続けた。気付くと辺りには力無き骸が散在していた。俺は精神が昂揚しているのを感じた。もう、眠気なんて感じない。
その後もグラフィリオス――二次関数のことだ。奴は手強かった。頂点が千鳥足で右往左往するのでこちらの攻撃が命中しないのだ。なにはともあれ、俺は数多の敵を排し、王の間に辿りついた。
王の間はこれまでの部屋とは比べようもないほど豪奢で巨大だった。そこは、目を閉じればクラシックの名曲の数々が高らかに響いてきそうな趣だ。しかし、この世の全てが微睡の中に消えてしまったかのように静寂が包みこんでいる。それを俺の足音だけが破る。俺は全神経を集中させ、ラスボスの出現に備えた。
だが、王座に行きあたっても敵は現れない。それに少し安心した俺は目線を上げ、壁に掛っている絵画を眺めようとした。しかしその瞬間、俺を鈍く、そして激しい衝撃が突き抜けた。数秒虚空を舞った後、俺は大理石の床に叩きつけられた。肺から圧縮された酸素の塊が吐き出され、息ができない。痛みを堪え、起き上がり振り向く。すると、そこには論理的且つ機械的に並べられた黒と白が織り成す精神的攻撃兵器(即ち証明問題のことだが)が仁王立ちをしていた。右腕には木製と思しき棍棒を持っている。
対する俺は先ほどの一撃を食らったことにより、俺自身へのダメージも然る事ながら、相棒が瀕死の重傷を負ってしまった。鞘は圧倒的破壊力の前に完全に二分され、刀身も罅によって蝕まれている。相棒は初冬に降る雪のような儚く短い命を燃やし続けていた。
俺は証明の攻撃を波縫いのように掻い潜りながら、残りの僅かな手数で証明を打ち倒す為に思案を巡らせた。ただ乱暴に振り回すだけでは駄目だ。弱点を正確な順序で潰していかなくてはならない。
俺は覚悟を決め、証明へ急接近する。相棒を下段に構えて床を蹴る。そして俺は針の孔を通すような精度で右肩を切り落とした。証明が悲痛な叫びを上げるとともに、相棒も声無き嘆きの歌を口ずさむ。俺は更に相棒を引き、証明の心臓部分を突き刺す。証明からは血の代わりにインクで記された文字が零れ落ちる。同時に相棒も刃が毀れ、みしみしと音をたて始めた。次が最後の一撃だと悟り、俺は大上段に相棒を振り上げた。そして一息に振り下ろす。証明も左腕で防ごうとする。俺も腕がはち切れんとばかりに力を込めた。切っ先は徐徐に下降し始め、ついには証明の身体が断たれ、糸が切れた操り人形のように動かなくなった。相棒も全てを看取ってから砕け散った。
そして俺も意識を失った――
雀の鳴き声が聞こえる。カーテンの隙間から朝日が差し込む。体の節々が痛む。
俺はどうやら机で寝てしまったようだ。
「昨夜は死闘続きだったな。我ながらよくやった――ん?」
そういえば昨夜は厨二病をものすごくこじらせていた気がするのだが……
俺は恐る恐る魔王城――じゃなくて問題集の表紙を開いた。
そこには√の亡骸は無く、健在な彼らの姿があった。
九月三日、午前七時半、少年は絶望していた。
ちなみに問題集の上にシャーペンの残骸が転がっていたことは言うまでもない。
これが初めて自らの意思で書いた小説だと思うとなんかいたたまれない気持ちになります……
まぁ、自分の辿ってきた道を確かめるという意味合いで、過去作品とも向き合わないといけませんよね!
様々なジャンルの文章を書けるようになりたい!
全然まとまる気がしないのでこの辺りで失礼します
次もそのうち書きますねー




