落語者☆彡太郎
『スプーン』をお題に、謎かけをつくり、それを使った小説を作るというリクエストがあり、書いてみました。1時間かかりました。
学期末、太郎くんの一番嫌いなイヴェントは、先生からの通知表の贈呈でした。先学期は、その内容があまりに太郎君の意に反していたので、コンビニのゴミ箱にポイ捨てしました。
それが、発覚して、母さんが学校に呼び出されてしまいました。太郎くんは、次の学期には、頑張って良い成績を収めて、お母さんをよろこばせてみせると、約束させられてしまいました。
あれから、一月、二月、三月、四月があっという間に、過ぎ去り、ふたたび通知表の贈呈式の日がやってきました。太郎くんは、先生にもらった通知表を開いてみました。
「こりゃ何だ。この前の学期より、各段に悪い通知表じゃないか!」
太郎くんは、困ってしまいました。
「俺も男だ! こうなったら、しっかりと現実を見つめた生き方をしよう!」
太郎くんは、家へかえると、お母さんが、家計簿を見つめていました。お母さんのその暗い顔を見ると、最悪な通知表を見せるという決心がつい揺らぎました。
--まず、母さんにコーヒーでも淹れてあげ、通知表を見るに耐えるだけの元気を回復してもらおう。
お母さんは、太郎くんが珍しくコーヒーなどを淹れてくれたので、いくらか、機嫌が良くなりました。そこで、チャンスをのがさず、お母さんに、通知表を渡しました。
「太郎! あんた、朝から晩まで、落語聞いているから、ほんとうのバカになったのよ!」
「お母さんは、落語のことを悪く言うけど、それは、誤解というものですよ!」
お母さんは、太郎くんのことを、コーヒー皿にあったスプーンでさしました。
「そんなに、落語が役に立つものなら、この不出来な通知表を落語で、言い訳してもらおうか!」
お母さんは、こわいかおで、太郎くんののことをにらみました。お母さんは、スプーンで太郎くんののことを指したままの姿勢でした。
太郎くんは、お母さんからスプーンを取り上げると、言いました。
「整いました! スプーンと掛けまして、通知表の出来、不出来と解きます」
そこまで、太郎くんがいうと、お母さんは、待ったをかけました。
「太郎! その心は、『先生のさじ加減、私には関わりありません』とか、ふざけたオチはあり得ないわよね!」
先を、お母さんに読まれてしまった太郎くんは、自分の部屋に逃げ出しました。
「お後が、よろしいようで……」
しかし、お母さんは、太郎くんを逃がしてはくれませんでした。お母さんは、言いました。
「山田くん! 太郎の座布団、布団ぜんぶ持ってっちゃいなさい!」