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魔法学園にようこそ!  作者: Aerial
Chapter.Ⅱ魔法中級・ミルト遺跡編
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ep.12 遺跡に潜入-Proprietà-

 このような砂漠に来ることになるまでの経緯を一通り確認した俺は、オアシスでの休憩を終え、目的地、ミルト砂漠へ向かった。

 そこでは、とんでもないものが俺たちを待ち構えていたのだった。



     ☆     ☆     ☆


「つ…、着いた。やっと……、やっと着いた~~!」


 オアシスから出発してまたもや小2時間掛かり、俺たちはやっとの思いでミルト遺跡に到着した。古い石でできた門をくぐると、そこはまさしく遺跡だった。両脇には何かの石像のようなものがあり、それに沿って、ずっと前方に道が続いている。足場が砂地から石床になったので、歩くのは随分と楽になった。


「ここがミルト遺跡か……」


 随分とでかいんだな…。これだけでかい遺跡なら、何か遺産があってもおかしくはないというものだ。ほう……と感嘆の声を漏らす俺たち。───だが、


「な、なぁ…。もう着いたんだしさ、休憩しようぜ?な?」


 今回も情けない声をあげるディール。やはり暑いところは苦手なのだろうか。


「ダメよ」


 ぴしゃりと言ってリリアは歩き出した。その後ろでは、ディールが「そんな~」とうなだれた。この道中リリアはというと、オアシスで拾った大きな葉っぱを傘代わりにして、頭部への直射日光を防いでいた。そのおかげで、今はこうしてピンピンしている。もっとも、今は遺跡を目の前にして、俄然やる気が沸いたのか、今では人が変わったようだった。……目は少女の瞳そのものだけど。


「お宝、お宝……♪」


 体表から邪なオーラが滲み出ているのが離れていても分かる……。───コイツ、本当は遺跡よりお宝目当てなんじゃないのか?


「…しょうがない、行こうぜ」


 俺は肩をすくめ、分かりやすく溜息を吐いた後、ディールを引きずるようにして歩き出した。アリスも少し距離を空けて俺の後に続く。そうして、石像の横を通り過ぎる……。


「───ん?」


 ふと、その石像が気になった。俺はそれを見上げる。太陽の影になっているそれは、なんの変哲もないただの女神像だ。


 ……動いたりしない、よな?


 そんなワケの分からない不安をもって、俺たちは前方のリリアに追いついた。



     *     *



 そうしてリリアと合流した俺たちは、遺跡の内部への入り口を手分けして探すこととなった。これは、合流してから、内部への入り口を探索し始めた頃、


『お宝ってのはねぇ、最も深い場所に眠ってるモンなの!そんな簡単に見つけられるものじゃないわ!』


 というリリアからのお達しを受け、正面にそびえ立つ扉のようなものを探すより、地下への入り口のようなものを見つけることとなった。……なんか、依頼の趣旨から逸れていってる気がするが、どうなんだろうか。といっても、見えるのは砂と石だけ。こんななかでどうやって入り口とやらを見つけられるんだ……?

 時間が経つにつれて、太陽が体力を奪っていく。


「これは、キツイな……」


 俺は額の汗を拭い、それなりに懸命に、辺りを見回し続けた。

 数十分かそうしていると、


「あったぞーーー!!」


 遠くから、大きなディールの声が聞こえた。俺たちはそっちに集まると、ディールは足元の石階段を満足そうに眺めていた。ホントにあったんだな、こういうの……。


「ホントにあったなんて、ビックリだわ……。でも、こういうのはアタシが見つけたかったな……」


 リリアは本心から残念そうに呟いた。しかし…、


「よく見つけたな、お手柄じゃないか」


 こんな紛れた、分かりにくいものを見つけるのには、もっと時間を要するかと思ってたから、この展開は意外だった。するとディールは自慢げに言った。


「ここら辺を歩いてたらさ、なんか風の流れが乱れてることに気づいたんだ。んで、実際に来てみたら、ここから風が吹いていたってワケだ」


 最初は石で塞がってたんだけどな、とディールは付け足す。階段の前で手をかざすと、僅かだが、確かに冷たい風が吹いていた。こっから内部へいけるってわけだな……。


 ……風、か───。


「やっぱり、ディールは風属性ウインドタイプなんだな」


 俺は思わずそう口にしていた。ディールは目を丸くして、「は?」と一言。


「お前、なに分かりきってること言ってるんだ?最初にお前と確認しあっただろうが」

「あ、いや…。そうじゃなくて」


 俺はあわてて訂正した。


「お前らはさ、それぞれでなにかしら特性みたいなモンがあるんだなってさ」


 そう、これは、今回のことで分かったことだった。


 火属性フレアタイプのアリスは暑さに耐えられるが、水は苦手。

 水属性アクアタイプのリリアは火の近くに居続けると蒸発しそうなまでの水分が体を形成している。

 風属性ウインドタイプのディールは、今みたいに風の動きを感じ取ることができる。


 では───、俺は?


「俺は、みんなと違って、そういうものはないみたいなんだよな……」


 少し残念ではある。俺の場合、今のこの状況は普通に暑いし、人並みの水分は持ってるし、風を感じることもない。まるで普通すぎるのだ。


全属性オールタイプ、か……。わかんねぇな」


 ディールは考えるようにポリポリと頬を掻く。リリアも「う~~む……」と頭を抱えている。その中で、


「…………」


 アリスは考える素振りも見せず、俺のほうをじっと見ているだけだった。


「ま、今そんなこと考えても仕方ないから、先を急ごうぜ」


 俺はさて、と仕切りなおし、みんなを階段の奥へ促す。ホント、謎が謎を呼ぶな……。


「───ま、深く考えることじゃないか」


 いつまでもそうしていても始まらないので、この件は一旦保留とした。

 俺は全員が階段を下り始めたところで、最後尾としてそこを降りていった。

タイトルのProprietàは、『特性』という意味のイタリア語です。

短くてすいません。代わりに、次話は長めになります。



今気づいたんですが、ミルトって、和訳すると『白子』という意味らしいです。気持ち悪いですね。

だからって、魚臭い遺跡にする気はありませんし、一応オリジナルということで、改名はしません。ご了承ください。

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