大作戦
コンビニエンスストア。便利で快適な空間を与えてくれるお店。最近ではほとんどが24時間営業のため、夜勤の仕事を持つ大人をはじめ、老若男女から絶大な支持を受けている。
中学3年ともなれば、塾帰り、休日、放課後によく利用する。小さいころよりも利用時間は大幅に増加するだろう。漫画、おにぎり、パン、弁当、麺類、ジュース、デザート、カード、アイス、お菓子。大体の利用客はそれらを目的に利用する。しかし! 中学3年、受験期突入済みの土岡騨(つちおかだん)は目的を間違えている。
「……可憐だ……」
コンビニの雑誌コーナーの前はガラス窓。そこには、反射して見えるレジが映る。レジはドア側が1番、奥が2番となっていた。騨の位置から確認できるレジは2番。そこには、まだ19、20歳くらいの女性が映っていた。
「騨、そろそろ行くぞ」
今読み終わった雑誌を元に戻し、店を出ようとする友人の保志直也(ほしなおや)を横目に、騨は言葉を発した。
「馬鹿、呼んだ本は買いましょう……!」
「あっ、おい!」
直也の呼んでいた雑誌を手に取り、レジに並ぶ。1番の方が空いているが、騨はあえて2番を選らぶ。
(土岡騨、15歳! 絶賛恋愛中です!)
そう、騨は2番レジ担当の女性に恋をしているのだ。
やっと前の客が終わり、騨の順番になった。直也はなぜか知らないふりをしていた。
「あの、お客様……」
女性が言いづらそうに話し掛ける。
「あっ、はい!? 何でしょうか?」
まさかの出来事に、騨の驚きは隠せない。心臓が飛び出るかというくらいに、心拍数が上がるのが分かる。
(まさか、メアドを……)
どんどん妄想が形を成していく。
「これは、18歳未満のお客様はお買い上げできないのですが……」
「あっ、はい。そうですね……」
騨は暫くの間、状況を理解できないでいた。その姿を直也はみて笑いを堪える。
「って、すみませんっ!!」
騨は大きく頭を下げて、店を出た。
騨がその女性を好きになったのは2学期の終わりらへんの出来事だった。
「いらっしゃいませぇ」
店内には、騨を含んで3人しかいなかった。その時、女性は1番レジを担当していた、。もう1人の客は、おにぎりのコーナーで目を凝らしていた。
「おっ、あった♪」
今日発売の漫画雑誌を手に取り、レジに向う。
「240円です」
小さく、綺麗で透き通った声。一瞬で恋に落ちた。
今までの騨の趣味は黒髪のお姉様の長身だったが、その女性をみた瞬間に、恋愛観が一気に変貌した。女性は明るめの茶髪でどちらかというとキャピキャピしているような顔立ち、身長も騨より少し低いくらいだった。
「……」
財布からお金を取り出している最中、騨は名札をみた。『鈴木 真美(すずき まみ)』と書かれた名札。一般的に苗字。でも、騨にとってはそれすらも美しく見えた。
「ありがとうございます♪」
騨は雑誌を貰うと、上機嫌で外に出た。
という、典型的な一目惚れの恋愛だった。
「で? それと俺の読んでたエロ本と、どう関係が?」
コンビニから逃げて向ったのは、近くの公園。ドンッと構えて座る直也。
「うっせ」
好きな相手に自分の『うっかり』を見られてしまうのは、恥ずかしい。騨にとって、今世紀最大の苦悩と言っても大丈夫だろう。
「だったら、惚れさせろよ?」
「は?」
直也の言葉に、反応が遅れた。
「だから、真美さんをお前の彼女にすりゃぁ、いんだろ?」
「それが、一番いいけどよ。あんな可愛い人には、もう彼氏いるに決まってるだろ」
「だから、それに負ける気かよ? それでも男か?」
そして直也は1つ深呼吸をして……、
「名づけて! 『真美さんを好きにならせろ! 大作戦!』だな♪」
こうして、騨と直也の2人による、大作戦が始まった……。
連載中に連載をやるという新たな挑戦ですので、両方頑張りたいです。 こちらの方が、『卓球&好き』よりも更新遅いと思いますが、どうぞ、お気長にお待ちください。