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第一話 平穏を愛するモブ(規格外)は、暴走する公爵令嬢を煽りながら救い出す

不慮の事故で命を落とした俺は、気づけば剣と魔法の異世界に転生していた。


前世の記憶を持ったまま生まれた俺に宿っていたのは、神の加護か、それとも転生によるバグか――世界を揺るがしかねない「規格外の魔力量」。


だが、目立つのは御免だ。前世では平凡な高校生だったんだ、この世界では平穏に、かつ自由に生きたい。だから俺は魔力を極限まで圧縮して隠蔽し、「ちょっと魔力が多めの一般特待生」として、名門マギステル魔法学園に入学した。

……はずだった。


学園の敷地内、普段は誰も立ち入らない旧校舎の裏庭。静かな場所で昼寝でもしようと足を運んだ俺は、凄まじい魔力の衝突音と、冷たい金属の擦れ合う音を聞きつけてしまった。

「――往生際が悪いぞ、"呪われた血"の出来損ないが。その魔眼、ここで抉り取って売れば、かなりの大金になるんでね」


数人の上級生らしき男たちが、一人の少女を壁際に追い詰めている。


少女はボロボロになった制服のまま、鋭い眼光で男たちを睨みつけていた。その片目は、禍々しくも美しい「紫琥珀アメシスト色」に怪しく輝いている。あれが噂に聞く、触れた者の魔力を狂わせるという『呪魔の瞳』か。


少女は息を切らしながら、冷徹に言い放つ。


「……近寄るな、下衆。これ以上近づけば、お前たちの魔力を根こそぎ暴走させて肉体を破裂させる」


「ハッ、ハッタリを言うな! 抑制の魔導足枷を嵌められたお前に、もうそんな余力はないはずだ!」


男の一人がナイフを振り上げる。少女は足枷のせいで動けず、ただ静かに奥歯を噛み締めた。


(……チッ、平穏な学園生活が初日から大ピンチじゃねえか)


関わりたくはない。だが、前世の倫理観が「見捨てろ」と言うのを拒否していた。


俺はため息を一つ吐き、隠蔽していた魔力の、ほんの「10,000分の一」だけを解放する。


ドクン、と大気が震えた。


「おい、なんだこの圧迫感は……!?」


「誰だ! どこにいる!?」


男たちが怯えたように辺りを見回す。俺はのんびりと影から姿を現し、頭を掻きながら言った。


「悪い、そこ、俺の昼寝の定位置なんだけど。どいてくれない?」


「あぁ? なんだお前、新入生の一般特待生か? 引っ込んでろ!」


一人の男が怒り狂い、俺に向けて火球ファイアボールを放ってきた。


普通の魔法使いなら防御障壁を張る場面。だけど、俺はただ手を前に出し、飛んでくる火球を素手でパシッと掴んで、そのまま握りつぶした。


「……は?」


男たちの動きが完全に凍りつく。火球を物理的に握りつぶす人間など、この世界の常識には存在しない。


「威嚇のつもりか? ぬるいな。……じゃあ、次は俺の番でいいか?」


俺がさらにほんの少しだけ魔力を練り上げると、地面が自重に耐えかねるようにミシミシと音を立ててひび割れた。圧倒的な「格の違い」を本能で理解した男たちは、悲鳴を上げて一目散に逃げ去っていった。


不調法な侵入者が去り、静寂が戻る。


俺はふぅ、と息を吐いて魔力を完全に隠蔽した。これでおしまい。さあ、保健室にでも行って寝直そう。


そう思って背を向けようとした、その時。


「待ちなさい」


低く、刃物のように鋭い声が背中に突き刺さる。


振り返ると、壁に寄りかかった少女が、その紫琥珀色の魔眼で俺をじっと睨みつけていた。


「……あなた、何者? 今の魔力、ただの特待生なわけがない。私を助けたのも、どうせ別の目的があるからでしょう。私の『眼』が欲しいの? それとも、我が公爵家の弱みを握るつもり?」


助けてもらった相手に向けるとは到底思えない、敵意と警戒に満ちた最悪の眼差し。


どうやら彼女は、人間不信が極限に達している「訳ありお嬢様」のようだった。

第1話をお読みいただき、本当にありがとうございました!

平穏に生きたいはずのジンですが、初手から規格外の力を発揮して、暴走するエレノアを(煽りながら)救い出すという怒涛のスタートとなりました。助けられたショックと煽られた怒りで真っ赤になっているエレノア、楽しんでいただけましたでしょうか?

実を言いますと、本作が私にとって「小説家になろう」への初めての投稿作品になります!

ずっと読む専門だったのですが、この二人の物語をどうしても形にしたくて、緊張しながら投稿させていただきました。拙い部分もあるかと思いますが、こうして読んでいただけて本当に嬉しいです。

ここから二人の関係がどうなっていくのか、そしてジンの望む「モブライフ」はどうなってしまうのか……! ぜひこれからの展開も見守っていただけると嬉しいです。

「初投稿がんばれ!」「続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】の評価や、ブックマークで応援していただけると、執筆の大きな大きな励みになります!

それでは、次の更新でお会いしましょう!

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