第5章:不在の予約
ギターショップの奥に併設されたカフェ。仁と酒井は向かい合っていた。
「……昨日の話、やっぱり変だよな」
酒井がストローを転がしながら言った。
「店は“予約は未確定でキャンセルになった”って言った。でも実際は──女が203号室に来てた」
仁は頷いた。
「じゃあ、店が嘘ついてる?」
「いや、逆。調べたんだ。デリヘルの仕組みって、
1、客から予約が入る。
2、店がホテルに部屋が取れてるか確認。
3、OKなら女の子を向かわせる」
「……ふむ」
「ってことは、だ。ホテル側が“客がいない”って伝えたら──店は“キャンセル扱い”にするしかないんだよ」
仁の手が止まった。
「……管理人が?」
「そう。管理人なら“客がいない”って言って、予約を握り潰せる」
仁はポケットから、例の写真を取り出した。
「……じゃあ、俺があの部屋で、あの女に会うのは……」
「最初から仕組まれてたってことだよ。
お前に“これ”を受け取らせるために、な」
「……なあ酒井。あの管理人──一体、何者なんだ?」
酒井はこう答える。
「調べてみるか?」
遠くのアンプの音が、どこか不穏なコードを鳴らしていた。




