第4章:証拠
白市 仁は、警察署のガラス扉の前で立ち止まった。
夜の風が背中を押す。となりには酒井。
中に入ると、白い蛍光灯が静かに唸っていた。
仁が前に出た。
「写真を届けたいんです。昔の事件に関係してるかもしれません」
受付の女性が目線を向けた先にいたのが、北川だった。
20代後半。真面目そうな顔立ちだが、目は警察官らしい鋭さを宿している。
「お話、伺います。何の写真でしょう?」
仁は封筒から、くすんだ集合写真を取り出した。
「30年前の……たぶん、失踪事件に関わってると思います」
北川は最初、淡々と見ていたが──
目が、止まった。
「……これ、どこで手に入れました?」
「昨夜、ホテルの部屋で拾いました」
「少々お待ちを」
写真を持って奥へ消える北川。
廊下の向こうへ遠ざかる足音が、なぜかやけに長く感じた。
仁と酒井は長椅子に座る。
「顔、変わったな。見た瞬間」
「ああ。……何か知ってる」
5分ほどして、北川が戻ってきた。
「……写真は、お預かりします。ただ、念のためこちらは控えとしてお返しします。提出されたのは“このコピー”ということで記録します」
仁が手に取ったのは、元の写真だった。
くすんだ色、ざらついた紙質──間違いない、“原本”だ。
北川の声が少しだけ低くなる。
「……今後、何か進展があれば、必ずご連絡します」
「……ありがとう」
署を出ると、夜の空気が重たく感じた。
「……なあ、酒井。あれ……わざとだよな?」
「ああ。警察としては写真の方が欲しいはずだ」
仁は写真をもう一度見た。
それは、単なる忘れ物なんかじゃなかった。
これは──
誰かが仁に、託した“証拠”だ




