第19章:封筒
みのよと管理人を駅で見送ったあと、仁がぽつりと言った。
「そういえば、北川に挨拶に行こうか」
酒井が頷き、2人は警察署へ向かった。
だが、受付の刑事が申し訳なさそうに答えた。
「北川巡査は昨日付けで退職されました。連絡先もわかりません」
2人は驚きと戸惑いを隠せず、仁はスマホで番号にかけてみるが、
「この電話番号は現在使われておりません」という音声が流れるだけだった。
仕方なくそのまま帰路についた。
自宅のポストを開けると、一通の茶封筒が入っていた。
中には写真が1枚と、DNA鑑定書が2枚。
仁は封筒を広げながら一言。
「え?」
部屋に入り、封筒を開ける。
写真には、ラブホテル「ルミナ」の203号室で笑顔を見せるみのよと北川の姿。
「……これって」
手が震える。
1枚目はDNA鑑定書。
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鑑定対象:竹下みのよ
•父:竹下聡一
•母:白石結
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2枚目。別のDNA鑑定書が目に入る。
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鑑定対象:北川誠
•父:川口達也
•母:白石結
⸻
「……嘘、だろ……」
仁は、静かに封筒を手放す。
記憶がフラッシュバックする。
みのよが言っていた──
「母がどうしても許せなかった人がいるの……」
仁の瞳が大きく見開かれる。
許せなかったのは……
誰よりも真実に近づいていた2人が、
最も近づいてはいけない秘密に触れていた。
終わったと思っていた物語の向こうで、
新たな闇が、静かに口を開いていた。
──fin