let's restart!2
「…………何故?」
手頃な魂を引き寄せた、と先程この神は言っていた。手頃、ちょうどいい魂。つまり彼女は私に何か、転生させた上でやらせたいことがあるのではないだろうか。
「ふふ、警戒心が強いね。いいよ、そういうのも。上手い話に簡単に飛び付く可愛い子よりは好きさ。……じゃあ、特別に教えてあげようか。君を転生させる私たちのメリットを」
「……」
一体どんなメリット、転生する引き換えの条件を突き付けられるのかと身構える。しかし目の前の神は一切邪気の感じられない綺麗な笑みで拍子抜けすることを言った。
「__子ども、欲しいんだよね」
「………………は?」
「だーかーら、子どもが欲しいんだ。……人との間に生まれる子が」
「は??」
もしかして私神の色ボケに巻き込まれそうになってる? というか顔を赤らめるないでよ気色悪いな。
「子が欲しいなら勝手に個人で拵えておけよ、って思うだろ。でも違うんだよ。人と神が交わった子というのは下手すれば世に多大な影響を与える」
「まあ、それは分かるけど……」
もしとんだ気狂いが神の力を持ったりでもしたら最悪世界終わるな。想像力が欠如してると美術の先生に評価された私でもそれくらいは分かる。
「ハイリスクな不安定すぎる賭けをするくらいなら最初から仕込みをしておいた方がいい。だからそこそこ知性があり常識を備えている魂が欲しいんだ。冥界から頂戴するのも考えたけど……正直、私たちが決めた命の在り方をこちらの都合で変えるのも忍びないし最悪私たちの信仰に影響する。……あとこの世界の死者を利用したってあいつにバレたら面倒だし」
「?」
「まあ細かいことはいい。一応だけど君にも選択肢をあげる。私たちの世界に生まれ変わるか、そのまま死を受け入れるか」
「それ、実質一つの選択肢しかないでしょ」
誰だって死ぬのは嫌だ。ただでさえ死んだらどうなるか未知だというのに、もし仮に無に還るとかだったら自己が消滅して消えていくということだろう。
「……はぁ。誰かに利用されるとかちょっと癪だけど、いいよ。転生する」
「ふふ、賢い君ならきっとこっちを選ぶと思ってたよ。あ、ちなみにもう既に君の姿は弄らせてもらってるから。……ほら、鏡」
「報連相の重要さがこの世界では通用しないみたいだね。両親からの大切な貰い物を勝手に魔改造しないでよ」
やけに自分の体が小さいと思ったら魔改造の結果だったのか。文句を垂れつつ、もらった手鏡で自分の顔を見てみる。
「……え、可愛すぎる」
「でっしょー! ふふん、そりゃあこの私の子どもなんだからね。世界で二番目に可愛く美しくないと」
「とんだ美少女……傾国……」
儚くも可愛さがあって、更にさりげない美しさがところどころで香っていて子猫のような美少女がそこにはいた。オッドアイに宵闇をイメージするようなグラデーションがかった髪色、とにかく浮世離れしているのは確かだ。目の前の女神に似ているのはちょっと嫌だけど。
「じゃ、容姿の方は満足ということで。早速転生を……って、あ! 大事なことを忘れていたよ」
「大事なこと?」
「忠告さ。現世では民衆などに己は神の子だと触れ回らない方がいい。……崇められて人としての自由を失いたくなければね」
「分かった。でも隠すにも限度があるんじゃない?」
「それに関しては安心してくれ。信用に足る者達には私が事前に神託を下すし、君が生まれるところにはいい協力者がいる。何かあれば彼に助けを求めればいい。__ということで、行ってらっしゃい!」
瞬間、光が体を包み込む。視界が真っ白に染め上げられ、私の意識は一度途絶えた。
「下界に降りれば私たちは干渉が難しくなる。……頼んだよ、君がこの世界の命運を握っていると言っても過言ではないのだからね」
誰もいなくなった花畑の中でぽつり、神は呟いた。
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