メロクズの村
『極悪非道 罪のない老人を殺したド畜生 捕まえた人には賞金100万円』
『昨日昼頃、平和なシラクズの街に悲劇が起きました。公明正大平々凡々に生きていた老人、ツミ•ナキオさんが遺体で見つかったのです。警察は容疑者として遺体及び短剣のあった近くのセリクズティウス氏を逮捕しました。セリクズティウス氏によりますと、「この短剣は私が友人のメロクズに送ったものだ。やつは昔から激情すると周りが見えないことがあった。きっと犯人に違いない」と述べました。市民に聞き込みを続けると昨日メロクズ氏が街に来ていたことは確実であり、王はメロクズを指名手配することに決めました。「なんの罪もない老人が突然若者に殺される。やはり人間は信じられん」王は自慢げな表情で述べ、今後も疑わしきは罰していくと述べました』
メロクズは激怒した。必ずかの邪智暴虐の王を除かねばならぬ。ついでに俺を売ったセリクズティウスを。だがメロクズはアンガーコントロールができる男だった。6秒数えようと思った。無理だった。妹が見ているにも関わらず、メロクズは妹の友達と朝から昨日の2回戦を始めた。
「ん…バカ…やめてよ…メロ子が見てんじゃん…」
構わなかった。貪るように妹の友達の中と交わったメロクズ熱い情交の中で果てた。メロクズは全てがどうでもよくなった。見事なアンガーコントロールだった。
指名手配されていようがなんだ。わざわざシラクズからこの村に誰かが捕まえに来るわけでもあるまい。人口の少ないこの村で、貴重な働き盛りの自分が追い出されるはずもない。メロクズは布団にくるまり二度寝の態勢に入った。
「『メロクズへ。3日後の夕方までに自首しなかった場合、代わりにセリクズティウスを処刑します。王より』だそうよ、お兄ちゃん」
妹が新聞の続きを読んでいた。構うものか。自分を売った友人など。
「いいの?お兄ちゃん。たった1人の友人なんでしょう」
セリクズティウスとは学生の時の悪友だった。学生時代、シラクズの街で出会った2人は、妙に息があった。お互い学校にはろくにいかず、2人で酒、タバコ、ギャンブルをやり、金がなくなれば自分たちでギャンブルを運営した。シャブの売買や風俗のスカウトまで、やれることはなんでもやった。セリクズティウスが家業の鍛冶屋を引き継ぐと言ったとき、メロクズはつまらない顔をしながら村へ帰った。呆れて笑いながらセリクズティウスが最後にくれたのが、あの短剣だった。
「あんなやつは知らない。俺は面白かった頃のあいつが好きだった」
「見栄張って。後悔してもしらないよ」
メロ子はゲルから去っていく。メロクズはしばらく布団にくるまり、時たま女の胸を揉んでいたが、布団から出ると、身支度を整えた。
「そういえば、セリクズティウスに金を貸したままだった。今死なれても困る」
「素直じゃないんだから」
メロ子はニヤニヤしている。メロクズはシラクズの街へ走り出した。