シラクズの市
メロクズ激怒した。とっ捕まえた老爺によると、街がしみたっれた雰囲気なのは人を信じれぬ王のせいらしい。必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。だが、メロクズの村では、最近アンガーコントロールが流行っていた。メロクズも流行に乗り、6秒数えてみた。無理だった。1秒目でメロクズは、怒りのままに目の前の老爺を懐の短剣で切り捨てていた。
「なぜ…」
老爺は信じられないものを見る顔をしている。それはそうである。
「すまぬ、つい…」
イライラして…。そう言うメロクズの前で、老爺は息絶えた。困ったメロクズは短剣を投げ捨て、死体は放っておいた。幸にして、身体や服への返り血はなかった。普段から、羊や村の嫌われ者を捌いてきた甲斐があったと、メロクズは胸を撫で下ろした。
王は人を殺す。俺も人を殺す。それでいいじゃないかとメロクズは思った。王が間違っているというのなら、市民が王を倒すだろう。俺がやるべきことじゃない。メロクズは帰る支度を始めた。見事なアンガーコントロールだった。
村に帰ったメロクズは、妹の結婚式を盛大にあげた。結婚式では定番の三つの袋のスピーチをした。新郎に早く子供を作れとセクハラしていたら、イラついた妹にウェディングケーキ用の刃物で襲われたが、軽くいなした。大量の酒を飲み、たらふく飯も食べた。満足したメロクズは、家に帰って寝た。妹が出ていってしまい今日からは1人で過ごすことになるのだと思うと、少し寂しかった。
「お兄ちゃん!!!何よこれ!!!」
寂しさのあまり適当に捕まえた妹の友人と寝ていたメロクズは、けたたましい妹の怒鳴り声と蹴りで目が覚めた
「何とはなんだ…なんだこれは!」
妹が持ってきた新聞に目を通すと、自分が指名手配されていた。