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第9話 ルシファー様、勘づく

「十文字」


 寝る前、スマホで調べてみる。全国に二千七百人程いる珍しい名字らしい。


「十文字……」


 朝、歯磨きしながら考える。いやいや偶然の一致だろうと。


「十もん……ヒカリさん」


 そして昼、大学の構内で前を行く彼女の背中に声をかける。そういえば名字で呼ばれるのは嫌いだと言っていたなと思い出しながら。


「えっ、あっ、ツバサくん!?」


 振り返った彼女は俺の顔を見るなり、ぎょっとした表情を浮かべた。しまった昨日特大のハラスメントをかましたんだから当然の反応じゃないか。


「いやその、昨日のあれは」

「わ、わかってるって……電話の相手が変なこと言ったんだよね?」

「そうそれ! その通り!」


 理解の早い彼女に、思わず大声で返事をしてしまう。


「わかるわかる、うちのおじいちゃんも変な事よく言うから……あのあと家に帰ったらね、家業を継がないなら大学の費用払わないぞーって言い出したんだよ?」


 と、今度は俺がぎょっとする番だった。どこかで聞いたような話だったせいで。


「さんっざん孫の人生束縛しておいてさ、本当嫌になっちゃった。それで喧嘩しちゃった」

「……束縛って?」

「小学校も中学校も離島でさ、高校だって通信制にさせられたんだぁ。ひどいと思わない?」

「それは……ひどいね」


 恐る恐る聞き返した返答に、精一杯の返事をする。


「でしょぉ? それで嫌々家業の手伝いさせられてさ……それでうん、ちょっと疲れちゃってたかも。あ、怪我とかは大丈夫だったからね!?」

「そ、そうなんだ……それでその、家業ってどんな感じ?」


 しどろもどろになりながら、彼女に探りを入れてみる。


「えーっと」


 考え込む彼女を見てほんの少しだけ安心する。そうだ考え込むって事は嘘をつこうとしているって事なんだからそりゃああくまで怪しいってだけで済むしいやでも実際仮にあのシャイニーがヒカリさんだとあっなんか安直な名前がしてきたぞ。




「正義の味方……的な?」





 自主休講にして帰宅して、即アスモデウスに駆け寄る俺。


「おかえりなさいませル」

「アスモデウス、緊急事態だ」

「せっかくですので配信タイトル風にお願いします」


 縁側でタブレットをいじっていた彼女は眉一つ動かさず、そんな難題を投げかけてきたが。


「【悲報】マスクドウォーリアシャイニー、知り合いだった【しかも女子】」


 今の俺には造作もない。


「それにしても、よく正体がわかりましたね。やはり十文字大河の孫でしたか」」


 若干得意げな顔の俺に動じず、彼女は臆面もなくそう述べた。


「知ってるの?」

「当然です。なにせマスクドウォーリアである十文字大河は」


 タブレットを起き、ゆっくりと立ち上がるアスモデウス。


「秘密結社アルカディアの創立メンバーの一人で」


 それから食卓の神棚に置かれた一枚の写真を指さして。


「澄香の……貴方の祖母の仇なのですから」


 ヒーローと悪の組織だけじゃない、ひどく個人的な因縁を教えてくれた。

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