「あいつ」の写真
…店先から中を見るとソレイュが手を振って、そのあと手招きした。
ーーなんか注目浴びてる?
店に入ったら、瞬く間に客がこっちを見た。
ーー何⁈
ソレイュは笑って嬉しそうにしてるし…。
「モア!!話したかったんだぁ!」
なんで?
ーーこっちも聞きたいことあったし。
まぁ、いいけど。
「イマァジはいつから教えるんだ?」
んん、今の絵が描き上がったらかな。
「それってどれくらいだ?」
…さぁ?けど、7日はかかると思う。
「じゃあ、イマァジが出来上がるまで暇なのか?」
あぁ。
「そう言えばモア、好きな物は?!料理だったら、俺、なんとでもするぜ!」
…ショコラかな。
「えぇ〜、料理は〜?」
ーーがっかりされても、食べないんだから仕方ない。
「…ニラァジュにイマァジを教えるってどう教えるんだ?」
…んん?次は、人間を描くらしいから描き出してからじゃないとわからないかな…。
「それ…誰を描くんだ?」
…やって欲しい。って言われたけど、なんかなぁ…。
「えぇ!モアが…!
…ソレ すっげぇ欲しい!!売るって?いくらで売るとか聞いてねぇ?」
……さぁ⁇
ーー嘘。
くれるって言ってたけど、これを言ったら面倒な事になりそうだから秘密にしておこう。
「…ッ。モアのイマァジかぁ…!はぃ、ティア。」
あぁ、ありがとう。
「もう、タンテイの仕事はしないのか?」
…んん?仕事があればやるかなぁ?
ーーどうせ暇だし。
「…仕事?かぁ…。」
ーーそんなに簡単には依頼はないだろうな…。
「今日は、これから何するんだぁ?」
…んん、買い物に行こうかな。
「何買うんだ?」
生活雑貨…?
「じゃあ、2つ先の通りのサンチェがいいぞ!あそこは何でも、揃うしなぁ!
そこの主人にコレ渡せば良いから。」
ーーこいつ…便利。
じゃあ、布屋は?窓に欲しいんだけど。
「その店から3つ先の角を曲がった通りのマ・シェロだな!」
「ソレイュぅう! !ルジェ・ェおかわりぃい!」
「はぁい!ありがと!!」
ーー誘導してくれる地図⁈
めちゃくちゃ便利‼︎
これから、場所を知りたい時はソレイュに訊こう。
「すまん。なんの話だっけ?」
いや、別に。そろそろ行くよ。
「ソレイュ、いつもごちそうさまぁ。ありがとうねぇ。
あら?初めましてねぇ?どなた?」
「あぁ!エマさん。
いちいち来なくても、テッチェルに置いて行ってくれればいいのに…!
こいつはモア!4階に住むことになったんだ!!」
「そぉなのねぇ。よろしく。」
ーーなんだ?このほわわんとした感じ…?
…花が舞ってる。
ここはそんな奴ばっかり…。
よろしく。
「お仕事は何をされてるの?」
「モアがかっこいいんだぜぇ!えぇと…タンテイ。」
ーーさらっとお知らせすんな‼︎
「まぁ!タンテイさんなの!?…タンテイさんて何??」
「人探したり、情報を集めたり、人助け〜みたいな仕事!」
「じゃあ、何かあったら助けてね。」
「気軽に言ってよ。たぶん腕は、補償するし。」
ーーぃや、ちらっとこっちを見てにやりとされても…。
「おい、そろそろ行くぞ。」
「わたしは、エマ。この人は、レオよぉ。
あなた!後で家に寄りなさい。…それじゃあね。」
ーー勢いある人差し指で指名された。
「…あのノゥジェルドはココで、昔、パティスエ〜ルをやってたんだ!
今は、2階に住んでて。たまに焼いたモワルゥ・ショコラとマドリァヌをくれるんだょ!ソレががすごくうまいくてさぁ!!」
へぇ。とりあえず、行ってくるよ。
ーーいろいろ買いに…。
ソレイュがひらひら手を振ってくる。
ーーえぇと、2つ通りの先…。
結構、遠い。
馬車を使う距離では、ない。
けど、遠い。
普段、歩くと言う移動方法をしてない為か長く感じた。
ーーサンチェ。ここか…。
「…!ヴォン・ソワァ!何か、お探しですか?」
ソワァ。ブラシとダストパン、クロスとクッション、ピンとハンマーが欲しい。
「…?全て置いてございます。」
ーーあぁ、選ぶの面倒くさい…。
では、クロスが見たい。
「…はい、こちらです。
どうぞ。」
ーーうぅん。
赤と青。
迷うな……サファイアにしよう。
青系かぁ…。
あ、これいいかも。
絵柄じゃなくて、布地の折り方で勝負してる感じ。
これとこれ。後はそちらの良い商品を見繕って欲しい。
「メルスィ、…お届けしますか?」
じゃあ、この住所に。後、これは今持って帰る。
ーー住所を見た途端にすごく嬉しそうにこっちを見られた。
「この近所にお住まいだったんですね!このお店。僕、常連なんですよ!!
最近、越して来られた方ですか?」
あぁ。
「そうですか。いろいろ物が入り用でしょう…。」
そう…たぶんまた来る。
「オフ・ヴォルゥ!!またの来店を!」
ーー次は、布屋。
3つ角を曲がった通りだっけ?
……地味に精神的にくる距離だな。
1つ。
2つ、帰りは禡車を捕まえよう。
3つ…、の角を曲がった通り。
マ・シェロ……。
ここか。
ーーうぅん。
部屋に貼る布はどうしようか…青系、深いサファイアっぽい色にするか……濃い青、濃い青、あった。
…そう言えば、ないと困る。
見つけた…鋏。
…やっと終わった。
これを5m。後、これも。
「メルスィ。ちょっと待っててくださいねぇ。」
ーーあ、あの布いいなぁ…。
でも、買っても何に使う…?
「はい、お待たせしました。」
ーー早ッ‼︎
…あぁ、エマって言う老婦人のところにも行かないと…。
…面倒だな。
- - - - -
「はい、どなた?」
下の店で会っ…
「ぁあなた!待ってたのよぉ!!さ、入って!レオぉ!
あのモアがやっときたわよぉ!!」
「あぁ。やっとかぁ。」
ーーやっと、って。
待たされたって聞こえるけどッ⁈
「ちょっと待ってて。」
ーーなんだろう?
「これを渡したかったの。」
これは?
「良いショコランティを頂いたの。後、モヮルゥ・ショコラとマドリァヌも入ってるから。また、感想聞かせてね。」
ありがとう。
ーーあ…綺麗。
「あ…コレ?良かったらあげるわ。使い道がなくてここに飾ってたの。」
でも、家に火をつける物も何もない。
ーーそんなに必要性はないけど…くれるならもらっておこう。
「そんなのあげるわよぉ!」
いいの?ありがとう。
ーー早ッ‼︎
もう刺し終わってる。
「寄ってくれて、ありがとぉ!おやすみ。」
ーー階段を上がる音が響いてる。静か…。
はあぁぁぁ。
精神的に疲れた…。
クロスとか選んだの、初めて…。
こんなに面倒なんだ…。
ーーカーテンの隙間からの月灯りと、小さな炎の灯りが綺麗…。
いくら残ってるんだろう。
…ん?
この紙は⁇
写真か、なんのだろう?
…「あいつ」の子供の頃の‼︎
うぁあ、可愛いぃ!
…会いたいな。
しっかりしろ‼︎
ここでは独りなんだから‼︎
「独り」
帰りたい。あの場所へ。
帰りたい。あの楽しみがある場所へ。
帰りたい。必要で必要としてくれるので「あいつ」の所ヘ。
…さっきエマは何くれたんだろう⁇
良いショコラ…って言ってたし、燭台とかのこともあるし。
今度、礼はしないと…。
ショコラか。
どうせ味は、しないんだろうけど……。
!!
…あ。
…甘い‼︎
ー何⁈
この感覚初めて‼︎
これは…?何も味がしない…。
……。
…これは…?甘い‼︎
あ、なくなちゃった…。
ーー明日は、馬車でこの近所を回って見よう。
生活に困らない程度に知っておいた方がいいな。
わかんない時は、ソレイユを遣うとして…。