表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

何事にも必要なことってのは基礎と決まっている

現在編集中です。

次ページも。


しばしお待ちを……。

父に直談判した次の日、俺は叔父様に連れられて森を訪れていた。

そこは領地の端にある薄暗い、謂わば”魔の森”と呼ばれるところだ。

「湿っぽいところですね。」

「まぁ森だしな。それにこの森は魔物生息地帯がわんさかあるから、瘴気で空気の流れが悪くなってるんだ。」

「へぇ……。」

そんなこと、聞いた記憶の中になさそうだな。

叔父様は俺の反応で、訝し気にこちらに視線を向けた。

「この領地の知識はお前くらいの年齢だと当たり前に学んでるだろ。」

「ッ……そうですね……実際に見るのとでは。」

叔父様の視線がまた前を向いた。

あっぶねぇ!!

ユーロス、こいつまともに勉強もしてなかったのか?!

こないだの事といい、今日といい、なんてやつだ。

何かあった時のために、誰が使っても困らない体にしとけよ……。

「よぉし、そんじゃ始めるか。」


叔父様が足を止めたのは森の奥地の少し開けた場所だった。

「はい! おじ様、よろしくお願いします。」

「ハハハ、堅苦しいのはよしてくれ! 俺が教えられるのはせいぜい魔力のコントロールくらいだ。」

せいぜいなんてとんでもない。

俺にとっては魔法ってもの自体が初めてなのだ。

……って、あれ?

「僕って魔力があるんですか?」

「何言ってる? 生きてる限り当たり前だろ。」

当たり前なんだ……。

「どうやらその反応を見るに、お前の魔力量は素質云々の時点で測定をやめているんだろうな。再度教会へ行くことにしよう。」

「えぇ……。」

行きたくないよ~。

あそこは体が覚えてんだよ、父さんに刃物を突き立てられたってのがまだ消えないっての。

「なぁに、今すぐってわけじゃない。そもそも魔力量の正式な測定には魔力のコントロールができるやつのほうが良いに決まってる。」

「そうなんですか?」

「あぁ。貴族の見栄ってやつで、洗礼の時に測ることがほとんどではあるがな。」

「コントロールが必要っていうのはどうしてですか?」

「簡単だよ。魔力のコントロールができるということは、限界を知っているってことだ。限界を知らないやつが魔法を使うと、体の魔力回路がねじ切れるからな。」

いや、こっわ!!

「なぁにビクビクしてんだ? 出来るようになれば心配することない。」

「そのできるようになるまでが怖いんですよ。」

「は〜、お前あいつらの前であんな啖呵切っといて、今更か?」

「あの人たちにはあそこまで言わないと無理でしたよね。」

「まぁな、ハハッ!」

笑ってんじゃねぇよ、他人事みたいに!

……他人事だけど!!


「とにかくだ、しばらくは基礎訓練として魔力のコントロールと体術をメインに進めていく予定だ。」

「了解です。」

「まぁ、始祖様のことだ。それはそれはすさまじいスピードで上達するだろうよ。」

「始祖? 俺が?」

「一人称漏れてるぞ。」

あ、やっべ……。

「ちなみに、逸話の中で始祖様も一人称が平民と同じだったらしい。」

急にぶっこんでくるじゃんこのおっさん、おっさんって言っちゃった。

「口に出てなくてよかった。」

「ん? 何のことだ?」

「いや、別に何も。」

「その感じ、さては失礼なことだな。」

ぐっ、鋭い。

俺は、軽くせき込んでから背筋を伸ばした。

「で、では叔父様、本日はよろしくお願いいたします。」

俺の言葉に、叔父様は得意げにはにかんだ。

「こちらこそ頼みましたよ、始祖様。」

「やめてください。」


叔父様は俺の背中に自身の手を添えた。

すると、叔父様の手のひらからふわりと何かが入り込んでくる感覚がする。

「これは?」

「魔力のコントロールに使う脈を診てるんだ。」

「脈って、血が流れてるあの?」

「そうだ。どんな生き物にも、魔力が含まれている。その中でも人間や魔物は”体が血で出来ている”し、血に魔力がたっぷりと含まれている。」

「……なるほど。」

俺の知ってる体の仕組みとは違うな……”体に血が流れる”じゃないのか?

実際に今も、手の甲には青い血管が透けている。

「何かおかしいところでもあったか?」

「え?い、いや、別に。」

叔父様は、俺の背中から手を離し俺の肩をつかむと、ぐるりと自身のほうに体を向かせた。

「おいおい、ユーロス。お前さんらしくないじゃないか。」

「え?」

「聞いた話だと、お前さんはもう少し傲慢だって聞いたが?なのに今のお前はえらくしとやかだ。」

「それは……さすがに反省したといいますか、もう子供なままじゃいられないなと。」

「フッ、ならなおさらその態度はいただけない。」

俺が首をかしげると、叔父様は俺の前に腰を落とした。

「いいか?大人になることは、言いたいことが言えなくなることなんかじゃないぞ?むしろ逆だ。言いたいことを言いまくることだ。」

「その結果、家から追い出されてもですか?」

「お?喧嘩か?買うぞ。」

「違ッ、俺は昨日まで秒読みだったんですよ。」

すると、叔父様はけらけらと笑いながら俺の頭を撫でた。

「そりゃ、全部が思い通りになると思ったからだろ。」

「え?」

「大人はな、大概の事は思い通りに行ってなんかいねぇよ。でも思い通りにいかないからってその態度じゃ、お前さんはまだまだ黙るって器じゃあない。」

おっさん、もっとわかんなくなったんだが?

「そう不貞腐れるな。要は、俺に対してなら何でも言ってくるといいってことだ。」

「最初からそう言ってくださいよ。」

「そうそう、それだよ。手紙に書かれていた通りの百面相だ。」

俺は手紙の果てまでひどい言われようらしい。

聞きたくなかったな……。

しかしどうやら叔父様は、俺の百面相に向き合うつもりらしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ