最初の負け
会見の後、新グループの詳細が発表された。それは今後背負うことになるグループの名前や初めてお披露目されるメンバーの発表だった。
しかしそれは同時に行われたガールズグループと合同に行われた。
2つのグループの関係者が横一列に座った。片方側には落合と田中という若々しい男たちが、もう片方にはベテラン風な男たちが座っていた。どうやらあちらは全員で分担して行うらしい、自己紹介は一応したが誰がトップか明言せず、黙々としゃべっていた。
森繫はというと両者のちょうど中間地点にいた。まるで自分はどちらにも中立であると言わんような位置だった。
「新グループの名称は、ボーイズグループは『アース』で人数は12人、ガールズグループは『ジュピター』で10人とします。」
森繫の言葉に記者たちが注目した。この瞬間からアースは生まれた。落合の目は覚悟の炎が燃え盛っているようだった。
その会見は新しいグループの誕生とともに落合のリーダーとしての最初の舞台でもあった。
リーダーシップとは何であるか。それは一概には言えないが少なくとも『目標を達成するために他者に影響を与えること』がいえるだろう。だから落合は様々なインパクトの材料を持っていた。
落合はこの会見で言うことを予め決めていた。それは、注目を得ること、メンバーの士気を上げること、今後の指針を言うことだった。
しかし会見はうまくいかなかった。それは世間からの注目度がこの時点で明確に差があったからだ。国内トップのプラネット系の新グループ。ファン層は男性メイン、ボーイズグループが介入できる余地は少なかった。どうしても記者からの質問はジュピター側に集まる。おまけのような質問がアースにくるがどうしても自分の言葉で言えない。そのままずるずると進んでいくうちに田中は焦り、落合は少し落胆しているようだった。この会見は対抗する気など最初はなかったが事実上、アースの負けとも言えるような内容だった。
それにメンバー発表でも出し抜かれた。ジュピターはさすがルックス第一主義というような顔ぶれだった。ネットはその話題で持ち切り。アースの注目度はさらに薄まった。最悪に近いレベルでの船出と言わざるをえなかった。