オーディション①
近年ではオーディションをエンタメとして見ている流れがあり、オーディションを公開しているものも多かったが「プラネット系」ではそれは行われない。オーディションは秘密裏に行われ、知らぬ間に合格者が決まっている。
オーディションは段階を経てすすめられた。
1次試験は書類審査、言い換えればルックスだ。送られた自身の写真で判断される。応募総数5万を超えた今回のオーディションで9割以上がこの段階で落ちる。判断基準は選考者の好き嫌い。ここでは運も試されるような内容だった。
2次試験は歌、ダンス。ここでは最初からプロレベルを求められない。最低限の力量があれば受かる。もっと言えばルックスが極端に輝いていればこの段階はほぼ通過も同然である。しかしこの段階でさらに9割落とされる。写真でみるのと実際に見るのでは、、、という子がここで落とされる。「プラネット系」はルックス第一主義、それ以外は育成の仕様でどうにでもなるという考えだ。
ルックス第一主義、この伝統的な考えで進められるオーディションに落合はあまり関与できなかった。関係者は表立って動けない代わりに選抜は権力をもとうとして落合をその場から排除した。結局、落合は他人から与えられた人材をプロデュースするという恰好になった。
その話を聞いた落合の表情は意外にも冷静だった。しかしすべてを納得をしているわけではなかった。関係者が淡々と話を進める中で落合は口を動かそうとせず手元の資料を静かにみていた。
話が終わるころ、落合の口がようやく動いた。しかしそれは静かなものだった。
「わかりました。俺も大体は納得しました。しかし条件が2つほどある。」
関係者は多少どよめいたが、強情ではない口ぶりなのでどこか安心もしていた。
「して、その条件とは?」
「1つ、オーディションの最終試験は俺がやらせてもらうこと。もう1つはオーディションが終わった後は俺がすべての舵取りを行うこと。」
この条件をきいて関係者は少し驚いたがそれでも冷静だった。それはなぜか。1つ目の条件はこちらでどうとでもなる。最終試験までにどの子が受かってもいいようにすればいいだけの話だ。2つ目の条件も案外問題ではなかった。それは、今回のボーイズグループはあまり関係者間で盛り上がっていなかったからだ。プラネット系はガールズグループ。主体はそっちで今回のボーイズグループは言わば亜流のようなもの。新しくできるグループの中でボーイズグループよりもガールズグループに力を入れていく方が現実的とみられていた。
「なぜあの条件を出した?」
会議室をでて相棒のひろから言われた言葉に落合は少し笑いながら言った。
「2つとも必要だったから。1つ目は俺が少しでもこのオーディションに関わるため。じゃないと受かった子たちはあまりこのリーダーを信用しないだろ?もう一つはオーディションが終わった後のこの組織をうまく動かすため。後で外野からあれこれ言われることは避けたい。」
この言葉を聞いて落合が戦っている相手は非常に多く、果てしないことが伺えた。しかしそれに向かう落合の目は明らかに闘志がみなぎっていた。少しも臆することなく、出来うる最大限のことをやろうとする姿勢に相棒は心を震わせた。