prologue
なんとなく書いてみました。
俺は、小さな頃から周りから比べられてきた。出来のいい兄や姉、従兄弟たち……。比べられるのがたまらなく嫌だった!せめて、家族には、俺の存在を認められたかった。だが……。
「マクルミア・グレネビア。お前を、我が国からただいまを持って追放するとする!」
「……。」
追放?マジ?
国王である父上から、そう言い渡された俺……。
「ち、父上! そ、それは、あんまりです!」
六人いる兄や姉の一番末っ子であるリリア姉。リリアとは、割とよく話していたと思う。
周りからは、小さな声で、「ざまぁ」だの「いい気味」だの「あー、これでやっとせいせいする」だのな声が聞こえてきた。最後のは、俺より少し上の兄・ポールだった。
「ふん……」
国王が、その場を立ち去ると、ゾロゾロと周りにいた野次馬連中、いや、俺の兄なり、姉なり、母なり、従兄弟達も連れ立って部屋を出て行った。
「マクア、あなた……」
その場に残ったのは、俺とリリアだった。
「これから、どうするの?」
「さぁ?」
や、やっと……。
俺は、あの忌まわしい家族から解放されたんだ!
嬉しくて発狂しそうだったが、目の前にはまだリリアがいる。
「まぁ、隣国までいって、のんびりするよ……」
それは、嘘でもなんでもなかった。
「じゃ。あ、リリア姉! 婚約おめでとう!」
そう言って、俺は自室に戻り、簡単に荷造りを始め、その日の内に城をコッソリと出た。
……筈だった。
ズサッ……
「な……なんで……どうして……」
ゲホッ……ゲホッ……
「これ……。途中で、お腹がすくと大変だから……」
そう言ってリリア姉から渡された弁当。
いや、弁当は普通に美味かったから、茶か……。
それを飲み干した瞬間、全身が痺れ、力が抜け、口から……
「なんで?」
ハァハァと息が荒くなり、段々と視界もボヤけてきた。
俺は、死ぬのか?
確かに俺は、家族にとっては迷惑な存在だったかも知れない。
けど……
目を閉じれば、リリア姉の笑顔があった。
だが、俺は、そのリリア姉に……
段々と息……が……。
『ここは……どこだ?』
誰かに身体を撫でられてるかんじがして、目を開けたら、暗い場所に光る二つの目。
自分の両隣では、モゾモゾと動く物体がいた。
『腹減った……』
動こうとすると首根っこを噛まれ、また同じ所へ戻される。
『こーら、大人しくしてなさい。お腹空いてるでしょ?』
柔らかく、温かみを感じる声だった。
だが、俺の知ってる母さんの声ではなかった。
見たいのに、よく見えない。暗い場所ということしか、あまりわからない。
やっと一つ分場所が空いて、俺はやっと食事?にありついた……。
だが、非常に飲みにくい。
どうやって?と手で何かを押した瞬間、温かくて甘い何かが出てきて、俺は、腹からそれが出そうになるまで、飲んで、また寝た。
そして、それから数日後……。
でかっ!こいつは、いったい……。
自分よりも遥か大きく、見下ろしてる姿。
しなやかな身体に、ひょろりと伸びたシッポ?にとんがった耳……。
ギィッと何かが開いて、光が見えた。
『猫だ……。でも、俺なんで?』
そして、大きくて丸い何かが、俺を見ていた。
「ママー、シロの赤ちゃん、目が開いたよーっ!」
耳が痛くなるような大きな声で叫び、俺の首を……。
『やめろ……。く、苦しい……』
足をバタつかせ、声をあげても、誰も助けてはくれなかった。
「あ、サラちゃん! だめよ、そんな抱き方しちゃ! めっ!」
そう言って、俺を助けてくれたのは、この鬼みたいな奴の母親みたいだった。
「ごめんなしゃい……。シロに返してくりゅ」
今度は、優しく持たれ、また箱の中に戻された。
「ごめんね、シロ」
ニャウ……。
パタンとまた扉は、閉まられ、俺は眠りについた。
ある日、突然箱から出された。
見るモノ全てが初めてなものだった。
『あれは、なんだ?』
あったかい風が、ソヨソヨと流れ、その大きな塔はゆっくりと回っていた。
「こら、らーめっ! めっ!」
『……。』
俺を膝に置いて、そう言ってるのは、この屋敷の姫であるサラというらしい。
「可愛いわね。男の子だっけ?」
「そう。あ、心配しないで。おうちに行くまでに、病院連れて行くから」
『病院? なんだそれは……』
「ありがとう。楽しみだわ。ね、写真撮っていい?」
サラ姫の母親と同じくらいの女が、俺を触ろうとし手を伸ばした。
ファゥゥゥゥッ!
俺は思わず手を出そうとしたけど、サラに後ろにひかれ、手を出す事が出来なかったが……。
「あ、驚かせちゃったかな? じゃ、サラちゃんと一緒に……」
『な、なんだこれは! カシャカシャとうるさいな……』
暫くしてその女は、去っていって、俺はまた箱の中に……。
「寂しくなっちゃったわね」
俺にそう声をかけてきたのは、猫母のシロ。たくさんいた筈の仲間も今は、俺一人になった。
「ねぇ、仲間は? あのシマブチは?」
「あの子は……。幸せに暮らしてるわ。さ、坊や。オチチを飲んで、少しおやすみ」
俺は、シロ母さんを優しく言われ、腹が満たされるまで飲んだ……。
「フギャァァァァッ!! フゥゥゥゥゥッ!!」
「ごめんなぁ。痛かったかぁ……」
[男にして、初めての屈辱! 俺の大事な尻に何を……]
「35.2ですね」
「うん。健康健康!」
ッシャァァァァッ!!
俺の身体をアチコチ回すは、寝かせて変な事をするは……。
まぁ、あんな地獄から戻ったら、サラ姫が俺にご褒美のチュールをくれるから、我慢してるけど……。
「さぁ、お舐め……」
[ん?今日は、なぜこんなに優しいんだ? こいつ]
いつもなら、飯の前にチュールなんかくれなかったし、飯の後にもくれた。
シロ母さんからの毛繕いもいつもより丁寧だし。
「さぁ、これつけてみようか? ね、名前は決めたの?」
「うん。確か、マク? アク? 違うな。あっ、アクアだ!」
[アクア? なんだ、その名前。俺の名前は……なんだったっけ?]
おかしい。ちゃんとした名前があった筈なのに、思い出せない。
「あ、お目目の色とこのリボンおんなじ!」
サラ姫が騒ぎ、俺はムンズと捕まって……。
[これは、なんだ? なんで、俺が前にいるんだ?]
ニャウ?
触ろうと手を伸ばせば、同じように向こうの俺も手を伸ばす。
「ね、お目目とおリボンおんなじでしょ?」
確かにそうだが……。
不思議な感じだった。
俺……猫なんだ。真っ白くて、耳がツンっと立ってて、目が濃い水色に近かった。
「でも、なんかいいのかな?」
「いいわよ。白い猫が産まれるとは思わなかったし……」
それは、シロ母さんも言ってた。俺達の父親は、グレーの色だし、目は緋色に近い。母さんは、黒に目は同じく緋色。仲間達もそれぞれ同じ色だったのに、俺だけ白!
「でも、私も貰われて来た時は、白だったんだけどねぇ。おかしなもんだね……」
それは、今朝シロ母さんに言われた。
そんな変化って聞いたことないけど。
そのリボンをつけた俺は、可愛い箱に入れられ、シロ母さんと鼻だけで対面。
フニャァ?
[シロ母さん?]
ニャニャッ!
[向こうに行っても可愛がって貰うんだよ?]
[母さん?]
シロ母さんは、サラ姫に抱かれて……
[母さん?]
[母さん!]
[母さぁぁぁぁぁぁんっ!!]
でっかくて、動く箱に入れられても、俺は叫んだ!
嫌だ!嫌だ!母さんと離れたくない!母さん!母さんっ!!
泣いた…泣いた…泣き続けた……
そして、俺は……
「アクア? うちの子になってくれてありがとう」
「アクア……天国でも、元気に遊んでてね」
「みんなを幸せにしてくれて、ありがとう」
飼い猫は、長くて十八年らしいが、俺は二十五年生きた。勿論、当時のカオリ母さんは先に天国に逝っちまったけど、その後で、新しいミキ母さんが来て、カオリ母さんの娘のミライ姫がお嫁にいった。
俺は、これからどうなるんだ?なんか、身体が光ってるけど……。