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第十一話 昼下がりのお楽しみ

 鬼ごっこを無事終えたお父さんは、縁側でほっと一息。和ちゃん、悟ちゃんと並んで座り、ゆっくりお茶をすすります。

「のどかねぇ」

「よいかぜだ……」

 和ちゃんと悟ちゃんはお父さんを挟んで、のんびり青空を眺めます。ふたりとも、ぼんやりしているようで、その小さな手はお父さんの手を強く握っています。穏やかな午後のひととき。そして、それを見つめる影!

「ふむ。ふむむ。縁ちゃんのさくせん、かんがえちゅ……」

 縁ちゃんが指フレーム越しに三人を観察しています。また何か大騒ぎかしら? と思っていると。

「とってもいいふんいき! このままがいいわね」

 縁ちゃんはそっとその場を去ろうとします。

「ううん、やっぱり――縁ちゃんもいれてもらうわ! パパー!」

 思い直して駆け出した縁ちゃんは、いつもの三分の二くらいに勢いを抑え、そっとお父さんのお膝へ飛び乗りました♪ 和ちゃんや悟ちゃんともおててをつないで、楽しくお話♪ 私もいっしょに、お茶しよっと♪


-


 縁側でお茶を飲んだお父さんと私は、場所を移して、またもやお茶を楽しんでいました。今度はお庭に差された日傘の下で、麗奈ちゃんと優雅なティータイム♪ 給仕役は沙代佳ちゃんです。沙代佳ちゃんは、いっしょに座って飲むよりも、お世話をするのが好きなんですって。麗奈ちゃんは、そんなお世話したがりの沙代佳ちゃんのお相手を普段からよくしてくれているんです。

「いいお茶でしたわ。さすがは沙代佳さん。それでは、そろそろ始めますわよ」

「了解でっす!」

「楽しい楽しい、ぞうきんがけのお時間ですわーっ!」

 麗奈ちゃんが、うきうきとぞうきんを絞り、お庭に面した長い廊下へ移動します。

「沙代佳はモップがけです!」

「お父さまと恵理お姉さまは、そこで見ていてくださいまし。しっかり綺麗にできているか、チェックをお願いいたしますわ!」

 元気におそうじする沙代佳ちゃんと麗奈ちゃんを見ながらのティータイムは楽しいけれど、ちょっとお手伝いしたくなっちゃう。でも、これはふたりの趣味だから、お邪魔しないほうがよさそうですね♪


-


 結局、おそうじをちょっぴり手伝ったお父さんと私は、お家の三階にある屋内プールへやってきました。涼子ちゃんに誘われたんです♪

「父さん、いっしょに泳ごう! ボクが合わせるから。えへへ、水着って青春って感じでいいよね~♪」

 水着に着替えてプールにつかる、カップルにしか見えないふたりを眺めてにやにやしていると、その行く手に浮かんでいるものに気付きました。浮き輪にはまってぷかぷかしている、先客の巴ママです!

「泳ぐのもいいけれど……浮かぶのも良きぞ。クラゲの気分で……無の境地」

 小学校時代と同じサイズのスクール水着を着ている巴ママは、ときどきここでクラゲになって、無になっているんです♪ その巴ママの浮き輪が、急に……すごいスピードで動きだしました!

「巴ママすごい! これは青春スピードだよ!」

「ほう……クラゲの底力か……」

 なんて、涼子ちゃんと巴ママが言っていると、浮き輪の後ろから鳴子ちゃんが飛びだしました!

「巴ママ、泳げないなら、鳴子が手伝ってやるゾ!」

「うむ……ときどき頼む」

「とーちゃんも、鳴子が押してやるからナ!」

 そう言ってお父さんに飛びつく鳴子ちゃんは――。

「え、はだか!? 鳴子、水着はどうしたの」

 驚くお父さんも何のその。

「こっちのが泳げるゾ! とーちゃんも脱いでほしいゾ!」

「青春だね……!」

 涼子ちゃんも感化されたみたい。そうしてみんなで、水着を脱いだり来たりしながら、プールを楽しみました♪


-


「プールの後はマッサージをいかが?」

 花香ちゃんに誘われて、お父さんと私がやってきたのは、薄暗くてムーディーな一室。素敵なアロマの香りが漂っているけれど、落ち着くというより、何だか……高ぶってきちゃうかも♡

「始めるわ。さあ、服を脱いで……」

 大体にはだけた豊満な胸へオイルを垂らす花香ちゃん。お父さんはその身に迫る何かを察したのか、後ずさりしてお部屋を出ようとしますが――。

「押さえて」

 花香ちゃんが指を鳴らして合図をすると、潜んでいた操ちゃんと美羽ちゃんに、両側から捕まえられ、広いベッドへ押し倒されます。

「パパぁ、娘から逃げるなんてヒドイっしょ♪ アタシたちとイイコトしよ♡ イタくないから平気だって。むしろすっごい気持ちいいって♡」

「娘から逃げることもできないなんて、だらしないパパ~♡ でも、これから、も~っとだらしなくなるんだから、いっかぁ♡ 素直にしてたら、ママたちにはナイショにしてあげるから♡」

 両耳から甘い声を注がれたお父さんは、アロマの効果もあってか、お顔が真っ赤。その服を、操ちゃんと美羽ちゃんは手慣れた様子で脱がします。そして、花香ちゃんは、お父さんの広い背中へオイルをすり込むと、自らも服を脱ぎ、そのゴージャスな肢体を惜しげもなく密着させ、全身を使ったマッサージを始めました……!

「恵理っちもする? 見てるだけなんてガマンできないっしょ☆」

「いつでも入っていいのよ? このパパったら、娘が相手なら誰が何しても喜ぶヘンタイさんなんだから。ほら、この声♡」

 ごくり。操ちゃんと美羽ちゃんの誘惑に思わず唾を飲み込みます。でも……そうよね。ここまできて、我慢なんてできるはずがないわ。お父さんには悪いけれど……私も、楽しもうかしら♡


 ピピーッ! 私がボタンに手をかけたそのとき、ホイッスルが鳴り響きました。わずかに外の空気が入り込み、甘い香りを和らげます。そうして乗り込んできたのは律ちゃんと悠ちゃん!

「目撃情報を元に捜索し、何とか間に合いました。これほどの風紀の乱れ、見過ごせません!」

「お家の平和は、わたしが守るんだもん☆ パパを悪に誘う人は、ハルカナフォーゼで成敗です!」

 花香ちゃんたちも引き下がりません。

「これはただのマッサージよ。お父さんの体にとって良いことをしているだけ。ここにいる私たちに、よこしまな気持ちなんて少しもないわ。それにママたちは、毎晩もっとすごいことをしているのよ?」

「そんなに気になるなら、ふたりともいっしょにすればいーじゃん。みんなでやったほうが楽しいし~☆」

「ふたりが来てくれて、パパだって喜んでるみたいよぉ? 触ってたら分かるもん~♡ いっしょに楽しむ娘は、多いほどいいんだって♡」

「……律姉さん、せんにゅうそうさは、どうでしょう。分かり合うことは大事です!」

「分かったわ。本当にただのマッサージか、私たちも体験します! その代わり、少しでも怪しければ、すぐにつかまえますからね!」

 そうして、七人の甘い声が、お部屋に響き渡りました♡


-


 マッサージを受けているうち、気持ちよく眠ってしまったお父さん。その体は、キャスター付きのベッドごと、より怪しげなお部屋へ運び込まれてしまいました――。私はそんなお父さんを追って、足を踏み入れます。沸騰する蛍光色の液体が満たされたフラスコや大釜等が置かれ、魔法陣が床一面に描かれたお部屋へと。お父さんを連れてきたのは、帳ちゃんと彼方ちゃん。ベッドで眠るお父さんを見下ろし、舌なめずりをしています。

「ぐふふ……今からパパを好き放題……! 手作りドリンクの感想を聞いたり、いっしょに新しい禁術の名前を考えたり、夢の時間よぉ……♪」

「いたずらもたくさん仕込んでやったわさ! 苦そうなお薬が甘かったり、呪文を逆さに読むと愛の告白だったり、驚く顔が目に浮かぶわさ~♪」

 盛り上がるふたりをよそに、お父さんは眠り続けます。お昼寝もしていたけれど、その後も色々あってお疲れなんですね!

「パパ、大丈夫わさ……? 眠りすぎじゃないわさ? このまま寝かせておいて平気わさ?」

「診断の魔術によると健康そのもの……。でも、念のために元気になるお薬も用意して、健康祈願の儀式をするわぁ……」

 彼方ちゃんと帳ちゃんが心配していると、お父さんは大きなあくびとともに目を覚ましました。安心したふたりは、お父さんにたくさん甘えながら、仲良くお話ししましたとさ♪

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