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第十話 お昼のお楽しみ

 ヒヒーン! ぶもお……ん。美しいおウマさんと可愛いブタさんが並んでお庭を歩きます。おウマさんにまたがるのは、凛とした護ちゃんと、その腰に手を回してしがみつくお父さん。ブタさんにまたがるのは、頼もしい紬ちゃんと、その小さな体を後ろから抱きしめる私。小鳥さんたちの歌声もにぎやかなお庭を巡る、お散歩タイムです♪ そんな私たちの行く手を横切るのは、カルガモの家族たち。可愛い♡

「おー、また増えたね。あの子たちとは、ぽーくんも仲よしだよ」

「お友だちが増えていくのは喜ばしいね。ほら父上、あちらの水場にはフラミンゴがいるよ!」

 動物さんたちの様子に詳しい紬ちゃんと護ちゃんが解説してくれます。

「父上、その……ここからは少し道に起伏があるから、ええと……もっと、強くしがみついて」

 見たところ道は平坦そうだけれど、護ちゃんはそう言います。もちろん、お父さんが断るわけもなく、護ちゃんをより強く抱きしめ、美しくなびき良いにおいのする髪へ顔を埋めました。護ちゃんはぞくぞくと身を震わせ、恍惚の表情を浮かべます♪ そんなふたりをじっと見つめる紬ちゃん。落ち着いた顔をしているけれど、ちょっぴりよだれが見えていますよ♪

「ねえ、紬ちゃん、護ちゃん。もう少し進んだら、お父さんと代わってもいい? おウマさんにも乗りたいし、私も護ちゃんの髪をかぎた~い♡」

「構わないけれど……私は少し汗をかいているよ」

「大丈夫よ。今、護ちゃんの髪に埋まってるお父さん、とっても気持ちよさそうだもの♡」

 護ちゃんは照れるけれど、お父さんはまだ護ちゃんの髪に夢中です♪

「交代まで、紬ちゃんを堪能しとこっと♪ やわらか~い!」

「恵理姉さんも……やわらかい♡」


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 お昼ごはんは、お庭にシートを広げてピクニック気分♪ ここでももちろん大人気のお父さんの隣に今いるのは、心ちゃんと幸ちゃん。

「じゃーん! サンドウィッチだよ! おいしそうでしょ~。ここにあるのは、幸ちゃんが作ったんだよ」

「ちょっと心、わざわざ言わないでよ!」

「でも、幸ちゃん、パパに食べてもらうんだ~ってずっと張り切ってたじゃない。ランチは山ほどあるんだから、言わなきゃ食べてもらえなかいかもだよ? かもだよ? かもかもだよだよ??」

「そうだけれど……何も知らないパパが偶然食べて、これおいしい! 誰が作ったの!? っていうのが一番良かったのに」

「それは、ごめんなさいだよ~! じゃあ、せめて、パパにあ~んって食べさせてあげて♪」

「うん……ほら、あなた、お口を開けなさいよ。はい、あーん……♡」

「むぐぐ……うん、隠し味のマスタードも効いていてすごくおいしい。ありがとう、幸」

 幸ちゃんの耳にくちびるを寄せてお礼を言うお父さんの姿は、まるで愛のささやき。さすが、娘の喜ばせ方を心得ていますね!

「お次は心のコロッケを食べて! ほかほかだよ……♡」

「はふはふ……うん、さくさくほくほくで、すごくおいしい。ありがとう、心」

 そうやってお父さんは、みんなの手作り料理を順番に味わいながら、その都度、愛のささやきのお返しをしていくのでした♪ きっと、おなかいっぱいですね♡


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 お昼をたらふく食べたお父さんは今、富海ちゃんのおひざに頭を乗せて、耳かきをしてもらっています。お父さんへの耳かきは、お家の中でも人気の高いアクティビティの一つだけれど、富海ちゃんは特に上手。私もときどきしてもらうけれど、いつもうっとりしちゃいます。理沙お母さん譲りの腕前ですね♪

「お父さん、お耳の中も素敵ですよ。富海に全部、よーく見せてくださいね……♡」

 お父さんも夢心地の様子です。そんなお父さんの胸をはだけさせて聴診器を当てるのは、命ちゃん。

「パパの体調はきわめて良好。でも、少し変ね。この状況でここまで落ち着いているというのは、想定外だわ。もっとドキドキしていてもいいはず」

 そう言うと命ちゃんは、いつも着ている白衣とのその下のシャツのボタンを外していきます。そして、耳かきされているお父さんに添い寝するように近付き、あらためて聴診器を当てました。

「さっきより……もっと安定している。完全なリラックス状態よ。私たち……そんなにドキドキしないのかしら」

 不安そうな命ちゃんに向けて、富海ちゃんが小声で言います。

「しー♪ お父さん、とっても気持ちよさそうに寝ているわ……♡」


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 おなかいっぱいの幸福感と耳かきの気持ちよさに、ぐっすりお昼寝してしまったお父さんが、目を覚ますと。目の前にあったのは、キラキラ輝く輝美ちゃんの笑顔でした♪ お父さんは、きょとんして、おめめをぱちくりさせています。起きたら突然、こんな美人に見つめられているのでは、驚くのも無理はないですね♪

「おはよう、父君。無防備な寝顔があまりに麗しく、つい時を忘れて見つめてしまった。眠り姫のナイトであろうとしたのだけれど、とても強い心が必要な務めなのだと実感したよ」

 輝美ちゃんはお父さんの髪を数度撫でると、添い寝の姿勢から起き上がります。そして、お父さんも起きようと、頭を動かすと――。

「ひゃんっ♡」

 可愛い声が漏れました♡ その声の主は、やわらかなふとももでお父さんの頭を受け止めていた、怜ちゃん。輝美ちゃんといっしょに、ずっと寝顔を見つめていたんですね。

「父さん、急に動くと声が出てしまうわ。まだまだゆっくり、こうしていていいのよ。子どものように、娘に甘えて――ひゅんっ♡」

 お父さんは怜ちゃんの期待に応えるため、もう少しだけ、膝枕を堪能することにしたようです。怜ちゃんの腰を抱くときに、どこかに手が当たってしまったようですけれど♡


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 すっかり目が覚めたお父さんといっしょに、鈴音ちゃんショップをのぞきに行くと。先客の優結ちゃんママが商品を吟味していました。

「これ、いいわね……!」

「せやろ! “パパと動物”シリーズは、スズもポテンシャルを感じてんねん。動物といっしょのおとん、めちゃくちゃ可愛いんよ。子イヌに子ネコ、子ブタを抱く姿から、ウシの乳しぼりに乗馬! さっきもいい写真撮れたんやで~♪」

「ママ、これになりたい」

「え、動物にってこと!? さっすが優結ちゃんママ、ええこと言うなぁ。実は、そんな声をよう聞くねん。“動物さんの気持ちになってパパと交流!”っていうのも、ビジネスチャンスかもしれんなぁ」

 会話を聞いたお父さんが、何かを察してそっとその場を去ろうとします。が、時すでに遅し♪

「おとん、ええところに! 試したいことあんねん!」

「パパ、この写真の動物さんたちと同じこと、優結たちにしてみて!」

 四つんばいになった優結ちゃんママと鈴音ちゃんが、おしりをふりふり、お父さんにじゃれつきます♪ お父さんは観念して、二匹の……いえ、私も入れて三匹のペットを、たっぷり可愛がってくれました♡


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 優結ちゃんママと鈴音ちゃんから解放されたお父さんですが、今度は小さな子たちにつかまって、お庭で鬼ごっこをがんばっています♪ お父さんはずっと鬼で、逃げ回るみんなをつかまえるんですが、つかまった子たちはすぐにまた逃げ回るので、お父さんはいつまでもみんなを追いかけ続けなければならないんです! お父さんに追いかけられたいという娘たちの気持ちに応えた素晴らしい遊びですが、お父さんは大変そうですね♪

 そんな微笑ましい光景を見ていると。少し離れたガーデンチェアにひとり座り、鬼ごっこをじっと眺めている叶美ちゃんを見つけました。おとなしい子だから、仲間に入りそびれて機会をうかがっているのかな、とも思いましたが――どうやら違うみたい。その視線はずっとお父さんを追っています。分かりますよ、叶美ちゃん♪ お父さんといっしょに遊ぶだけじゃなくて、あえて距離をおいて眺める良さもありますよね♪

 あらあら、お父さんに夢中になるあまり、足が開いてしまっています。スカートの間から、ピンク地にハート柄の可愛いパンツが丸見えです! お家の中だからいいけれど、少しはしたないかも。声をかけたほうがいいかしら、と思っていると。その足がさっと閉じられました。私がつい見入ってしまっていたことに気付かれたかな……と思ったけれど、お顔を見るとそうでもなさそう。お父さんを見つめたままです。そして、また足を開いて、しばらくすると閉じて……を繰り返しています。そのお顔は、耳まで真っ赤。

 これはもしや……お父さんが気付くかどうか、試している!? 私も幼い頃にときどきしていたチャレンジ。わざとお父さんに向けてパンツを見せて、こちらに気付くかどうか試すんです。今思えば、お父さんが幼い娘のパンツなんて気にするはずがないけれど。あのときはドキドキしたなぁ♪ それに、たまには、お父さんがこちらを意識しているような……目が合ったような気がすることもあって、嬉しかったこともよく覚えています。叶美ちゃん、お父さんに振り向いてもらえるといいね♡

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