港町イコル
少々?トラブルがありましたが無事イコルにつきました。存外の歓迎ぶりにコウ達は海賊たちに感謝しています。
多少のトラブルがあったが、丁度正午ぐらいに無事にイコルの港へと着く。船はここで1泊し補給品を積み込むそうだ。ちなみに涙ぐんでお礼を言われた上に、客室料は無料、それ+3金貨が報酬として貰えた。依頼は緊急指名依頼ということで事後処理完了扱いにしてくれるとの事だった。更にその上、シンバル馬の売買に詳しい人の紹介状までもらった。お金はともかく、紹介状は大きい。海賊たちには悪いが感謝しなければなるまい。
イコルは貿易の中継地として、またシンバル馬の輸出地として栄えた港町だった。特にここ10年北方諸国との海上貿易が増えたことで、益々活気づいていた。ジクスよりも大分大きい街である。
あちこちで、増築工事の音が聞こえる。街の中を歩くだけで活気のある街だというのがすぐにわかる。ちなみに宿は船長が取ってくれるとの事だった。この港でも最高級の宿だが、料金はいらないそうだ。
至れり尽くせりでちょっと悪いような気がするが、モキドス曰く、これぐらい当然のことで、もし断ると、冒険者全体の依頼料が安くなってしまう可能性があるので止めてください、と言われた。
軽く昼食をとった後、紹介状を書いてもらった、モンサナー商会という所へ向かう。モンサナー商会はイコルでも1、2を競う規模の商会で、シンバル馬の取引に関しては、文句なしにイコルで一番だそうだ。
商会の前に着くと、忙しそうに人が出入りしている。それなりの地位にいると思われる人物に紹介状を見せる。
最初は怪訝そうな顔をしていたが、紹介状の名前を見るや、直ぐに丁寧な対応になり、応接室へと案内された。案内されてすぐにお茶が出される。紅茶でなくて緑茶だった。あまり緑茶には詳しくはないが、香りからして高級品だとわかる。
しばらくすると、おそらくこの商会のトップであろう、立派な服を着た40前後の恰幅のいい男性が部屋に入ってきた。
「お初にお目にかかります。私はこのモンサナー商会の会頭を務める。リロス・モンサナーと申します。なんでもシンバル馬を購入しに来られたとか。出来るだけ協力をさせていただきます」
会頭と言えば、社長の事だ。いきなりトップが挨拶に来るとは、あの商船の船長も結構な人物だったようだ。それとも所有している商会が大きかったのだろうか。まあ、どちらでも良いことだが。
「ええ、自分たちは冒険者をしているものですが、少々装備が特殊でして、普通の馬には乗れないのです。それで調べてみたところシンバル馬という馬に行きつきまして。こうしてここまでやってきたのです」
コウは自分たちの事情を説明する。
「ほう。失礼ですが、シンバル馬はかなりのお値段がします。予算としてはいかほどをお考えですか?」
まあ、商人としては当たり前の質問である。
「まあ、目安としてですが、1頭あたり3白金貨を考えてます。出来れば4頭、最低でも2頭は購入したいと考えてます。
コウの提示した金額が予想外だったのか、会頭が軽く息をのんだのが分かる。
「ご存じかとは思いますが、基本的にそのクラスの馬となると、国が一括で買い上げています。もう少し下のランクでしたら私共でも用意できるのですが……。どうしてもと言われるのであれば、国と契約していない生産者に直接掛け合うしかありません。いかがされますか?」
会頭は自分の所の馬を売りたいのであろうが、どうせなら最高とは言わないまでも、それに近い馬を買いたい。金なら十分あるのだから。
「いえ、ランクを落とす気はありません。最初からそのつもりでここまで来ましたので」
コウは、はっきりとそう伝える。
「そうですかそれは残念です。それでしたら、私の知っている、国と契約していない生産者に紹介状を書きましょう。私の商会も時々そこから買いますが、大変素晴らしい馬を育てている優秀な方ですよ。勿論仲介料とかは頂きませんよ。後、街道にヒポグリフが出没しているそうですが、コウさん達なら特に問題にはならないでしょう」
「それはこちらとして助かりますが、そちらの商会には利益にならないのでは?」
コウは疑問に思って聞く。ただより高い物はないという言葉がある。人がよさそうに見えても、商会の会頭ともあろうものが、無償でどこの馬の骨ともわからない冒険者に便宜を図るとは思えなかった。
「いえ、ご存じないかもしれませんが、利益ならすでに得ています。あなた方が乗船されていた船には、私共の商会の品が多く載せられてましてね。それがあなた方のおかげで無事に着いたとあれば、紹介状を書くことなどお礼のうちにも入らないぐらいですよ」
そう言って、会頭はにこやかにほほ笑む。なるほど、そういう事情なら納得できる。
「ただ、その方は基本的に遊牧をされてましてね。直ぐに会えるかどうかは分かりません。ただ、大体月に1度、生活必需品を買いに草原の中の町に寄られます。後は馬のセリがある時に寄られるのですが、もう今年は終わってしまいましたからね。運が悪ければ1ヶ月その街で過ごすか、若しくは放牧と言ってもある程度の範囲は決まっているので探してみるかですが、それでよろしいですか?」
「はい、大丈夫です。それでは、紹介状をよろしくお願いします」
コウは悩むことなく、お願いする。最大で1ヶ月なら大したことはない。特に何か用事があるわけでもないし。ただ、冒険者ギルドには寄って、予定を言う必要があるだろう。
「それではしばらくお待ちください」
そう言って、会頭は部屋から出ていった。会頭が出ていくとお茶のお代わりと茶菓子が運ばれてくる。下にも置かない対応だ。こう言ってはなんだが、こういう対応をされると元の世界の仕事中を思い出してしまい、逆に緊張という程でもないが、少し気が張って妙な気分になってしまう。
「コウはこういう扱いに慣れているんじゃないのか?」
なんとなく、自分が居心地悪くしているのを感じたのかサラが聞いてくる。
「まあ、慣れてはいるが、逆に仕事を思い出す……」
なるほどという風にサラは納得する。
しばらくすると、紹介状をもって会頭が部屋に入ってきた。
「それではこちらが紹介状です。立ち寄る町はソクス、生産者の名前はカント、と言います、結構有名な方ですよ」
コウは丁寧にお礼を言って紹介状をもらい、商会を後にした。
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