リューミナ王国大闘技大会トーナメント戦
いよいよトーナメント戦です。
お昼を挟んでトーナメント戦が行われる。当然だが1回戦の16試合が一番多い。マリーにはリングの修復能力の調査を行うことを思考通信で伝えておく。
1回戦は、順調にオッズの低い、つまり予選で強さを示したものが勝ち上がっていく。竜巻で吹き飛ばす、メガサ-ベルタイガーの体当たりで跳ね飛ばす、ゴーレムで投げ飛ばす辺りは見せ場も何もないが、賭けた人が多いためか、それなりに観客は盛り上がる。
マリーの番になる。本当ならマリーにすべてを任せておいてもよかったのだが、リングを調査できる機会は少ないため、こちらの指示に従って戦ってもらうことにする。
(今回はどのように戦えばよろしいんですの)
マリーから思考通信が入る。
(出来るだけ、リングに当たりそうな相手の攻撃は避け、こちらの攻撃もリングに当てるように。先ずはリングの強度を確かめる。それ以外は基本的に端に追い詰められた振りをし、最後に剣か盾でリングから叩き落とせばいい)
(了解ですわ)
コウの命令に承諾の返事が来る。マリーは命令通り、リングに当たるような上段の攻撃は避け、反撃を相手に当てないように攻撃する。攻撃はデータをとるために徐々に強くしていく。何か訳知り顔な人からは、よくあの鎧で動けるもんだ、とか。両者なかなかやるな、とかいう声も聞こえていたが、段々と罵声が聞こえてくるようになる。そろそろ頃合いだろう。
マリーに勝負を決めるように指示を出す。
マリーはリングの端まで追い詰められた振りをし、相手の渾身の横ぶりを盾で体ごと跳ね飛ばし、リングの外へと相手を落とした。少し粘りすぎたせいか、客の反応は今一だが、別に主催者でもなんでもないので気にしない。
(次は、対衝撃テストだ。竜巻から逃げ回りながら、徐々に重力制御を落としていくように)
2回戦目、コウの指示に従い、マリーは相手の竜巻を避けつつ、徐々に重力制御を落としていく。リングにかかる荷重が50トンを超えたあたりで、リングの所々が欠け始める。
「ほほほっ。どこまで逃げるのかしら? この竜巻はリング全体に拡大することが可能なのよ」
相手の魔法使いの女性が勝ち誇ったセリフを言う。それ負けフラグだから、と心の中でコウは突っ込む。
(竜巻を広げた瞬間、内側に入り、隙をついた感じで相手を場外に跳ね飛ばすように)
「ほほほっ、これで終わりよ」
自信満々に魔法使いの女性は竜巻の範囲を広げる、恐らく威力も強くしたのだろう、だが重量のあるマリーを吹き飛ばせるはずもなく、難なく竜巻を突破され、後は盾の一撃を食らいリングの外へと飛ばされた。
オッズ最下位のマリーが、オッズ上位のものを倒したのである。番狂わせに場内がどよめく。それでも拍手が多い当たり、まだオッズの上位3強と当たってないからだろう。
(次は修復可能範囲を確認する。丁度相手は六角棒の男だ。1回戦の時と同じようにあちこちに傷をつけるように)
3回戦は激しい打ち合いになる。マリーが六角棒を受け流すと、その勢いのまま当たったリングの床は砕け、またマリーの攻撃も受け流されると、リングを砕く。しかし、男の持つ六角棒の方が打ち合いに耐え切れず、ぽっきりと折れてしまった。
男はおれた六角棒を呆然と見、降参する。どよめき、怒声又は称賛の声が大きく上がる。
(データは一通り取り終えた。修復を阻害したポイントを送る。その部分に怪しまれないように剣を当ててくれ)
いよいよ準決勝。相手はメガサーベルタイガーを操る男だ。試合合図の開始と同時に巨体に似合わないスピードで突進してくる。予選もだが、トーナメント戦でもそれで一方的に相手を撃破していた。今回も同じか、と思った瞬間僅かにマリーが突進を避けている。マリーが反撃をするが、それをメガサーベルタイガーはうまく避ける。見かけに似合わぬスピードの実力の伯仲した戦い、と観客には見えていた。
(ご苦労。修復阻害ポイントへの再攻撃のデータも取れた。次の試合は好きに戦ってよいから、まあ今回ぐらいは接戦を演じてくれ)
(了解ですわ)
マリーは、メガサ-ベルタイガーの攻撃を何度かよけると、リングの端に巧みにおびき寄せ、ここぞというタイミングで下に潜り込み、相手の突進力も利用して、すくい上げリングの外へと放り出す。
「「「おおー!」」」
高度な技に、そして予想外の結果に観客がどよめく。
(ふうー。慣れない戦いばかりでいささか疲れてしまいましたわ)
マリーが愚痴る。
(そう言うな、おかげで貴重なデータが取れた。感謝している)
偶然とはいえ、今回の大会にマリーが参加してくれてよかった。こんな今では寂れてしまった魔法など、今回のようなことが無かったら、優先順位が低いデータになっていたに違いない。
「さてこの大会もいよいよあと一試合を残すのみ。1人目は巨大なゴーレムを無詠唱で召喚し、その圧倒的な巨大さ、パワーをもって勝ち進んできた男、モキドス! 更にモキドス氏は衝撃波魔法も無詠唱で唱える事が出来、例えゴーレムの攻撃をよけたとしても氏の衝撃波魔法の餌食になるだけ。攻防一体、まさに今大会において人気ナンバーワンにふさわしいと言えましょう」
司会者の紹介に多くの観客が歓声を上げる。
「さてこれに対するは、なんとびっくりの最下位人気、可憐なその身にまとうは重装甲。時には軽やかに、時には技でもって敵を翻弄し、本命を次々に下し勝ち進んできた、鋼鉄の乙女、マリー! 彼女のこの小さな体のどこにそんな力が秘められていたのか、この会場の多くの皆様だけではなく、正直私も見抜けませんでした。またもや奇跡が起こるのか、はたまた圧倒的なパワーが勝利するのか。皆さん拍手をもって両選手を迎えましょう」
司会者の合図とともに、マリーとモキドスと呼ばれた男がリングの中央付近へと進む。
(マリー、リングに厚めのコーティングを張っておいた。マリーの全力攻撃は無理だが、重力制御装置を切って、なおかつ出力の30%までの攻撃なら問題はないはずだ)
(感謝いたしますわ)
コウはマリーが獰猛に微笑んで答えたように見えた。
試合開始の合図とともに、モキドスが今までいた場所に巨大なゴリラ型のゴーレムが現れる。モキドスは相変わらずその肩の上だ。ゴーレムの拳が振るわれる。ひときわ大きく作られたその拳は、マリーの身長ほどもある。今までの必勝のパターン。マリーは盾を構え、拳を正面から受け止める。
観客の誰もがマリーの吹き飛ぶ姿を思い浮かべた。だが、盾に拳があたり、粉々に砕けたのはゴーレムの拳の方だった。拳どころかひじのあたりまで砕け散ってる。
「な、なにをした!」
なんとか、肩から落ちずに済んだモキドスが驚愕の表情を浮かべている。ゴーレムの拳の重さなどせいぜい1トンあるかないか、腕全体でも10トンもいかないだろう。対するマリーの盾の重量は約200トン、そしてそれを高速で動かすパワー、司会者の言う通り圧倒的な質量とパワーでもっての正面からの蹂躙である。生半可な事では覆す事が出来ない、純然たる質量の壁がそこにあった。
ゴーレムの動きが止まっている間に、マリーはゴーレムの足元まで行くと、バスタードソードで両足をすっぱりと切り落とす。ゴーレムの巨大な体がマリーの上に落ちてくる。マリーが押しつぶされると観客が思った瞬間、胴体部分が爆発を起こしたように吹き飛んでいく。そこには頭の上に分厚い鋼鉄の扉かと思われるような盾を、高々と掲げたマリーの姿があった。単に盾で腹を殴っただけである。ゴーレムの頭と肩の部分は形が残っていたが、モキドスと一緒に場外まで吹き飛ばされている。
そう、マリーの本体は強行偵察艦マリーローズ、敵の攻撃を強固な装甲で耐え抜き、時には敵を強引に正面から突破し、なんとしても味方に情報を届ける事を目的として作られた軍用艦。これこそが彼女本来の戦い方なのだ。
10万の人間がいるにもかかわらず、闘技場を静寂が支配する。日が傾いてきている中、海鳥の声がよく聞こえる。
「し、勝者マリー!、マリー選手が勝利しました!」
司会者が勝者を告げると、今度は耳が割れんばかりの歓声が競技場を押し包んだ。
面白いとか続きを読みたいと思われたらで構いませんので、評価やブックマークの登録をお願いします。
現金と思われるかもしれませんが、評価が上がるとやはりモチベーションが上がります。
よろしくお願いいたします。




