初の依頼完了報告
初の依頼完了報告です。コウ達の想像以上の強さにみなびっくりです。
ジクスを出発して6日目の正午過ぎ、6回鐘が鳴る頃、コウ達“幸運の羽”は再びジクスへと戻ってきた。本来なら昨日の夕方に着くことも可能だったが、その時間は門もギルドも混雑するため避けたのだ。
冒険者ギルドに入り、受付へと進む。流石にこの時間は受付には2人いるだけだ。ただ、受付にレアナはいなかった。
「コウさん、レアナは今日は休みですよ。依頼が完了されたのでしたら私、ルルが承ります」
そう言って、ルルという女性が綺麗なお辞儀をすると、依頼書が集められたファイルの中から“幸運の羽”が受けた依頼を取り出す。
「こちらの依頼完了でお間違えないですか?」
そう言って、ルルが依頼書をカウンターに広げる。
「ああ、間違いないよ。ただ、予想したよりオーガの数が多かった。それとオーガと呼ぶべきかどうか分からない個体もいたんだが……」
「では、全部の討伐は無理だったんですね。それでは再度ギルドマスターに報告して、依頼を貼り直す必要がありますね。情報を提供していただいてもいですか」
コウの報告に、少し慌てた様子で、ルルが言う。
「いや、すべて討伐したよ」
あっさりと、そうコウが答えると、ルルがぽかんとしてコウを見ている。
「失礼しました、では討伐部位を交換所の方に持っていってください。情報の修正をしなければなりませんので、私もついていきます」
「いや、カウンターにおける大きさじゃないんだ。全部持ってきたからね」
「えっ?」
ルルが頭にはてなマークを浮かべている。
「聞いていないようだけど、自分たちは収納魔法が使えるんだ。だから、死体を全部持ってきた」
「そうだったんですか。分かりました。では交換所の奥に行きますね」
そう言ってルルは歩き出す。冒険者の情報というのは秘匿扱いで、ギルド職員と言えど幹部クラスでないと共有されない。もちろん、冒険者自身から話を聞いたり、何らかの出来事が起きて知ったりすることはあるが、受付嬢の中で共有されることはない。これは冒険者の情報は秘匿するものという決まりもあるが、有望な冒険者に対する競争率を下げるためでもあった。
ルルは交換所の職員の一人に声をかけ、以前、ワイバーンの死体を出したのと同じ所に案内する。コウはオーガの死体5体、大型オーガ(仮称)の死体1体、そして盗賊の生首がはいった箱を亜空間から出す。
「レッドオーガ……」
交換所の職員が、大型オーガ(仮称)の方を見て目を見開く。確かに赤い体毛だが、随分と安直な名前だなあ、とコウは思う。他に赤いオーガはいないんだろうか。
「珍しいモンスターなんですかね」
とコウが質問する。
「わしも、見たのはこれで3度目だ。しかも、首だけ落とされた死体なんぞ初めてじゃ。レッドオーガはBランクモンスターの中でも上位に位置する。生半可な攻撃など物ともせず、ワイバーンを捕まえて食べることもある、と言われているぐらいじゃ」
そう言って職員はコウ達を見つめる。
「いや、余計な詮索はせんでおこう。わしは長生きするつもりなんでな」
そう言って、雑念を振り払うように首を振ると、盗賊の生首が入った箱を開ける。
「残念ながら、こっちは管轄外じゃ。盗賊の首見分と褒賞金を貰うのは門番のところでやってくれ。まあ、ギルド経由で出した依頼なら話は別じゃがのう」
職員は、そう言って盗賊の首を一瞥すると、再びレッドオーガの死体に見入っていた。ちなみに積んであるオーガの死体にはまるで興味がないようである。
「結果は明日の夕方まで待ってくれんか、それと今回も解体はギルドでやっていいのかね」
コウは問題ないと頷く。そして盗賊の首が入っていた箱を亜空間へとしまう。
ルルが再び受付へと案内する。
「情報が変わりましたので、討伐報酬も変更になります。明日の午前中までには処理しておきます。それで良いですか」
コウは再び頷く。ふとオーガのところにあった遺留品のことを思い出してルルに尋ねる。
「遺留品は基本的に発見者のものです。ただ、本来は大した価値がなくとも、遺族の方にとっては大事なものもあるので、預かってそういう探索依頼が出ているか、確認することもできますよ。手数料がかかりますけど」
手数料は1つにつき20銅貨だったので、手数料を払い、遺留品を渡す。
ギルドに用がなくなったので、門番の詰め所の方に向かった。
ギルドから詰め所はすぐである。用件を伝えると、中に案内された。詰め所の修理はもう終わってる。収納魔法持ちの設定を必要以上に隠す気はないので、武器は街につく前から亜空間に収納している。門番も武器については何も触れなかった。
案内された先にはジェイクがいた。最近門の所にいなかったので久し振りの再会である。最も隊長が、ずっと門の前にいるのもおかしな話なので、それが当たり前なのだが。
「盗賊を討伐したんだってな。出してみな」
ジェイクはコウ達が収納魔法持ちなのを知っているので、そう告げる。しかしここで出すには、首だけとはいえ30人分の入った箱は大きすぎた。
「ここで出すには、ちょっと部屋が狭いようです」
「ここに入らねえって……。お前らどんだけ殺したんだよ」
ジェイクが呆れて言う。確かにここは執務室なのでそこまで広いというわけではない。が、5、6人の首なら問題なく置けるスペースがあった。
仕方なく会議室の方にジェイクは案内する。会議室に入るとコウは盗賊の生首が入った箱を出す。箱の中を見たジェイクが絶句する。
「こいつは……。間違いねえ“闇夜の狼”の一団じゃねえか。もしかして全滅させたのか……」
「少なくとも、一晩アジトにいましたけど、帰ってきた者はいませんでしたね」
コウは正直に答える。実際遠出をしている者がいる可能性も0ではない。
「まあ、人数的にいやあ、残りがいたとしても、復活は無理だろうな。頭目のバゴダの首もあるしな……。しかし、コツらの討伐は1年以上、常時依頼としてギルドに貼り続けてきた依頼だぜ。用心深くて中々倒せなかった、このあたり最大の盗賊団だったんだがな……」
ジェイクが呆然として呟く。
「それにしても、常時依頼を出していたから、わざわざお前たちが来なくてもよかったんだぜ。その辺の手続きの手数料でギルドは稼いでんだからよ。それとも、お前達、ギルドの職員がそういうことを忘れるぐらいの獲物でも仕留めたのか?」
「レッドオーガを仕留めたんですが、確かに職員の人が見入っていましたね」
「はあっ!?」
ジェイクはコウの返事に思わず大声を出す。ジェイクとしては軽い冗談を言ったつもりだった。確かにレッドオーガの死体があれば、盗賊の首などおざなりにしか見ないだろう。
ジェイクはしばらく呆然としていたが、気を取り直して言う。
「報酬はちゃんと払う。常時依頼を出していたから、明日ギルドに行けば貰えるはずだ。それと少なくとも俺たちはお前達の事を詮索したりしねえ。だからこの街じゃあ、大人しくしていてくれ……」
心なしかジェイクの目が怯えているようにコウには思える。心配しなくとも、法はちゃんと守るつもりだ。ジェイクに心配しないようコウは伝えると詰め所を出ていった。
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また、作風が異なりますが、他にも書いています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです