転職活動(クエストテスト1-3)
初のクエスト無事達成できるでしょうか?まあ、結果は皆さんの予想通りだと思いますが、経過が予想外(もちろん面白い方での)でしたらちょっと嬉しいですね。
次の日の昼を、多少過ぎたぐらいに魔の森の端にたどり着く。日暮れまではまだ鐘3つ分の間隔はあるだろう。本来ならジクスから丸々2日の距離なので、昼ちょっと前にジクスを出発したとしては早い到着だった。
事前の情報通り、川の左右で風景が全く違う。西の方は明るい緑の所謂普通の人が思う森という感じだが、東の方はなぜか木々がねじ曲がっており、有り得ないほど木々が密集していた。そのためか全体が薄暗く不気味な感じがした。
探知すると少し離れたところにトティラ草の反応が1つあるが、わざわざ無理をしてまで取りに行く必要は感じなかったため、森から少し離れた場所で野営の準備をする。
森のすぐ近くは、モンスターの奇襲攻撃を受ける恐れがあるため避けた方が良い、とザッツが教えてくれたため、忠告に従い少し離れた場所で野営をした。
何事もなく2日目の夜が明け、探索を開始する。と言っても目星はもうついているのであるが……。魔の森に入ると危険生物の反応が格段に増える。もうレーダーが真っ赤だ。面倒くさいので、低レベルをマリー、高レベルをサラに、総合分析をユキに振り分けた。
正直、ヒル、やぶ蚊、毒蜘蛛や蜂といったものにいちいち関わっていられない。そのような生物は自分たちに傷をつけられないはずだが、念のためマリーの両肩に装備されたパルスレーザーで1m以内に近寄った段階で跡形もなく消し去っていく。
森に入ってから1つトティラ草を見つけ、川沿いの2個目に向かう。どちらかというとトティラ草より近くの川にいる魚が目当てだ。マヤメが少なくとも10匹以上は確認できる。ちなみにトティラ草は茎も素材になるそうだ、非常に頑丈で治癒系の魔法を増幅する作用があるためそれなりの値段で買い取ってくれるらしい。1mを超えると本体より高く買い取られるそうだ。
川を上っていくと、正午過ぎぐらいに目的の淵に出る。探知をするとマヤメが18匹、それよりも高級なマユと言われる魚が7匹いる。淵の水深は深いところで2m弱といったところである。計画通りマリーの盾を水に沈める、自分とユキは直径1m程の棒の付いた網をもって待ち構える。サラが大剣で盾を叩く。暫くするとぷかぷかと魚が浮かび上がる。一匹も逃すまいと、自分とユキは一生懸命それを網ですくっていった。
衝撃で浮かび上がった魚は50匹を超えていた。マヤメ18匹とマユ7匹は、衝撃で死んでしまったようだ。他にも死んでしまった小さめの魚が30匹ほどいた。ザックに聞いたら食べられないことはないが、きちんと料理しないとあまり美味しくはないらしい。天然魚を捨てるのはもったいないので、亜空間へと仕舞う。街に帰ってプロの料理人に料理してもらうか、最悪ユキたちにデータを基に調理してもらう。
1mを超える魚も5匹いた。これは気絶しているだけだったので、長針で〆ていく、これも焼いただけでは余り美味しくないが、調理次第では非常に美味しい魚らしい。
最後に1匹魚の体に鰐の頭がついたようなモンスターがいた。体長は約3mで、ワニミラというEランクモンスターらしい。身も美味しいが、革も素材として価値があるそうだ。気絶しているだけなので、脳に針を突き刺して殺した後、亜空間へと収納する。
2つ目のトティラ草を採った後、早めに作業を切り上げ、天然木を集め天然石で作った暖炉でマヤメとマユに塩を振って炙る。
美味い、それだけしかコウの頭には浮かばなかった。頭から丸ごと食べていく。“嵐の中の輝き”の面々は内臓を取り出し、下処理をしていたが、そんなことをしなくても十分美味い。塩が合成の塩化ナトリウム100%ものなのが残念だ。天然のミネラル分を含んだ天日干しの塩だともっと旨いだろう。
“嵐の中の輝き”の忠告に従い、最も条件が良い所に野営地を築く。地面を解析すると何度かこの場所で野営をしていた跡が見つかった。周囲に大規模な戦闘形跡も無い。問題なく3日目が過ぎていった。
4日目、2つのトティラ草を午前中に採取する。ノルマまであと一つだ。残り一つは大物、正確に言えば2mを超える高さのトティラ草が、生えている場所が2つある。ただ、Bランクに格付けされるサイクロプスというモンスターの生息域であった。
(いかがされますか?)
ユキが思考通信で連絡してくる。僅かに迷ったが、テスト合格が最優先である。コウが決めたマイルールには反するが、接敵の可能性のある全ての個体は排除、という命令を下す。密かに各自の小型独立ユニットがサイクロプスを攻撃する。2つのトティラ草を採る間に2体のサイクロプスを倒していた。これ以上怪しまれたくはないので、死体はその場で母艦へ転送し、解析した後適当に誰かの亜空間ボックスへと入れておく事にした。
無事に5つ以上のトティラ草を採取した。今日中に森の外に出るには奥に進みすぎていたので、外に出る途中で一泊しなければいけなかった。念の為3人に戦闘待機指示していたのだが、幸運な事に出番は無かった。
次の日の夕食時、ザッツが話しかけてきた。
「よう。この依頼も明日街に着いたら完了か。まあ、何が起こるかわからんから、最後まで気を抜かないのが重要だけどな。それにしても中々手際が良いじゃねえか」
「運が良かっただけですよ」
「運も実力のうちってな。特に奥のトティラ草をとった時に、モンスターに出会わなかったのが良かった。実はあそこの辺りはサイクロプスっていう巨人の住処でな。出会ってたら命が危なかった。少なくとも俺たちじゃあな。
ミストが出会わないかピリピリしてたぜ。お前たちがあんまりずかずかと森の奥に入っていくんで、止めそこなってしまったが、本当は途中で止めるべきだった。何も起きなかったとはいえ、俺の判断ミスだ。すまなかった」
そう言って、ザッツは頭を下げる。
「いえ、気にしないでください。何も起きなかったのですから」
「そう言ってもらえるとありがたい。じゃあ、あと1日よろしく頼むな」
分かって入っていったのだから、謝ってもらうと逆に申し訳ない気持ちになる。夕食を終えて寝転がると空に満天の星が見えた。宿の屋根から見た星空も綺麗だったが、周りに明かりのない草原で見る星空は数段上だった。星が降ってきそうな、という感覚を初めて味わった。
次の日は、モンスターに出会うことなく8回の鐘が鳴る前にジクスの街に着いた。街に入るとそのまま冒険者ギルドに行き、採取したトティラ草を受付で依頼書と一緒に渡す。後で依頼した人物が受け取って評価を書けば終了だそうだ。今回は報酬を貰えないので評価以外を気にする必要はなかった。
素材買取所にトティラ草の茎と依頼以外の1個、それに倒したモンスターの買取を依頼する。カウンターに載せられる量ではなかったので、奥にある倉庫のような場所で亜空間から取り出す。魚も取り出したのだが、食料にしかならない魚は買い取ってもらえないそうだ。それは動物も同じとのことだった。通常の食材を扱う競り市のような場所があり、そこで換金するのが良いらしい。店に直接売りに行くという手段もあるが、交渉が必要な事と、店は見知らぬ冒険者から買うのを控える傾向があることからあまりお勧めではないらしい。
ホーンラビットが1匹2銀貨、ワニミラが3銀貨、トティラ草が全部で18銀貨、そこから解体費用が1銀貨差し引かれる。丁度銀貨30枚になった。
“嵐の中の輝き”に渡しに行く。
「いや、そんなに受け取れねえよ」
とザックが報酬を辞退する。しかし、決まりだからというと、半分だけ受け取った。換金できなかった魚類はもらってもしょうがないから、と受け取らなかった。
どうせ腐るものではないので魚は無理に換金せずにそのまま亜空間に入れておくことにした。美味しい料理屋を見つけたらそこで調理してもらうのも良いかもしれない。
報酬を渡すと、コウ達は宿へと戻っていった。
コウ達が去った後、ギルドマスターのオーロラに“嵐の中の輝き”が呼ばれ、ギルドの応接室へと入っていった。
後書き
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現金と思われるかもしれませんが、評価が上がるとやはりモチベーションが上がります。
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また、作風が異なりますが、他にも書いています。良ければそちらも読んでいただけたら嬉しいです