リューミナ王国VSエスサミネ王国
こういう戦闘もあると言う事で。
コウ達は無事に2週間フルーツやキノコ、薬草、などの採取を終え、エルフの国、ノイラ王国を旅立った。日記はデウセア女王に預けた。もしかしたら自分たちが倒したレッドドラゴンと2千年前に国を滅ぼしたレッドドラゴンとは違う可能性もある。その時あの日記の情報は役に立つはずだ。多分……。
木漏れ日の中、森の中をコウ達は進んでいく。
「これから東に向かうのでしょう。何か当てはありますの?」
「本当は東方諸国を巡るつもりだったんだが、もう暫くはごたごたしているだろうからな。リューミナ王国まで北上して、元の東方諸国を回る予定だな。ルカーナ王国の方は以前見た時から何か動きはあったかね?」
コウはマリーの質問にそう答えて、ユキに情勢を尋ねる。
「特に目立った様子は無いようです。エスサミネ王国の拡大も止まってますね」
「流石に地盤固めをしないと厳しいだろうな」
元々が辺境伯だった国だ。一時的ならともかく恒久的にこのままの版図を維持できるのか、今度は軍事的にではなく政治的な手腕が問われる局面になるだろう。早く落ち着いてもらって、南端に行けるようになったらいいのにと思う。
エスサミネ王国とリューミナ王国の国境付近で両軍が睨み合っていた。エスサミネ王国はヴィレッツァ王国を降した騎兵5千、対するリューミナ王国は歩兵、通常の弓兵を含め3万、騎兵は100に満たない。ただし、エスサミネ王国軍が到着したときには、既に騎兵の突撃を防ぐ防御柵が構築されていた。しかも3段にわたって。にらみ合ってる間にも4段目が構築されている。毎日のようにおびただしい量の、既に加工済みの木材が補給されてくる。
「厄介ですなあ。このままだと、騎兵の突撃ができません。しかし、あれほど強固に柵を構築するとは。こちらに攻め込む気がないんでしょうか?」
「攻め込む気がないんだろうな。あそこを防衛ラインとしているのだ。しかし、リューミナ王国の兵站能力を甘く見ていたな。あそこまで木材をふんだんに運び込めるのだ、食料切れなど、待っても無駄だろう。こちらの食糧の方が先に尽きるだろうな」
警備隊長の言葉にクレシナはそう答える。
「補給路の遮断は無理でしたか」
「そうだな。既に、騎兵を補給路上の降った諸侯に向かわせていたようだ。それに、あの馬鹿げた補給部隊の規模を見れば、よほどのものか、馬鹿でもない限り、反抗する気力など失せるだろう」
「益々、厄介な相手ですなあ。して、クレシナ様は反抗する気力がなくなったので?」
「私は馬鹿だからな。戦いもせずに諦めることはしないさ。だが、勝てぬ戦で兵を死なせるほど馬鹿なわけではない。今回は素直に負けを認め撤退しよう。余り長引くとこちらの国内で反乱する者が出てくる可能性がある。敵も我々と同じように離反工作を行なっているという情報が入った」
クレシナはそう言って、リューミナ王国軍の方を睨む。
「全く、国王が狸なら、王子は狐か。忌々しいことだ」
次の日エスサミネ王国軍はリューミナ王国軍の前から姿を消した。
一方リューミナ王国軍では第2陸将のバロスが、遠見の鏡を使いザゼハアンにいるフェロー王子と連絡を取っていた。
「エスサミネ王国軍は撤退いたしました。如何いたしましょう。追撃も可能ですが」
「バロス将軍。それは本気で言っているのかい? それとも私を試しているのかい?」
フェロー王子はいつものように飄々とした、人によってはおどけているとも取れる口調で尋ねる。
「まさか。確認したにすぎません」
「それは良かった。父上にバロス将軍の更迭を進言せずにすむ。しかし、いきなりヴィレッツァ王国を落とした時は、一か八かの勝負を挑むような猛将かと思っていたが、そうでもないようだ。認識を改めないといけないね」
「一か八かの勝負を挑むというのは間違っていないでしょう。ただ、挑みはするものの、引き際は心得ているのかと。彼女にとってリューミナ王国の国境線まで来たのが、一か八かの勝負だったのでしょう。そして、我々の陣を見て、勝てない、若しくは勝っても後が無いと判断しての撤退でしょう」
バロス将軍は冷静に敵を分析した結果を話す。
「そうか。引き際を弁えた猛将か。厄介な相手だな。私だけでなく父上も苦手とする相手だね。策を弄しても、その策ごと喰い破られかねない」
「して、王太子殿下はどうなさいますか」
フェロー王子は暫く考える。
「元ヴィレッツァ王国を完全に掌握するまでは後1年はかかる。それまでは国境の警備を厳重にして守りに入る。それまでの間は国境をバロス将軍に任せるよ。兵は交代させるけど、バロス将軍は時期が来るまでそこにいてもらうことになる。落ち着いたら交代させよう。長い間、家族に会わせられなくてすまないね」
「お心遣い感謝いたします。家族は国境警備を任された私を誇ることはあっても、非難することなどありませぬ。寧ろ敵の首級を上げてないことを非難されるかもしれませんな」
バロス将軍はそう言って笑う。
「そう言ってもらって何より。では、後をよろしく頼むよ」
そう言って、フェロー王子は遠見の鏡を机の中に戻した。
エスサミネ王国軍とリューミナ王国軍の初の会合は、睨み合いだけという珍しい結果に終わった。
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