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連合軍VSルカーナ王国軍

戦いの結末は・・・。

 結局、ルカーナ王国軍がベシセア王国連合軍の前に現れたのはそれからさらに1ヶ月が経ってからだった。1日の行軍速度は約10㎞程である。余りの遅さに、流石にベシセア王国連合軍側も食料に不安が出たため、追加で補給部隊に物資を補給してもらったぐらいだった。


「これが、圧倒的物量差での兵站勝負だったら、ちょっとはルカーナ王国の国王を見直しても良かったんだがな……。リューミナ王国の王様は関わったことに頭を抱えてるんじゃないかな。それとも呆れて部下に放り投げてる方か」


 コウ達はベシセア王国連合軍から少し離れた、森の木の上にいた。そこから見るルカーナ王国軍は騎兵はともかく、歩兵に関してはやせ細り、槍を杖代わりにして歩く者もいるぐらいだった。隊列も何もなく、まるでさまよい歩く敗残兵である。鎧を着てなかったら流民の群れと称しても良いかもしれない。歩兵の数はもはや10万を切っており、騎兵すらその数を減らしていた。

 ちなみに仕事を投げられていたリューミナ王国のバナトス宰相は、追加補給の要請が来た後、理由の余りの馬鹿馬鹿しさに、昼食中に酒を飲みすぎて、一度早退している。


「コウ。これからどうしますか?放っておいても勝敗は明らかですが」


「もう、自分の感情優先だな。個人的にちょっと痛い目に遭わせてやりたい、と思っていたんだ、腕1本とは言わないけど、弓で指の2、3本ぐらい吹き飛ばしても許されるだろう」


 大勢には影響あるまいと考えて、コウはユキにそう答える。幸いにして、国王の輿は軍集団からさらに1㎞程後方にいる。幾ら大将と言っても、あんなに離れていては指揮もろくにできないだろうし、奇襲攻撃でもされたらどうするんだと思う。護衛はいるが、たったの100名ほどである。寧ろ、奇襲攻撃を期待してポツンと離しているんじゃないかと思われるぐらいだ。


「その辺はコウに任せるぜ。あたい達は流石に、明確に敵対しているわけじゃないから、個人的にぶん殴る事は出来ないんだ」


「そうですわね。正直不愉快ですし、酷い目にあえばいいとは思いますが、わたくしの判断ではで手は下せませんし、しょうがないですわ。どうせなら、コウが明確に敵と判断してくれれば、直接手を出せるんですけれども……」


 どうやら、そういったところのプロテクトは外せないらしい。まあ、生身の時にユキに殴られたらシャレにならないので、納得する。


「寧ろ、コウが攻撃して、向こうがこちらに攻撃する意思を見せたら、私達も攻撃できますね。コウが攻撃命令を出していただいても結構ですが」


 ユキがいつになく感情的だ。きっと報告にない、色んな気持ち悪い情報を持っているに違いない。別にこれ以上知りたいとも思わないが。


「まあ、皆には悪いがここは自分の攻撃だけで溜飲を下げてもらおう。後は連合軍にお任せだな。仮に王都まで逃げ切ることが出来ても、反乱の成功は約束されたようなものだ。どうせ碌な死に方はしないだろうさ。こちらの人間の方がそういう事に関しては残酷だからね。

 後は、戦闘が始まるのを待つことにしよう。流石に一番槍を務めるつもりはないからな」


 コウ達は森の木の上でその時が来るのを静かに待つ。


 両軍の距離が縮まると、それぞれが代表を出し、前口上を述べ始める。


「今までの恩を忘れ、ルカーナ王国に反逆するとは、忘恩も甚だしい。恥を知れ!」


 まずはルカーナ王国側から口上が述べられる。


「忘恩だと。そちらこそ小なりとは言え、一国の王女に夜伽を命じ、それを拒否するや、卑劣な手でもって国王一行を暗殺、死体を見せしめにした上、国土の殲滅宣言。他にも言いたいことがあるが、これだけでも許しがたい。恥を知れとはこちらの言う事だ。

 何か言いたいことがあるなら存分に言うがいい。こちらは言う事に事欠かぬ故、幾らでも聞いてやる」


「……。ともかくお前たちは逆賊である。これ以上の問答は不要。戦にて決着をつけようぞ」


 ルカーナ兵はそう言って踵を返す。それを聞いていたコウは、ずっこけて思わず木から落ちそうになる。


「いやいや、勝ち負け以前の問題として、もう少し普通は反論するもんじゃないのか?まあ、自分の知識は所詮は小説や映画などにすぎんから、現実は違うのかもしれないが……」


「口上を述べる使者も、どうせ言い合いでは負けると思っていたのでしょう。それに、あまり言い合うと、国王の悪事が明るみに出て、士気に影響しかねませんから」


 ユキが冷静に分析するが、そういう問題か?と思ってしまう。やる気自体がまるで感じられない。


 使者が自分の陣に戻ると、ルカーナ王国の歩兵の突撃が始まる。一応弓兵はいるものの数は少なく、更に相手の方が高い位置にいるため、先ずは近づかなくてはならない。

 そして、それに対しベシセア王国連合軍は槍衾を構築し、後から弓を雨のように降らせてくる。その上魔法攻撃まで加わって、あっという間にルカーナ王国兵は数を減らしていく。騎兵は動く様子を見せない。


「撃たれるのなら早くした方が良いと思われます」


 ユキのその言葉に、コウは我に返る。余りと言えばあまりの戦いにしばし呆然としてしまっていた。


「そうだな。幸い標的は混乱の中にはいない。サポートを頼む」


 そう言ってコウは弓を構える。標的をズームアップすると、戦闘中だと言うのに酒をラッパ飲みしていた。


「いいぞ!突撃だ!突撃して奴らを皆殺しにしろ!」


 ジェロール国王が完全に酔って、わめいている。コウは酒瓶を持っている手に照準を定めると、矢を放った。

 矢は寸分たがわず、狙った位置に命中し、ジェロール国王の左手の小指と薬指、中指までを破壊する。ジェロール国王は一瞬何が起こったか分からなかったようだが、砕け散った酒瓶と酒にまみれた自分の手を見て、半狂乱になる。


「手が!俺の手が!うあああ!撤退だ、撤退!俺を囲め、俺を守れ!」


 そう言って戦場から逃げ出す。それを見た、ルカーナ王国兵も一斉に退却を始める。退却と言うよりも逃走だ。戦闘開始からわずか10分足らずの出来事である。ルカーナ王国の余りにも早い戦線崩壊に、逆にベシセア王国連合軍の追撃が遅れる程だった。


 戦闘から僅か10分、ルカーナ王国軍は敗走し始めた。ルカーナ王国軍の死傷者約5万に対し、ベシセア王国連合軍の死者は0、追撃時に転んでけがをした者が居ただけという、歴史上他に類を見ない、一方的な結果となった。


 毎度お願いで恐縮ですが、面白いとか続きを読みたいと思われたらで構いませんので、評価やブックマークの登録をお願いします。

現金と思われるかもしれませんが、評価が上がるとやはりモチベーションが上がります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 公開処刑は、フランス式は王都コンコルド広場で斬首刑、イギリス式は王都タイバーン刑場で絞首刑、スペイン式は鉄輪つきの椅子に座らせて締めてく鉄環絞首刑、さまざまな方法がありますが、他にもトルケマ…
[一言] コレはひどい(爆笑) 前章までは支配者層が理性的なのに、 この章のでは、酷すぎでドン引きでしたが、 戦争にならない結末に笑わせてもらいました。 トップがひどすぎたらまあそうなるわな〜
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