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祭りの後

久し振りのお祭りをコウはタップリ楽しみました。

「いやー、楽しかった。実に久し振りの祭りらしい祭りだった」


 コウはシンバル馬に揺られながら上機嫌で笑っている。実に楽しそうだ。


「それはわたくしたちを、からかえたからではないですの?」


「そうだそうだ、何も触覚や嗅覚の感度まで落とす事は無かったんじゃないか」


 マリーとサラが咎めた口調で責めてくる。


「そうしないと触覚や嗅覚で選別してただろう。ああいうのは当たり外れを勘で決めるから面白いんだよ。今までにない経験だっただろう?」


 コウはマリー達の文句にも、どこ吹く風のように気にせず話してくる。


「まあ、今までにない経験だったのはその通りですけど、そもそも戦闘艦の人格AIがお祭りに一緒に行くこと自体がありませんわ。それに、不味いとまでは言いませんけど、きちんと選べば美味しいものがあるのに、わざわざ制限をかけて勘で選ぶなんて、非論理的ですわ」


 マリーの文句に、コウはやれやれという風に肩をすくめて首を振る。


「ああいうお祭りに論理性を求めるなんて……。そんなものは仕事の時だけで十分だ。そう思うだろうユキ」


「そうですね。お二人はまだまだお遊び、という部分が足りないのかも知れません」


 いつもはこの辺りで皮肉を言ってくるユキだが、珍しくコウに賛同している。


「そういや、ユキ。自分だけは外れそうにない無難なものばかり選んでたよな。食い物にしても、遊ぶものにしても、ちょっとずるいんじゃないか」


 サラは今度はユキに矛先を向ける。


「今回は被害担当艦が2隻もいましたからね。自分の役目はいざという時のために備えておくこと、と判断しただけですよ」


 ユキは澄まして答える。


「きったねぇ。あたい達は被害担当艦かよ」


「それが何か?コウは400歳を越えた辺りから、同僚が行かなくなったんで私を連れていくようになったと言ってましたよね。つまり200年以上こういう事に、お付き合いをしているわけですが、お二人はまだ1年ほどですよね。それを考慮して私に意見を述べているのでしょうか?」


 ユキが何となく圧のかかった言葉で返事をする。後を見なくても分かる。きっとユキはにっこりと笑ってるに違いない。


「ええっと。なんかごめんなさい。暫く被害担当艦で良いです」


「あの、その、私もサラと同じ気持ちですわ」


 ユキの反論に、急にサラもマリーもしおらしくなる。


「それはどういう意味かね?私がユキを虐めていたとでも言うつもりかね?」


 心外な、とコウは思う。と言うより、自分はユキどころか、他人全般に対して心が広いつもりだ。ユキをイベントなどに連れて行ったのも、1人じゃ行っても楽しくないというのもあるが、当のユキがそれなりに楽しんでいたからだ。本当につまらないのならユキは容赦なくそう言う。それを制限するような性格設定にはしていない。


「いやそういうつもりで言った訳じゃないんだけど……。なんと言うかテンプレートから外れてるんで負荷がかかると言うか……。あたい達で負荷を分担するのはしょうがないかなと言うか……」


 いつもズバズバと言う、サラの言葉が歯切れが悪い。


「コウに対して思うことはありません。楽しかったのは事実ですよ。ただ楽しいというのと同時に、人間で言うと疲れるという事もあるのです」


「それは考え方を変えるべきだな。そういう時は疲れる程、遊んだと言うんだ」


 ユキの言葉に、即座にコウは反論する。疲れる程遊べるなんて幸せな事じゃないか。


「これだけお仕えしていて、修正事項があるとは予想外でした」


 ユキが少し驚いたように言う。


「これが人間の奥の深さという奴だよ」


 ジクスに戻るまで、コウは上機嫌のままだった。


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現金と思われるかもしれませんが、評価が上がるとやはりモチベーションが上がります。

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